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Ep.5-126

色々あって日付変わってから投稿しようとしてたら寝落ちしまして、夜明け前の投稿になります。大変失礼しました。

「――ご苦労様ね、私の従僕」


「お褒めにあずかり光栄だよ。我が主」


エリオスは安堵の息を漏らしながらそう言うと、傷だらけの服の自分の姿を顧みて思わず苦笑を漏らす。それまで張り詰めていた焦燥と緊張が、アリアの姿をみて少しだけほどけたようだった。彼は小さく咳ばらいをすると、纏っていた外套を脱ぎ捨てる。茨の棘で引き裂かれたそれが床に落ちるのと同時に、黒い風が部屋の隅にいた教徒の一人に食らいついた。


「な――ぐ、ぎいいいい!?」


割れんばかりの断末魔を響かせながら、『暴食』の風に包まれた教徒はみるみるうちに服が破れ、皮が裂け、肉が削れ、骨が砕けていく。黒い風が青白い空間の中に最後の血の一滴が床を汚した頃には、彼の姿はもはや掻き消えていた。

それと同時にエリオスはごくりと喉を鳴らし、ひどく顔を顰める。その顔に浮かんでいたのは怒り、悲しみ、後悔、苦渋——あらゆる負の感情をぐちゃぐちゃにかき混ぜたようなそんな表情。

それでもエリオスはゆるゆるとかぶりを振ると、皮肉っぽい笑みを浮かべる。


「——うん、そうかい……よぉく分かったよ。よく見えた……反吐が出るほどにね」


低い声でそう言いながら、エリオスはじろりと広間に並み居る教徒たちを一瞥する。その瞳には静かな、それでいて何者をも焼き尽くさんばかりの炎が揺らめいているように見えた。

そんな彼に恐怖する教徒たちを横目に、のたうち回る教主の横を通り過ぎて、エリオスはゆっくりと祭壇へと近づく。

そして、アリアの右腕を縛める金属の枷に指をついと走らせる。その瞬間、ぱかりと枷が割れてアリアの白い手が自由になる。エリオスは無言で他の手足の枷も外していく。

ようやく四肢が自由になったアリアはうんと手を伸ばしながら、口の端に微笑みを湛える。そんな彼女の目の前で、エリオスは床に膝をつく。


「——遅れてごめんね……本当にごめん。全く、従者失格だ」


エリオスは静かな声で、溢すように震えた唇でそう言って頭を垂れる。

そんな彼に少し驚きながらも、アリアはしかつめらしい顔をして、祭壇の上で脚を組んで座る。それから、その足の指先でエリオスの顎をくいと持ち上げて視線を合わさせる。


「——そうね。もっと早く助けにきて欲しかった」


彼女の言葉にエリオスはきゅうと唇を血が出る寸前まで噛み締める。しかし、アリアはすぐにそんなエリオスににんまりと微笑んでみせる。その笑顔の意味を測りかねて、エリオスは首を傾げる。


「だから、ちょっとお仕置きね。歯を食いしばりなさい」


「え——何を……へぶ!?」


次の瞬間、エリオスの頬に先程まで顎に当てられていた右脚がめり込んでいた。

アリアの思いっきりの蹴りを叩き込まれたエリオスはぐらりと大きく体勢を崩しながら、混乱した様子でアリアを見上げる。対するアリアも慣れない蹴りのせいで、脚の変なところに彼の頬骨が直撃したようで痛みに悶えている。


「もぉ、痛いわねぇ! アンタ、私に蹴られる時くらい顔の骨は軟骨にしておきなさいよ!」


「馬鹿なの!? というかそもそも敵地のど真ん中でこんな制裁する!?」


「何よお! 負い目なくすむようにっていう私なりの配慮でしょ!? ありがたく受け取りなさいよ!」


「——うう、そんな無茶苦茶な……」


そんなやりとりを少しの間していた二人だったが、不意にエリオスはそのやりとりに歯止めをかけて、ちらと教徒たちの方を振り返る。そして、アリアに向けて片眉を上げながら問う。


「——茶番はもういいでしょ? そろそろ、ケリをつけさせて欲しいんだけど——どうする、私のご主人様(マイフェアレディ)?」


そんな彼の問いにアリアは枷のせいで少し赤くなってしまった腕をさすりながら答える。


「——有象無象の処断はアンタに任せるわ。そこの男だけ残しておきなさい」


御意思(Yes, Your)のままに(Highness)——さて、君たち」


アリアの言葉に胸に手を当てて慇懃に腰を折ると、エリオスは改めて教徒たちの方を向き直る。


「さて、聞いての通り処断の時だ。すでに君たちの罪はしっかりと捉えている。私から、そして彼女から随分と色々奪ってくれたね——当然、限界を超えて奪い尽くされる覚悟は出来ているね?」


そう言ってエリオスは口の端を吊り上げる。しかし、その目は全く笑っていなかった。

無論ですが、今回の投稿はあくまで10月9日夜の投稿分ですので、本日分はまた別に2パート投稿します。よろしくお願いします

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