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Ep.5-111

「その『悪の女神』を殺せば、この世から悪も穢れも無くなるはず。僕たちはそう考えたのさ!」


愉し気にそう宣う教主の言葉に、再び周囲から図ったかのような拍手喝采が鳴り響く。そんな中、教主は陶酔するかのように天を仰いだ。アリアはそんな彼らを見渡しながら、アリアは口に押し込められた自分の肉片を吐き出して、彼らに水を差すように――それでいて教主の精神を必要以上に刺激しないように、アリアは問いかける。


「――ただの人間に神が殺せるの?」


「おや、僕らの理論に関心を抱いてくれているようでうれしいねえ。確かにそれはもっともな疑問だよね。そこで重要になってくるのは、私の魔術師としての知識と研鑽だ」


教主は上機嫌にそう言った。そして、再び自身が削いだアリアの腕の傷口に治癒の魔術を施して、その傷を再び縫合する。その後には傷跡もなく、元通りの白い肌になっている。もはや痛みはないけれど、それ以上に刻み込まれた激痛への恐怖の方が彼女にとっては深刻なモノだった。

先ほどよりもずいぶんと反抗的な態度が柔らかくなったことを、教主は彼女が自分たちの理論に理解を示したからだと勘違いしているようで、彼は饒舌に語る。


「魔術には様々な系統があるのだけど、その中でも神話の時代から形を変えずに残って来た魔術として原始魔術がある。そしてその原始魔術の中でも典型的なのが類感魔術と感染魔術——どちらも何らかのモノを媒介として、特定の存在に影響を与えるという代物でねぇ、そのモノと存在との関係性によって分類されるわけだ」


そう言いながら、教主はアリアの青い髪を撫で、そして先程読み上げていた本を取り出す。


「まず類感魔術、これは『類似したモノ』は互いに影響を受け、また与えるという思想の下編み出された魔術だ。例えば人形を人に見立てて右脚を破壊すれば、見立てられた人物もまた右脚を悪くする、という具合にね。神話によれば、『悪の女神』は美しい青い髪と白磁の肌をして、恐ろしいほどに美しい顔をしているという——君にそっくりだろう?」


——つまるところ、彼の言った例で言うところのある人に見立てた人形が自分を指し、見立てられた人が『悪の女神』というわけだ。

教主は手元の本をめくりながら、更に話を続ける。


「そしてもう一つ、感染魔術。これも類感魔術と似ているけれど、媒介となるモノと影響を受ける存在の関係性が少し違う。感染魔術の媒介物は『かつてその存在と一体だったモノ』となる。これら二つは組み合わせることで爆発的な影響力を持ち、神話においても多用されている。例えばとある蛮神が最高神を呪ったり、英雄神エイデスもまた魔女のこの手の呪いで苦しめられたと伝えられている。即ち、今の魔術で神を殺せずとも、神話に所以を持つこれらの魔術なら、神さえも殺せるというわけだよ!」


興奮した調子でそう並べ立てる教主に呆れながらも、アリアは少し感嘆の念も感じていた。単なる狂人と思っていたが、神話への知識や魔術の知識は下手な学者以上——なるほど、聖教会にて局長を務めていたこともあるというのは嘘では無さそうだ。

しかし——


「でも、類感魔術は私を形代に出来たとして、感染魔術をそれに組み合わせるのは無理なんじゃない?」


「おお! 理解が早いねぇ、嬉しいねぇ。確かに女神とかつて一体だったモノなんてものはそうそう用意できる物ではない。何よりその存在が禁書にしか記されていない女神だものねぇ。遺物なんて聖教会にだって残されてはいない——でも、別に『かつてその存在と一体だったモノ』っていうのは形のある物体でなくてもいいよね? ——例えば()()とかね」


そう言って教主はにんまりと笑って見せた。

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