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Ep.5-110

ちょいグロめ描写があるので、ご注意を

「世界の救済? あは、何それ? 本気なの? アンタたちみたいな変態じみた狂人が?」


教主の言葉に思わずアリアはそう悪態をついてみせる。ほとんど反射的で、抑えようがなくて、アリアは自分が口にした言葉と教主の表情の変化に思わず顔を凍りつかせる。


「ひどいなぁ……話を聞く前から僕らをそんな風に悪くいうなんて」


そう言いながら教主は彼女の顔の横に置かれていたナイフに手を伸ばし、その刃をアリアの腕の上に乗せる。

その刃の冷たさと、彼が何をしようとしているのかを察したことで、アリアの顔が恐怖に引きつる。これから襲いくるであろう激痛を察知し、口が勝手に動く。


「——ッ! 待って、待ちなさい!」


「待たないよ。ちょっとお仕置きが必要みたいだからねぇ」


そう言って教主はアリアの言葉を無視してその白い肌に刃を斜めに入れるとそのまま皮膚と肉を腕からこそぎ落とすように、ナイフを走らせる。


「あッぐぅぅ……あがあァァァッ!?」


部屋の中にアリアの絶叫が響く。教主は削ぎ落とされ、血に塗れた白磁の皮膚とルビーのような肉——アリアのモノだったソレを彼女の目の前にぶら下げる。

対するアリアは、不規則な息を漏らしながら神経が直接空気に晒される痛みに歯を食いしばっていた。


「嗚呼、そんなに悲鳴をあげて可哀想に。でも、これも君と世界のためなんだ。分かってもらえるよね?」


口をパクパクさせながら痛みに耐えるアリアを見下ろしながら、教主は真に目に涙を溜めながらそう宣う。そして、ちょうど開いた彼女の口の中に手に持っていた肉片を放り込む。

突然口の中に広がった血の匂いと肉の味に、アリアは悶え、嘔吐感に苦しむ。

教主はそんな彼女の傷を今度は癒すことなく、自分の指が血に塗れるのも構わずにその傷口に手を当てる。

アリアの絶叫が響く中、彼は淡々と話を再開する。


「もう少しそのままで、素直な君で話を聞いていておくれ——さて、僕たちの目的は先程話したけど、たしかにあれだけ聞けば荒唐無稽と思われても仕方がないよねぇ。でも、君もちゃあんと話を聞けば納得してくれると思うよ」


そう言って教主はナイフをまた置いて、語り出す。ナイフから滴る血が石の台の上を伝ってアリアの肌を汚した。


「君は『悪の女神』を知っているかい? 知らないよねぇ、知っている人間なんて僕らを除けばこの世には指で数えるほどしかいない。アヴェスト神話群の中でも秘中の秘、聖教会の教義聖典官書陵局の禁書庫でしか知り得ない知識だからねえ」


「……あ、アンタ……まさか……」


「嗚呼、言ってなかったっけ? 僕元々聖教会の司祭の一人でね、書陵局長をやってたんだよぉ。ま、異端審問局と最高巫司のせいで追放されちゃったんだけどねぇ——どうして追放されたかって? 僕が提唱して、実証実験をしていた理論を彼らが『異端』だなんて言って排除したからだよ! 酷い話だよねぇ、僕はただ神話から組み立てた理論を基に世界をより良くしようと頑張っただけなのにさぁ!」


腹立たしげにそう口走る教主。きっと無意識なのだろうが、苛立ちのあまり彼は自分が指を置いたアリアの傷口を、その指先で掻きむしっていた。

アリアはその痛みに必死に歯を食いしばりながら、声を上げないように耐えている。声をあげて、彼の話を遮ったなどといちゃもんをつけられてまた傷つけられては堪らない。

そんな彼女の苦痛に気がつくことも、気を払うことすらなく教主は続ける。


「秘匿された神話に曰く、『悪の女神』は造物主たる最高神が最後に手づから生み出した神——人の身から神に成り上がったエイデス神を除けば最新の神といえるね。彼女は世界に人や生き物たちが生み出された後に、彼らが生み出す汚濁や邪悪、罪の全てを司る存在として役割を与えられたそうだ。つまり彼女は、この世の悪を掌り支配する存在——この世全ての悪そのものを象徴し具現する存在だ」


滔々と垂れ流される教主の理論。アリアにはこの時点で彼の、彼らの到達した結論が何なのかを察していた。

——嗚呼、やはりアンタたちもそう考えるのか。そうやって全てを押し付けて、私を切り捨て自分たちだけ綺麗なところにいようとするのか。


「だからね、その『悪の女神』を殺せば、この世から悪も穢れも無くなるはず。僕たちはそう考えたのさ!」


教主はそう宣う。その結論をアリアは目を閉じて、悲しそうな顔をしながら聞いていた。

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