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Ep.5-109

「君は彼女の代わりに責め抜かれて殺される——『悪の女神』の代わりにね」


教主の言葉にアリアは息を呑む。この男は何を言っているのだろうか――そんな顔をしていたのだろう。教主はにんまりとした笑みを浮かべながら、傍らの男から一本のナイフを受け取ると、間髪入れることなくそれをアリアの右手の甲に突き刺した。


「いッぎぃ……ぐぅぅぅ……!?」


「ごめんねえ、ちょっと君の眼を見てたら昔を思い出しちゃって。でも、そんな顔をする君が悪いんだよぉ?」


教主は先ほどアリアの口もとを拭ったハンカチで、ナイフに付いた血を拭いとる。それから血がどくどくと溢れてくる彼女の手に指を触れる。傷口に指を突き立てられて、アリアは苦悶の表情を浮かべる。しかし――


「『癒えよ』」


魔力のこもった教主の声が響く。それと同時に、みるみるうちに彼女の手に付いた傷が塞がっていく。その様にアリアは思わず目を剥いた。そんな彼女の表情を愉し気に見つめながら、教主は口を開く。


「――こう見えて魔術には造詣があってねえ。君を最後の最期まで殺さずに、痛苦を与え続けることができるよお」


「アンタ、何者なの……アンタたちは何なの……?」


思わず声が震える。彼らのことをただの狂人と変態の集団だと思っていたが、アリアはその認識を一部修正する。あんな短い呪言で、あの深い傷を治癒させるというのは並ではない。単純な魔術の使い手としての能力はエリオスにさえも並ぶかもしれない。それだけの力があれば宮仕をすることだって可能だろうに。

そんな人間が、こんな狂人たちの頭領——否、教主に収まっているという事実にアリアは戦慄する。

アリアの震えるような言葉に、教主は目をキラキラと輝かせる。そして、胸に手を当てて鼻を膨らませながら語り始める。


「嗚呼、興味を持ってもらえてうれしいなあ。君の前の連中は助けてだとか殺さないでだとかやめてだとか……自分のコトしか考えられないクズみたいなのばっかりだったからなあ。嬉しいなあ……最高の素体である君が関心を持ってもらえるなんて、やっぱりこれは運命だ、この出会いは必然の神の導きだ!」


陶酔したように叫びだす教主。「君の前の連中」ということは、今の自分と同じ目に遭った――『悪の女神の代わり」とされた人間がいるということだろう。彼女たちがどうなったのか、教主の口ぶりから想像するだけでも吐き気がする。

それでも、そんな感情を表に出すとまた殴られたり刺されたりしてしまいそうなので、アリアは息を止めたまま無表情を貫く。

そんな彼女のささやかな努力になど目もくれず、教主は滔々と語り続ける。


「じゃあ、教えてあげよう。僕たちが何なのか。僕たちは何を目指しているのか――」


教主がそう言ったのと同時に、周囲に控えていた彼の部下たちが一斉に立ち上がる。ざっと見ただけでも二十人はいる。そんな彼らの視線が一斉に、拘束され無防備に晒された自分の身体に注がれる。異常者たちの視線に全方位から刺し貫かれるというその状況は流石のアリアにも明確なまでの恐怖を与えた。

そんな彼女の歪む顔を見ながら、教主は告げる。


「僕たちが目指しているのはね、この邪悪と汚濁に塗れた世界の救済だよ」

なんかこの章、虐待描写多すぎる気がしますね。いい加減レパートリー尽きそう……

まあ残酷描写多めなのは元からなので悪しからず。

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