Ep.2-11
episode2最終盤
「———くふふ、いいザマね。アンタもそう思わない?」
燃え盛る民家、崩れゆく人々のささやかな営みの跡。そして響く怯乱と絶望の声。
そんな中、少女が一人。まるで花園で歌い踊る妖精のように軽やかな足取りで、青白い髪を靡かせながら村を一望する丘の上へと歩んでくる。
少年はそれを横目にちらと見て、小さく息をつく。その傍らにはもはや原型も残らぬほどに切り刻まれ、叩き潰され、焼き尽くされたナニカのカタマリ。それを見下ろすとき、少年の鼓膜には自身を貶めた者の命乞い、絶叫、悲鳴、断末魔が四重奏を奏でるように響いた気がした。
「にしても流石ねぇ。私が特に見込んだだけのことはあるわ」
「———何が?」
少年は重たげに閉じた瞼を開けて、ちらと少女の方を見やる。
「何もかもよ。私がその権能を貸し与えたのは何もアンタが初めてじゃないのよ? 数千年の隠遁の日々、私に出会い力を求めた人間の数なんて両手足の指でだって数えきれないわ。だけどアンタの先輩たちはそれに耐えきれずに死んじゃった———一人残らずね」
酒の肴に失敗談でも語るかのような気軽さで、少女は髪の一束をいじくりまわしながらくすりと笑う。
「でもアンタは生き延びた。唯一の成功例―――誇りなさい?」
少年は応えない、燃え盛る村の方を向いていた。少女は子供っぽく頬を膨らませて不服の意を示すが、少年はそれを歯牙にも掛けることなくただ目を閉じて音を聞いていた。
そしてゆっくりと目を開けて、口を開く。
「———君のお眼鏡に叶うようだったなら……まあ、うん。良かったよ、『神サマ』」
「ふふ、他人行儀ねぇ……今の私とアンタは、君臨する絶対者たる神と、それを信仰して傅く信徒の関係じゃないわ———対等な契約者、少なくとも形式上はね。だからそんな慇懃無礼な呼び方は止して頂戴」
口を尖らせながら少女は少年の脇を小突く。少年はそれを意に介することもなく燃える村に視線を注ぐ。少女はつまらなさそうに少年の顔から視線を少し落とす。
拷問の跡、逃亡の跡が見受けられる傷だらけの服は彼自身とそれ以外の血にまみれている。しかしその隙間から露出する肌には傷の跡は一つもない。
「―――なんて」
「―――?」
ぽつりと少年はつたない言葉を漏らす。
「なら、君のことを、僕は‥‥‥なんて、呼べばいい?」
少年が問いかける。視線は動かない、ただ焼け落ちる村と焼けていく人々をのみ見つめている。そんな少年の態度をどこか諦めたように肩を竦めながら少女は答える。
「そう、ね———ではアリアと。そう呼びなさい、アル———」
「呼ばないで。その名前で———もう、僕のことを」
「‥‥‥そ。じゃあそうするわ」
少女———アリアはそう言うと少年の肩を後ろから抱く。そしてその耳元で囁くように告げる。
「さ、もう呆けるのは終わりにして。そして私とアンタの願いを叶えましょ」
「うん———そうだね」
少年は小さく頷くと目を閉じて口ずさむ。
「———『我が示すは大罪の一…… 踏破するは憤怒の罪』
少年は熱く燃えたぎる魔力を血に塗れた右手に集める。
そして目を開き、村を見つめる。
自分の生まれ育った村を、自分を貶め殺した村を、自分を恐れた村を、自分を信じなかった村を。
涙が溢れ出す、とめどなく———これは、自分の最後の涙だ。これから先の自分の道に涙は要らない。
———別れの時だ。故郷に、涙に、今日までの自分に。
『——— 『私の罪は全てを屠る』」
彼の掌に炎が顕れる。青白く燃え盛る炎。空に浮かび上がり、形を変え、巨大な竜となり、大きく羽ばたいて飛んでゆく。
【急募】両親への初任給のプレゼント案募集
私事ながら、筆者はこの4月から新社会人になりまして、いよいよ初任給をいただける運びとなりまして、両親に細やかながらプレゼントでも贈ろうかと考えているのですが、現在悩みに悩んでおります。
コロナ禍なので、旅行券や食事というのも……家電なんかは場所を取るし……などと思い悩んでいる筆者に、「こんなのいいんじゃない?」「こんなものを贈ったよ」などなどアドバイスを頂けましたら幸いです。
アドバイスをくださる方は、表題と同じ活動報告を後ほど出させていただきますので、そちらにコメントをつけて頂けますと幸いです。
(なお、以上の文面は筆者がプレゼントを決めて贈った段階で、筆者が覚えていれば削除させていただきます)




