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Ep.5-99

「宗教がらみ……?」


エリシアは眉間にしわを寄せながら、ラカムの言葉を復唱する。ラカムは小さく頷くと、ぽつりぽつりと口を開く。


「そうだ……だからこそ、お前らみたいな聖剣使いは高く売れるとアリキーノ団長は踏んでいた。詳しいことは分からねえが、どこぞの異端どもなんだろうよ」


「君たちが攫った人たちは皆そこに卸されているってことかい?」


「ああそうだ。労働力として使ってんのか、或いは儀式だなんだの生贄に使っているのかは知らねえがな」


エリシアはその言葉を聞いて、表情を曇らせる。彼の言葉が正しくて、もし攫われた人たちが生贄なんかに使われて殺されているとしたら。それを知った時のシャールの絶望は如何許りか。

それでも、エリシアはまずは情報収集を優先するべくラカムへの問いを重ねる。


「――さっき君たちは団長、アリキーノだけがその取引先の素性を知っていると言ったね。君たち構成員はその素性すらよく知らないと。じゃあ、どうして彼らが宗教がらみの集団だと思ったんだい?」


「……俺たちはその集団と接触したことがないわけじゃあない。むしろ、商品を卸すために何度か接触している。」


ラカムによれば、その集団はいつもアリキーノが呼びだす形でこの砦に現れ商談を行っていたらしい。彼らは常に妙にきらびやかなローブを纏い、フードを目深に被った姿で現れた。皆一様に、胸元に奇妙な十字架のようなものを首から下げていた。

確かにそんな様子を見れば、彼らを何かの宗教の信徒だと考えてもおかしくはない。


「——基本的にアイツらとの接触は商談の時だけだ。嗚呼、だけど今日は違ったな……」


「どういうこと?」


「俺たちが人質に取った娘がいただろう? あの娘は、お前たちを投降させる駒として、教団から買い戻したモンだ……その引き渡しに教団の連中がやってきたのさ。そして、それを使って俺たちはお前らを捕まえた……尤も、その結果がこのザマだがな」


そう言ってラカムは自嘲的に笑う。そんな彼の言葉に、エリシアは一瞬顔を強張らせたが、すぐにかぶりを振って目を細める。


「買い戻し、なんて良くできたね。そういう連中は一度内部に入ったものを外には出したがらないと思うけど」


「どのみち売り戻すつもりだったしな。それに、こっちには丁度いい交渉のカードがあったのも幸いした」


「カード?」


眉を顰めるエリシアにラカムはくつくつと喉の奥で笑いながら応える。


「ディーテ村から今日の夕刻ごろに攫ってきた小娘さ。連中、そいつを見た瞬間に妙に執心し出してな。そいつの商談をしたら、随分といい条件で買い戻せたよ」


彼の言葉にエリシアは僅かな引っ掛かりを覚えた。理屈のない、直感的なナニカ。取るに足りないと一蹴することもできたはずだけれど、全身を走る震えがそのナニカを問いただせと叫んでいた。

エリシアは震える唇で問いかける。


「その女の子、なんて名前だい……?」


「名前は知らん。さっきの話も俺は全部事後報告で聞いただけだったからな。だが、聞いた話だとクソ生意気な青い髪の小娘だとか」


その言葉にエリシアは全身を硬らせる。唇を震わせながら、頭を抱える。


「——まずいことになった……よね、これ」

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