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Ep.5-94

二つの刃がぶつかり合う音が響き渡る。二人だけの部屋の中、炎があちこちに燃え移る中でエリシアとラカムは何度も刃を重ねる。


「は! 聖剣頼みかとも思ったが、なかなかどうして剣もお上手じゃねえか!」


「——ッ! そりゃどうも!」


ラカムは素早い一撃を打ち込んでは、受け止められるたびに飛び退いて再び攻勢を仕掛ける——ヒットアンドアウェイの繰り返し。

エリシアの聖剣に、自分の剣を焼き切られることを警戒しているのだろう。鍔迫り合いをしかけることもなく、さまざまな角度からエリシアに攻撃を仕掛ける。

対するエリシアは、部屋の中心に立ちながら四方八方から繰り出されるラカムの攻撃を打ち払っていく。

三百六十度どこからどのタイミングで繰り出されるかも分からないラカムの攻撃に対応するのは、エリシアにとっても酷く神経を使う。

出来ることならば、部屋の隅に陣取って攻撃の来る方向を絞ってしまいたいところだが、ラカムが彼女が移動することができないように立ち回るせいで思うように動けない。


「くそ! ナリに見合わずちょこまかと!」


「相手に応じた戦い方ができなきゃ修羅の世界は生き延びられねぇだろうよ!」


「——ッ!」


不意にラカムが視界から消え、エリシアは思わず息を呑む。しかし、焦らずに意識を五感に集中させる。目だけでは足りない——だから


「そこか——ッ!」


聖剣を大きく横に薙いで、エリシアは背後から飛びかかってきたラカムの一撃を打ち払う。


「はは! よく分かったなァ、オイ!」


ラカムは後方に飛びのきながら、高い声で笑う。そんな彼に向けてエリシアは自分の耳を指さした。


「音だよ」


「音? 足音は消していたはずだが?」


「君が飛びかかって来たとき、その方向で燃えている炎の音が少し変わった。いくら足音を消しても、移動すれば空気が動くからね」


エリシアの言葉にラカムはなるほどと頷きながら辺りを見渡す。絨毯や壁の本棚も炎に包まれ、もはや彼らは完全に炎に取り囲まれていた。


「どうだい? そろそろ降伏する気にはならないかな?」


「ははは、面白い冗談だ。それとも今のは侮辱だったのかな? どちらにせよ、俺は降伏なんてするつもりはねぇよ。お前こそ、この状況で逃げられるのかよ?」


「この炎はボクの聖剣の権能から生まれたものだからね。ある程度は操れるから問題はないさ」


そう言ってエリシアは聖剣を一振り。その瞬間、ラカムの背後の炎が大きく波打った。


「ほう、こりゃあすげぇな。煙草に火をつけるくらいの器用なこともできるのかねぇ?」


飄々とした調子でそう宣うラカムに苦笑を漏らしながらエリシアは告げる。


「見て分かっただろう? 今この部屋は全てがボクの武器と言っても過言じゃない。君は絶対にボクには勝てない——改めて通告するよ、降伏したまえ」


「断る」


「どうして? アリキーノに忠誠を誓っているわけではないだろう? 何故そこまでする?」


エリシアの問いかけにラカムは鼻を鳴らして笑った。


「決まってるだろう。『上司のため』じゃあなけりゃ中間管理職が何のために身体を張るのかなんてのはよ」


その言葉に、エリシアは驚いたような表情を浮かべる。最初は正気なのかと困惑するような顔。それから次第に苦笑に変わる。


「本当に、君が何で副団長なんかに甘んじてるのか……理解ができないよ」

自室が暑かったので網戸にしていたら、羽虫がどこからか大量に入ってきました。

致し方なしに、彼らを掃除機でジェノサイドしてしまったことを懺悔いたします。


殺さずにどうにかできればいいんだけど……私にはその手段が無かったのです……

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