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Ep.5-85

聖剣ヴァイストの一振りで、シャールとエリシアを閉じ込めていた鉄格子は一瞬にして融け落ちた。その後には、赤く焼けて液体化した鉄が白い煙と焼き焦がすような音を立てて残っている。


「ひ、ひいいいい!?」


アリキーノは聖剣を自分たちに向けるエリシアの顔を見て情けない声を上げて、その場にしりもちをつく。そんな彼を横目に、ロビンとラカムは表情を引きつらせながらも、自身の次に取るべき手段を実行しようとする。即ち、先ほど拠点の森でシャールとエリシアを投降させたように、再びアイリを人質にとって彼女を脅迫するという手段。しかし、


「そう来ることくらい、ボクが予想してないとでも?」


そう言ってエリシアは聖剣を大きく空を切り裂くように縦に振り抜く。その瞬間、ヴァイストから斬撃の形をとった炎が、アイリに手を伸ばしたラカムとロビンの目の前に迫る。


「――ッ!」


ラカムはギリギリのところでその炎の斬撃を回避して、一歩後方へと飛び退く。しかし、ロビンは避けられなかった。


「――ッぐ、がああああああ!?」


ロビンの伸ばした右手が、ヴァイストの炎の斬撃によって肘から先を断ち切られる。石の床に転がり落ちる彼の腕。彼はその激痛に絶叫する。しかし、ヴァイストの斬撃は斬られただけでは終わらない。


「――あ、な……なんだこれ……焦げ、焦げてる……焦げてく……」


ロビンは自分の傷口を見ながら、震えるようにそう言った。彼の傷口からは血が一滴も出ていない。断面が、赤黒く焼け焦げている。よく見ればその断面はまだ燃えていて、黒く炭化した傷口の随所からは熾火のようなものが見える。

炭がゆっくりと焼けていくように、その燃焼がじわじわと肩の方へと広がっていく。その様を見て、ロビンは首をふるふると振りながら、懇願するような視線をアリキーノとラカムに、そしてエリシアに向ける。しかし、誰一人としてそれに応えることは無い。


「た、助けて……団長、副団長……」


「――ッ!」


ラカムは腰のナイフに手を当てながら、エリシアとアリキーノ、そしてロビンとアイリへと素早く視線を奔らせる。どうするのが今この場での最適解なのか、それを導き出すのに苦心しているような顔だった。

全身が焼けていく恐怖におびえる部下を助ける? 彼の腕の燃焼部分を切り離して止血すれば、ロビンは一命をとりとめるだろう。だが、そんなことをしていては確実にエリシアにやられる。

一旦、アイリを人質にとるか? いや、もう無理だ。もうアイリとの距離はエリシアの方が近い。今からではもう彼女は人質として使えない。

まずはエリシアと戦い、彼女を無力化するか? いや、彼女は明らかに手練れだ。応戦できないことは無いだろうが、場合によってはこちらが逆にアリキーノ団長を人質に取られ投降を迫られることになるかもしれない。

優先すべきことはなんだ。切り捨てていいものはなんだ――そう考えた果てにラカムは表情を歪める。正しいと思っているけれど、それを是認したくない自分とのせめぎ合い。そんな中で、時間は一秒一秒過ぎていく。そんな中――


「ば、馬鹿者! ラカム貴様生粋の阿呆か?! 貴様らの役割は一にも二にも私を助けることだろうが! 何を迷っている、早く! 早くここから逃げるぞ!」


「――ッ!? くそ、すまんロビン!」


「う、うそだ……ふ、副団長……副団長ォォォッ!」


ラカムは素早く踵を返すと、アリキーノの首根っこをひっつかんで彼を立たせると、そのまま地下牢の出口へと走っていく。そんな彼の後姿を絶望の光に満ちた瞳で追いながら、ロビンは地下牢いっぱいに響く声で叫んだ。

ねたばらしは次のパートでと言いましたが、あれは嘘でした。もう少しお待ちを

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