表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
337/638

Ep.5-84

「そう始まりだ——どんでん返しの果てに悪は惨めに滅ぼされる。そんな万人好みの英雄劇のね」


そんな言葉が発された方に、その場の全員の視線が集まる。全員の突き刺さるような視線を受けてなお、エリシアはニッと笑ったままだ。


「——今、何と?」


小馬鹿にするような声と態度でアリキーノは鉄格子の向こう側にいるエリシアに問いかける。「何を言っているんだお前は、馬鹿じゃないのか」——そんな言葉が聞こえてきそうな表情。それはラカムもロビンも同様で、呆れとも嘲りともつかない苦笑を浮かべている。


「——おや、聞こえなかった? それともその腐った脳味噌じゃあ、ボクの修辞(レトリック)が理解できなかったのかな?」


アリキーノたちに負けず劣らず——否、彼らの二倍増しの嘲笑と三倍増しの悪辣さを声に滲ませながらそう言い放った。

その言葉にさしものアリキーノたちも思わず顔をひくつかせて、息を呑んだ。

そんな彼らにさらに一歩踏み込むように、追い詰めるように、言葉を続ける。


「——いい加減さあ、ボクも我慢の限界なんだよね。どいつもこいつも人をボコスカ殴るし、物扱いするしさァ。挙句罪のない女の子を傷つけるとか……許せないよねぇ」


散々に殴り蹴られた腹部を摩りながら、エリシアは舐るような視線をアリキーノたちに向ける。

そんな蛇に睨まれた蛙のような状況を打開するべく、アリキーノは引き攣った無理を感じさせる笑い声をあげる。


「は、はは! 何を言っているんだね! 大体君は手も足も出せないだろう? その鉄格子から君は届くことのない手を伸ばすしか——」


そこまで言った瞬間、アリキーノの顔が凍りつく。

自分の言葉に、笑みを絶やすことのない彼女の表情が意味することを理解したから。


「ロビン! 奴の、奴の聖剣は!」


「えぁ? そ、それはここに……」


「よこせィ!」


そう言ってアリキーノはロビンが持っていたエリシアの聖剣を奪い取る。革の鞘に収まった聖剣をじっと見つめてから、それを抜いて刀身を見て驚愕する。


「こ、これは——聖剣ではない!?」


「は?」


その言葉にロビンとラカムはその剣を覗き込む。その刀身は装飾が施された壮麗なもの。だが、それは決定的にヴァイストとは違う。ヴァイストの持つ美しい赤みを帯びた光沢はない、単なる鉄鋼の色。


「馬鹿者! こ、これは聖剣ではない……ただの鉄剣だ!」


「はァ!? じゃ、じゃあ聖剣は……」


「決まってるだろう? ここだよ」


そう言った彼女の手に握られていたのは揺らめく炎のように赤く輝く刀身——彼女の相棒、聖剣ヴァイスト。

そして、凍りついた表情の三人に向けて、その切先を向けながら笑う。


「さぁヴァイスト、『焼浄』の理を司る聖剣よ。待たせて悪かったね。ようやく君の出番——」


その言葉に応えるように、ヴァイストの刀身が炎に包まれ、真っ赤に輝く。

エリシアはそれを目にも止まらぬ速さで目の前の鉄格子に向けて振り抜く。

次の瞬間、シャールとアリキーノたちの間を隔てていた鉄格子が真っ赤に焼け融けた。


「ボクたちの道を切り開き、悪党を裁く時だ」


エリシアは目を剥くアリキーノたちを見ながらそう言って笑った。

ねたばらしはまた次のパートで

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ