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Ep.5-83

アリキーノたちに引っ立てられるようにして、両手を手錠で、足も鉄輪と鎖で拘束されたアイリが現れる。その姿を見て、シャールは顔を真っ青にする。彼らがやろうとしていることが分かってしまったから。

そんなシャールの顔を見ながら、アリキーノはにたにたとした気味の悪い笑みを浮かべる。


「――さて、君たちは大事な商品だ。残念ながら傷物にするわけにはいかない。だが、私としては君たちの苦しむ顔をどうしても見たいのだよ。ああ、この葛藤をどうするべきか!」


芝居がかった口調で大きな身振り手振りとともに、アリキーノは滔々と語る。そんな彼の様子に、彼についてきたラカムとロビンは苦笑を漏らす。


「だがこうも思った。別に君たちを苦しめるために傷つけるのは、君たち自身でなくてもいいだろう、とね。そう、ならば君たちの目の前で罪のない幼気な少女――それも君と深い関係にあるという少女を甚振ってみようではないか」


そう言ってアリキーノは覚束ない足元のアイリをその太い腕で突き飛ばす。彼女は足かせでうまくバランスをとることが出来ずその場に倒れ込む。冷たく硬い石床、その尖った部分にぶつけてしまったのだろう。彼女の膝からは真っ赤な血がにじみ出ていた。


「アイリ――!」


シャールは思わず鉄格子に駆け寄り、アイリに向けて叫ぶ。そして、次の瞬間その叫びが悪手であったことを理解する。アリキーノの顔に浮かんだ下卑た笑みがより一層深くなったからだ。彼は今この瞬間に確信したのだろう、シャールの心を壊すにはこの少女を壊すのが一番だと。

唇を震わせるシャール。そんな彼女の横で、エリシアは眉間にしわを寄せながら、アリキーノに問いかける。


「彼女も大事な商品なんじゃないのかい?」


「はは、まあそれはそうなんだけどね。というか何だったら、一度得意先に売ったのを君たちのために再度借り受けている状況だからね。本当は壊したりしてはいけないのだろうけれども……」


そこまで言ってから、アリキーノはうずくまるアイリの傷口に泥と砂にまみれた靴の裏側をこすりつける。そこまで声を上げるのを我慢していたアイリも、その痛みにはついに耐え切れず悲鳴を上げてしまう。


「でもまあ、君たちという商品を少し割安で買わせてやれば文句は無かろう! なにせ聖剣使いだ! 彼らからすれば、垂涎の品だろうからな。単なる村娘の一人や二人喜んで使いつぶさせるだろうよ」


「やめて……お願い、何だってするから……アイリにひどいことをしないで!」


アリキーノの言葉を遮るように、シャールは叫ぶ。その悲痛な叫びに、エリシアは表情を歪め、アリキーノは口の端を更に吊り上げる。


「んんん~、良い声だ! いい嘆きだ! 今までは直接痛めつけるばかりだったが、これはこれで良い!」


そう言うと、アリキーノは傍らのロビンに目で合図をする。それを受けて、ロビンは倒れたアイリを無理やりに立たせて、壁に設えられた拘束具をアイリに着用させる。身体を大の字に広げさせられ、動くことも逃げることもできない、まな板の上で捌かれる魚のような状態にされたアイリ。その目には恐怖と絶望が浮かんでいた。


「いや、いやあ……」


彼女の口から震える声が漏れた。そんな彼女の声に表情を紅潮させたアリキーノは更にロビンに合図を送る。それに従って彼が持ってきたのは、銀色のトレーに載せられたナイフや工具のようなもの。それをどのように使うのか、シャールは想像したくもなかった。


「さあ、ショーの始まりだよ?」


アリキーノは鼻を膨らませながら、そう宣う。そんな彼の顔と悲壮に歪むアイリの顔を見てシャールは強く、血がにじむほどに鉄格子を握りしめ、自分の無力さを噛み締める。

そんな時、彼女の背後から声が響いた。


「そうだね、ショーの始まりだ。異常性癖者御用達の猟奇ショーなんかじゃない。どんでん返しの果てに悪は惨めに滅ぼされる。そんな万人好みの英雄劇(ヒーローショー)のね」

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