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大罪踏破のピカレスク~人間に絶望したので、女神から授かった能力で誰よりも悪役らしく生きていきます  作者: 鎖比羅千里
Episode.2 Reminiscence——The day when the villain was born.
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Ep.2-7

活動報告でもお知らせしましたが、朝の投稿は諸事情によりお休みさせていただきました。申し訳ありません。

途切れ途切れに笑う少年に「神」は問いかける。


『アンタは、どうしたいの?』


「どう、したい……? どうも、できない……よ。もう、生きてなんて……いられない」


もうこの傷だらけの足、この動かない身体では逃げられない。今は追っ手は撒いているが、いずれ見つからないとなれば森を虱潰しに探すだろう。そうすれば見つかるまでに3日とかからない。

そして見つかって仕舞えば———とびきり残虐に、惨めに殺される。


『生きていられるとしたら?』


「え———?」


『考えなさい。そして答えなさい———貴方はどうありたい?』


冷厳と響く声に少年は息を呑む。

どうありたい———どう生きたい?


「ぼ、くは———」


何を望む? 何が欲しい?


「ぼく、は———」


どうしたい? どうしたいって——?

そんなことは決まっているだろう―――


「僕は———もう誰にも、僕を‥‥‥虐げさせ、ない!! ヒトの悪性が僕を虐げるというのなら‥‥‥その全てを———あらゆる悪を踏みにじる……何者よりも純粋で、絶対的な悪になる……!」


『ふふ、くふふ……あははははは!! いいわいいわ、いいじゃない! くく、それでこそ。ここまで呼びつけた甲斐があったってものよ!』


叫ぶ少年に応えるように「神」は高らかに笑う。これまでの嘲弄の笑いとは少し違う、歓喜と愉悦に満ち満ちた、瑞々しい果実のような笑い声だった。それが、乾きひび割れた大地のような少年の心をほんの少しだけ潤した。

その声に少年は拳を握りしめ、動くことを全力で拒む身体に鞭打ってなんとか上体を起き上げる。


『アンタがそれを望むなら、私はそれを叶える力をあげる……もちろん対価は戴くけれど。どうする?』


どうするって? そんなコト、問われるまでもない。


「———構わないッ! ソレに僕の願いを叶える力があるのなら! 僕に寄越せッ!」


『———その言葉、確かに聞き届けたわ。ここに契約は成立。ふふ、仮にも神との契約よ? 死んでも逃げ切れるなんて思わないでよね?』


艶然とした声でそう告げる「神」に、少年は皮肉げに、唇の端を吊り上げながら返す。


「逃げようなんて思わないさ―――それよりいい加減姿を現したらどうなんだ?」


『確かにね———ならば刮目しなさい人の子よ。私と契約を結んだお前に、我が玉体を拝謁する栄を与えよう!』


その瞬間、強い風が遺跡の中を吹き荒れる。それと同時に、青白い炎が渦を成し、遺跡の中を覆っていく。

自分に向かって伸びてくる炎に、少年は思わず目を閉じる。

次の瞬間、目を開いた少年は思わず息を呑む。

その視線の先、炎の渦の中心に人が———少女がいたからだ。


「き、みは———」


人体美における黄金比を体現したかのような端正な顔立ち。透き通った白い肌に薄紅色の唇は清純と扇情の調和の極致のよう。閉じられた目蓋を縁取る睫毛の美しい陰りは、どこか悩ましげで、絵画の中の存在のようだ。

そして何より目を引くのは遺跡を包む炎とともに揺らめき波打つ青白い髪。

美しく艶めき広がるその髪は色味の似た炎と一体を成し全てを包み込むようで、少年はただただその光景に圧倒される。


言葉を失った少年に、炎の中の少女は目蓋を開け、紫紺色の瞳を煌めかせながら告げる。


「さあ、力を与えましょう、愚かな子よ。貴方の望みのために、そして私の望みのために」

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