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Ep.5-61

「大人しくしてもらおうか、クソガキ」


エリオスを取り囲んだ男たちの一人、フードを目深に被った男はサーベルをちらつかせながらそう言って口の端を吊り上げた。よく見れば、彼は取り込んだ女性の記憶の中で見た男だった。

周りの男たちも薄ら笑いを浮かべて、エリオスを見ている。その目は嗜虐の愉悦に満ち溢れていたり、品定めをするようなねっとりとした光が浮かんでいたりする。吐き気すら感じるような視線にさらされながらも、エリオスは男たちと相対しながら微笑みすら浮かべながら言葉を返す。


「――『お断り』って答えたらどうする?」


試すような視線を向けるエリオスに、男たちは大声をあげて笑う。そんな彼らの反応に目を細め、眉根を顰めるエリオスに、フードの男は応える。


「ふん、できればその綺麗な顔は傷物にしたくはないんだがな。それはそれとして、抵抗するようなやつは俺らの扱う商品としては不適格だ。財産はちゃんと持ち主の意のままにならなきゃいけねえからな」


そう言いながら、男はねっとりとした舐るような視線をエリオスに向ける。


「そうだな。まずは足を砕いてやろうか、それから手の指を一本一本つぶしてやる。袋叩きにして自分の立場ってモンを叩き込んでやるよ。命乞いして泣きわめきはじめるだろうよ。でも、そんな言葉なんてのは上っ面だけでちゃんと服従しているかは分からねえ。そうだな、せっかくこんな場所だからな。縛り上げて家畜小屋に放り込んで、家畜の慰み者にでもして、ちゃんと俺たちに服従するのか試してみるか? ひっでえことになるだろうなあ……でも、安心しろ心の底から。俺たちに服従するようになれば、そっからはちゃあんと『商品』として躾けてやる。」


中性的な顔をしたエリオスの顔を見ながら、男はそんな下劣なことを言ってのける。想像するだけで吐き気を催しそうな構想。彼らが本気かどうかは分からないけれど、周りの男たちも、にやにやと笑いながら嗜虐的な目で、エリオスがどんな反応を示すか期待の眼を向けていた。しかし――


「それだけ?」


男の言葉に、エリオスは眉根を顰めたままそう返した。その言葉は男たちにとっては予想外だったようで、一瞬困惑に表情を歪ませる。一見すれば、「その程度か」と侮るような言葉だが、その表情からはそんな意図は感じられない。侮りなどではなく、本気で「他にないのか」「もっと別なのはないのか」と言っているような不服そうな表情だった。

とはいえ、別にエリオスは「そんな責め苦では満足できない」という真正のマゾヒストではないし、隠された被虐趣味をこんなところで開花させたわけでもない。

ただ単に、「もっと自分を屈服させるのに有効な手段があるはずだろう」――そういう疑念から生じた問いかけだった。

しかし、男たちはその意図を汲みかねて、異常なモノを見るような視線をエリオスに向ける。そんな彼らの反応にため息を漏らしながら、エリオスは言葉を続ける。


「――私のツレ、どうしたのかな」


「……! ああ、そういうことか。はは、澄ました顔して心配性なんだなあアンタ」


エリオスの問いかけに、フードの男は先ほどの言葉の意味を理解したようで、にたにたと嗤いだす。男は肩を竦めながら、エリオスを舐め回すように見遣る。


「安心しろよ。あの青い髪の姉ちゃんはちゃあんと無事だぜ。とりあえず、俺たちが知っている限りはな。ああ、白磁みたいな滑らかな肌も、ちょっときつそうな目も最高だったなアイツ。ちょっと細っこいけど、あれはあれでいい商品になるだろう。なあ、お前ら?」


男はそう言って仲間たちに笑いかける。その言葉に周囲の男たちもげらげらと笑いだす。そんな彼らの言葉に、エリオスは胸を押さえながら表情を歪める。


「お前たち……」


「おお、怒ってるなクソガキ。じゃあもう少し教えてやろうか、襲われたときのあの娘の様子を?」


エリオスの表情を見ながら、男は陶酔したような表情で語り始める。

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