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Ep.5-53

仕事のトラブルで、投稿どころではなくなり昼の投稿がとんでもない時間になりました……申し訳ありません。

夜の投稿はこれとは別にさせていただきます。

時は少しだけ戻って、夕日が山脈の向こうに消える頃。ちょうど、エリシアとシャールがディーテ村を出て盗賊たちの拠点である森に向かった時分まで遡る。


「さて、私もそろそろ動くとするかな――」


窓際の桟に腰かけていたエリオスはひらりとそこから降りて、椅子の背に掛けた外套に袖を通して身支度を整える。そんな彼を見て、アリアは口の端を吊り上げて皮肉っぽい笑みを浮かべる。そんな彼女の視線に気が付いて、エリオスは唇を尖らせる。


「――なんだいアリア。ニヤニヤして……」


「別にぃ。ただ、珍しくやる気だと思ってね――本気でこの村を守るために頑張ろうなんて思ってるわけ?」


「ふふ、もちろんそう思っているよ――だって、約束したからねえ。この村を守ってやるって」


エリオスは目を細めて窓の外を見遣りながら、ねっとりとした声でそう言ってのけた。その答えにアリアは一瞬ぎょっとしたような表情を浮かべるも、直ぐに苦笑を漏らした。


「――ねえエリオス、アンタそれ言ってて気持ち悪くない?」


「……滅茶苦茶気持ち悪い。ちょっと言ってみて後悔した」


エリオスはそう言って肩を竦め、全身を震わせるような仕草をして見せる。そんな彼をせせら笑いながら、アリアは青い髪を揺らしながらゆったりとエリオスにしな垂れかかるようにしながら、その頬に両手で触れる。


「それで、ホントのところは?」


「――君には敵わないなあ、ホント。でも、この村を守るってのは本気だよ?」


「あら、そうなの。てっきり二人が留守の間に村人を尽く皆殺しにして、帰ってきた二人の表情を肴に一杯——とか考えてるのかと思ったのだけど」


「いや、君の中の私のイメージどうなってるのさ?」


唇を尖らせ抗議するエリオスに向けて、アリアはからからと笑う。


「だって、アンタは『悪役』なんでしょ?」


「——たしかに、私はもちろん悪役だし、サディスティックな癖のあることは自覚しているけどねぇ……そこまで、享楽優先の生き方をしているつもりはないよ?」


「あらそう? アリキーノを始末したときなんかは随分と愉しそうだったけど」


アリアの指摘にエリオスは僅かに表情を歪めながらも、かぶりを振る。


「だってアレはもう終わったモノを処分するだけの行為だろう? ゴミ箱にゴミを投げ入れるときに、確実に入るように単に上から落とすか、あるいは遊戯のように遠くから投げ入れてみるか——そこにはこの先を変えるような大きな意義は存在しない。だから、私はアレを処分するのに後者を選択してささやかな愉悦を感じようとしただけさ」


ため息混じりに肩を竦めながらそう宣うエリオスをアリアは楽しげに見つめていた。珍しく饒舌に語る彼を面白がっていたのかもしれない。

そんなニヤついたアリアに少し真剣な表情を向けてエリオスは続ける。


「でも、今回は違う。この村の『意義』はまだ終わっていない——彼女にとって、まだこの村の、村人たちの価値は死んじゃいない」


「——あっそ。結局はあの娘のためってこと?」


「いやいや、君のためでもあるんだよ? だって、ここで下手に彼女たちを怒らせて聖剣使い二人をこのタイミングで敵に回すのは得策じゃないからね。私たちの契約の履行のためには」


そんなエリオスの宥めるような言葉に、アリアは唇を尖らせながら踵を返してベッドに飛び込む。そんな彼女に苦笑を漏らしながら、エリオスはドアへと向かう。

そしてドアノブに手をかける寸前、手を止める。


「——ああ、でもね。君、一つ勘違いしてるよ」


その言葉にアリアはむくりと起き上がって、細めた目でエリオスを見つめる。


「さっきのは、私がこの村を壊さない理由。この村を積極的に守るのはまた別の理由さ」


そう口にしながらエリオスは、ちらとアリアの方を振り返り、そしてにんまりと笑う。


「きっとこの村には私たち好みのコトが起きる。私はね、それがとてもとても楽しみで——だからこの村を守るんだよ」

本当にここ数日寒いですね。

かと思ったら、職場はそそくさとエアコンを止めてしまったので、逆にちょっと暑いっていう……

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