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Ep.5-49

木の蔦に全身を絡め取られる者、素早い風のようなナイフ捌きに狩られる者。逃げようとする者も、捨て身でおそいかかる者も、等しく二人の手で倒されていく。

次々と倒れていく同胞を目の前にしながら、ロビンは大立ち回りを演ずる二人に目を釘付けにして、賞賛の口笛を軽やかに鳴らす。


「——さすが。雑魚じゃあ足止めにもなりゃあしないな」


苦笑を漏らしながらそう零したロビンに、エリシアはナイフの切先を向ける。


「一応聞いておくけど、投降する気はあるかな?」


つい先程、彼女たちに投げたはずの問いかけ。それがあまりの早さで自分に返ってきたことに、ロビンは口の端を引き攣らせる。

それでもロビンは僅かに上擦った声ながらに答える。


「悪いけど、ここで捕まる気は毛頭ないね」


「そう。じゃあ君もボクらに楯突いてみる?」


もはやこの場で立っているのはシャールとエリシア、そしてロビンだけだ。仲間たちは地面で無様にうめき散らしている。


「ろ、ロビン……」

「た、たすけろよ……俺たち、仲間だろ……」

「なぁ、おい! なんとか言えよォ……」


自分に視線を向ける仲間たちを見ながら、ロビンは頭を掻き、そして笑う。


「いやぁ、悪いな兄弟! 申し訳ないが、俺はそこまでお前たちの面倒を見てやる気はねーんだわ。運良く生き残ってたら助けてやるから、今はそのまま大人しくしててくれ」


悪気のなさそうな笑みで、そう告げるとロビンはくるりと踵を返して茂みを軽やかに飛び越えて、その向こうへと駆け出した。

そんな彼の背中に向けて、エリシアが叫ぶ。


「——ッ! 逃げるのか!?」


「おうとも! 勝てない戦は逃げるに限る! 撤退も立派な戦略ってな!」


からからと笑いながらそう答え、遠ざかっていくロビンにエリシアは舌打ちをする。そんな彼女の袖を、シャールは掴んだ。


「行きましょう、エリシア! 彼の後を追えば、彼らの本陣につくはずです!」


「——そう、だね……しょうがない。行くか」


どこか気乗りしなさそうな表情ながらに、エリシアはそう答えると駆け出す。シャールもそんな彼女の後を追った。



§ § §



「——おっと、やっぱり追ってきたかご両人! いやぁ、そう来なくっちゃな」


自分の後を追って森の奥、野営地の中心までやってきたエリシアとシャールをロビンはひどく愉快そうな表情を浮かべながらそんな言葉で迎えた。

木々が開け、狭い広場のようになった野営地にはいくつかのテントが並んでいる。そのほとんどは撤収作業の真っただ中で、多くのテントは既に骨組みを残すのみとなっている。そんな中にありながら、ただ一つだけ布のかかったままのテントがあった。その前にロビンは腕を組み、にやにやと笑いながら立っていた。一人の男と共に。

男は明らかに先ほどまでの盗賊とは雰囲気が違っていた。白いものの混じった黒い長髪、刀傷だらけの顔、そして猛禽のような鋭い瞳。ただものではないその雰囲気の差は、シャールにさえ感じ取れた。

そんな彼に対しても怖じることなく、エリシアは問いかける。


「――君がこの拠点の監督役?」


エリシアの問いかけに、男はパイプをくゆらせ、紫煙を吐きながら答える。


「ああ、そうだ。俺の名はラカム、組織では副団長を務めている。ま、おっかない団長と自由気ままな部下どもの間に挟まれて難儀するしがない中間管理職だ」


男――ラカムはくつくつと笑いながらそう言った。

いつのまにやら300パート目到達していました。

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