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Ep.5-6

「あー……それで、レブランクのどこに行くんだい?」


ぽかぽかと横から肩を殴りつけるアリアを横目に、エリオスは視線をエリシアに投げる。


「一口に言ってもあの国は広い……いや、広かったからね」


ちらとシャールを見やりながら、エリオスはにまにまと笑う。態々言い直してシャールの反応を見る辺り、エリオスの底意地の悪さが垣間見える。

そんなエリオスの視線を無視してシャールは、エリシアを見遣る。


「それで……エリシア様はどちらに?」


「君のよく知ってるトコロ——ディーテ村さ」


「——ッ!」


その名を聞いた瞬間に、シャールの表情が固まる。それを見て、エリオスとアリアはきょとんとした表情を浮かべる。


「聞いたこと無い村だけど……」


「何だいシャール、実はその村レブランク国内では知る人ぞ知る大観光地だったりしたのかい?」


エリオスとアリアは、そろって同じような角度で首を傾げる。そんな彼らの問いかけに、シャールはゆるゆると首を横に振る。


「い、いえ……あそこはそんなご大層なところでは……というか、エリシア様……そこは……」


「ん? 何か不都合でも?」


どこか愉しげなエリシアの表情は、どこかエリオスの嗜虐的な笑みを彷彿とさせる。少しだけ釣り上がった口の端に、愉悦の感情が浮き出ている。


「え、エリシア様は意地悪です……」


「ま、出自が出自だからね。レイチェルちゃん達みたいに聖人君子を志向してる身でもないし」


くすくすと笑いながら、エリシアはそう言った。エリオスとその笑顔は似ているのに、彼からは濃密にあふれ出ているような邪気が彼女から感じられないのは、人徳の差か。シャールはため息を吐きながら、エリオスたちの方を見る。


「ディーテ村はレブランク王国の王都マルボルジェから見て東側にあります。王国を北から南に縦断するウェルギリス山脈の最高峰、アリギエルの麓にある森で、さっきエリシア様が言っていた通り温泉地としても、まあ知る人ぞ知るという具合な村です」


「ウェルギリス山脈……山越えが必要になるのかな?」


「いえ、それは不要です。ディーテ村は山脈の東側、つまりベルカ公国側にありますので。ここからなら馬車で半日もかからずに行けてしまいます。なのでお客さんも、体感的にはレブランクの方よりもベルカ公国だとか、隣国からの方の方が多かったくらいです」


「へえ……って、『体感的に』? って、まさか……」


エリオスは何かに気が付いたように、エリシアとシャールの顔にかわるがわるに視線を向ける。どうやら、彼は理解したらしい。シャールは諦めたように小さくため息を吐いて告げる。


「ええ、御察しの通りです。ディーテ村、そこは私の故郷――ルカント様に勇者一行として連れ出されるまで私の世界の全てだった村です」


そう言ってシャールはどこか寂し気に笑った。

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