Intld.Ⅲ-xi
ちょっと説明文多めです
祭儀神託官と教義聖典官。
相互に監視し合い、より高みを目指すべく分かたれた二つの組織は次第に、その原初の目的から外れる形で対立を深めていった。
歴史学者たちの間で、そのきっかけと言われる出来事はいくつか挙げられている。700年前の最高巫司による統制局長への教導権の発動であったり、あるいは650年前の統制局長による当時の最高巫司への破門宣告、異端認定からの処刑に至るまでの強権であったり。
表立って聖教会を二分するような戦いは起きていないが、長く聖教会内部は冷戦状態にあり、時折そのような歴史的事件という形で顕在化することがある。
だが、結局のところその根本的な原因は互いの傲りであるのだろうと、教会にまつわる多くの人々は感じていた。
祭儀神託官の構成員たちは、自分たちは神の代理人、あるいはそれを補佐する立場であり、神に近い仕事をしているのだという自負がある。故に、ときに自分たちを他者と比べて高次の存在であると考える者も現れる。そう言った思想が、教義聖典官の構成員たちを見下し、「血に汚れた者たち」「金に群がる下賤な者」と考える風潮を祭儀神託官と言う組織の中に蔓延らせた。
一方で、教義聖典官の構成員たちも「自分たちが教会という組織を支えているのだ」という自負を持って、神に身を捧げている。教えを広め、寄付や金を集め、異端や神への敵対者が現れればこれを廃滅する。神の教えと人々を守る。これ以上ない崇高な務めであり、自分たちにしか出来ないことだという誇りを抱いている。そんな彼らのその誇りは、自分たちを見下す祭儀神託官の者たちを「口だけの無能」と蔑むことへと繋がっている。
千年に及ぶ歴史の中で、神の意思を守り続けたと言う彼らの誇りは、傲りに成り果てた。そして今も、対立は続いている。
一つ幸いだったのは、そんな傲りが内側のみに向けられて、教会の外にいる無辜の人々へは向かなかったことだろうか。
しかし、両組織による足の引っ張り合いは「魔王の出現」という非常事態にあっては、教会内のいざこざというだけでは済まない意味合いを持つ。
特に、今回の連名勅令はそういう側面を大いに孕んでいた。
「統制局長からの要請、という名の要求は二つ。教義聖典官の構成員たる騎士を随行させること。そして、エリオス・カルヴェリウスと接触後彼が随行を拒んだら聖教会の威信にかけて捕らえて連行すること——でしたよね?」
「そう。で、私たちは彼らに押し切られる形でその内容を盛り込んだ連名勅令を出した——本当、私が若いからって好き勝手してくれるわ……」
珍しく苛立ちを露わにするユーラリアにザロアスタは少し驚いたような表情をする。
「——その、好き勝手の結果随行した騎士が我輩なわけですが……この話は聞かなかったことにした方がよろしいかな? 猊下」
「あら、ありがとうザロアスタ卿。貴方のそう言う思慮深いところ、好きですよ。でも心配ないわ、全て統制局長に伝えてもらっても構わない。私は恥いるようなことを口になんてしてませんから」
毅然と言い放つユーラリアに、ザロアスタは苦笑を漏らした。そんな中、レイチェルがふと尋ねた。
「しかし、統制局長は本当に我々がエリオス・カルヴェリウスを打倒し、連行できるなどと思っていたのでしょうか?」
そんな彼女の問いに、ユーラリアは皮肉っぽく表情を歪めながら笑ってみせる。
「まさか——彼がそんな愚か者なら、私がこんなに難儀することなんて無かったでしょうね」
前の土日に感想の返信しようかな、などとほざいておりましたが、FGOfesがあったから普通に無理でしたね……
気長にお待ちください……




