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Intld.Ⅲ-ⅸ

「もしこの旅路を経てもなお彼がその在り方を改めず、罪を悔いることがないのなら、私は私の持てる全権限、全能力を用いて——神の名の下に彼を裁きます」


そう言ってユーラリアはにんまりと笑った。そんな彼女の言葉にレイチェルとザロアスタは言葉を失う。一切の躊躇いなく言い放った彼女の姿があまりにも――


「――傲慢、ですね」


「あら、ずいぶんな言われようね」


「あ、えと……申し訳ありません。どうぞご処断を」


レイチェルは思わず口を突いて出た言葉を謝罪してその場に跪く。そんな彼女にユーラリアは気にする風でもなくにっこり微笑む。


「その不敬は……そうですね、先ほどの奉仕でもって免罪するとしましょう」


そう言って、ユーラリアは手元のティーカップ――レイチェルが彼女に求められて紅茶を注ぎ入れたもの――を掲げて見せた。そんな彼女の言葉に、レイチェルは更に深々と頭を下げてから椅子へと戻る。そんな彼女を見ながら、ユーラリアは伏し目がちに笑ってみせる。


「傲慢――確かにそうでしょうね。人に贖罪なんてものを押し付け、それに従わないなら裁くまでと嘯くなんて、ひどい傲慢。でも、私は神の代理人――最高巫司。少しくらい傲慢でなくてはそんなの務まらないと思いません?」


そう言って悪戯っぽく笑うユーラリアをレイチェルとザロアスタは苦笑交じりに見ていた。


「まあつまるところ、彼との衝突は私としては想定の範囲内です。なので貴女が結んだ約束、独断でしたことは問題ではありますが、大勢への影響はありませんので安心してくださいな」


「は――恐れ入ります」


「うん。じゃあ、改めて。貴方たちがベルカ公国の森の奥で出会った悪役さんについて聞かせてちょうだいな」


そんな彼女の言葉にレイチェルは頷き、そして語り始めた。

レブランクから失われたはずの聖剣アメルタートを持った少女シャール、やたらと聖騎士たちを邪険に扱う青い髪の少女アリアの二人との邂逅。

シャールが聖剣を持っていることへのザロアスタの憤激。アリアの危機に現れたエリオス・カルヴェリウス。そして彼らとの戦い。

レイチェルはエリオスと戦い、死の淵まで追い詰められたこと。彼の残忍性とその脅威。

ザロアスタはシャール・ホーソーンという少女の高潔さ、そして彼女が正しく聖剣の使い手であるということを確信した旨を伝えた。

そして、戦いの終結として現れた勇者エリシアのことも。

そんな二人の話を聞いて、ユーラリアは紅茶をほんの少し含んでから口を開いた。


「そう。エリシアは役に立ったのね。それは重畳」


「——彼女があの時あの場に現れ、我々の戦いに介入したのは、猊下の目論見通り、だったのですか?」


「ええ、まあ。尤も、こんなに予想通りにことが動いていたというのは逆に予想外でしたが——エリオス・カルヴェリウスも、貴方たちも分かりやすくて助かるわ」


くすくすと笑いながら、ユーラリアはレイチェルとザロアスタをそれぞれ見やる。ザロアスタは苦笑を漏らしながら肩をすくめる。対するレイチェルはきまり悪そうに頬を赤らめながら俯いていた。

そんな二人を見ながら、眉根を寄せながらユーラリアは言う。


「尤も、シャール・ホーソーンの存在だけは想定外でしたね。ザロアスタ卿とレイチェルが二手に分かれて戦うという状況は想像していませんでした」


「……では、どこまでが貴女の目論みのうちだったんです?」


唇を尖らせ、どこか拗ねたような様子でレイチェルが問うた。そんな彼女にユーラリアは苦笑を漏らしながら応える。


「そうね、ずっと貴女たちが話しっぱなしだったのだもの。今度は私が説明側に回りましょうか」

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