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大罪踏破のピカレスク~人間に絶望したので、女神から授かった能力で誰よりも悪役らしく生きていきます  作者: 鎖比羅千里
Episode.1 The fate of people who Enter into the palace of Villain...
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Ep.1-22

「質問——?」


怪訝な顔をして、エリオスは復唱する。いまさら何を問うことがあるのだろう、そんなことを考えているのがありありと見えた。


「良いだろう、聞かせてごらんよ。答えるかは——内容と気分次第だがね」


肩を竦め、腕を組んでエリオスは先を促す。シャールは静かに小さく息を吐き、アメルタートを自分の首筋に当てたままに口を開く。


「あなたは何をしたいのですか」


「は――? なにそれ」


「あなたの目的は何かと聞いています。何のために『悪役っぽい』なんて振る舞いをするのか——」


シャールの目から見て、エリオスの在り方はあまりにも歪だった。ルカントたちを惨殺した残虐で嗜虐的な彼の姿、アリアを前にしたときの子供のような姿。それだけならばただの二面性と言い捨てることもできるだろう。だがその在り方はパッチワークを切り貼りしたようで、モザイクがかかったようで、その実像が全くつかめない。その奥にある目的が掴めないのだ。

欲望のままに他者をないがしろにする悪人とはどこか違う——「悪人」としてもその在り方は歪だ。

ああ、だから——彼は「悪役」なのか。


「それを聞いてどうする?」


「聞かなくては、私はあなたに自分の身柄を与えるかどうか決めかねます」


「は? なんでさ」


心底から分からないという表情を浮かべるエリオス。シャールにとっては、エリオスの検体になるか否かの判断は、自分の生死を分けるまさしく致命的な分水嶺だ。それが、エリオスの振る舞いの真意によって左右されるなどというのは、エリオスには理解できなかったのだろう。本当に困惑したような顔を浮かべている。

そんな彼に、シャールは諭すように訥々と告げる。


「——私の身命はルカント様の世界を、人々を救うための旅の従者として選ばれました」


「その勇者サマはさっき死んだ。君を縛るものはない」


「いいえ、あります」


茶化すように口を挟んだエリオスの戯言を、シャールは一瞬で切り捨てる。その気迫に、エリオスは思わずたじろいだ。そんな彼を捨て置くように、シャールは言葉を続ける。まるで二の矢を番える弓兵のような勢いを以て。


「私を縛るのは私自身——ルカント様、アグナッツォ様、ミリア様を目の前でみすみす死なせておいて、自分だけ世界の敵に、人々の敵に屈して生き永らえるなんてことは私が許せない。それぐらいなら私はここでアメルタートで死にます」


「——滅私奉公ってコト? は、反吐が出るね」


悍ましいモノを見たと言わんばかりにエリオスは吐き捨てる。そんな彼の言葉に答えることなく、シャールは改めて問いなおす。


「さあ、答えてくださいエリオス・カルヴェリウス卿。あなたは何のために『悪役』として生きているのですか。あなたの目的は世界に、人類に仇なすことですか」


そう言い放ったシャールの、凄然とした顔に、エリオスは強く歯噛みし、そして諦めたように口を開く。


「私は——」

ストックはもう少し続きますが、Episode1はほぼ終盤です。今後ともお付き合いいただけたら幸いです。


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