Ep.4-78
連休終わってしまいましたね
「く、ふふ……あははは! いいわね、愉快じゃない! 最高じゃない!」
アリアはソファの上で自分の身体を抱きながら愉悦に悶えるように笑う。
そんな彼女を見ながら、エリオスは開いたページを読み上げる。
「『英雄の最後の務めは、道を断つこと。鍵を別ち、門を閉じる。一の鍵は古き英雄の血の礎に。二の鍵は理を識る者の手の内に。三の鍵は爾今の英雄の至るべき地へと』——エイデスの神話の片隅で吟じられる詩だ。一般的な認知度も注目度も低いけれど、君ならこの詞の意味と意義、分かるよね?」
試すような、悪戯っぽい視線を投げるエリオス。そんな彼の視線に、アリアはふふんと笑いながら答える。
「ええ、もちろん。レブランク王国、原初の勇者エイデスが生まれ、そして魔王の討伐後国王として即位した国。あの国の王族は皆、エイデスの血族と言われている。即ち、レブランクこそ『古き英雄の血』。『理を識る者』は神話における理、即ち神の教えを司る者——アヴェスト聖教国。そして——」
「『爾今の英雄が至るべき地』。神話において英雄とは聖剣に選ばれた勇者のことであり、過去何人も出現した魔王を倒すべき存在。逆説的に考えれば、そんな英雄たちが至るべき地とは、その存在と対をなす魔王が支配する領域のことに他ならない。即ち、暗黒大陸こそがその約束の地ってわけさ」
「ふふ、なかなかの勉強家っぷりじゃない。褒めてあげる」
アリアは笑いながら、テーブル越しに手を伸ばして頬杖をついたエリオスの頭をがしがしとかき混ぜるように撫でる。
「君は一体私をいくつだと思ってるんだい?」
「あら、少なくともアンタは私よりどこまでいっても歳下でしょ?」
くすくすと楽しそうに笑うアリアに、エリオスは「敵わない」と言わんばかりに肩を竦める。
「さて、我が主人におかれましては、この喜ばしき報告でもって私の不調法を許していただけますか?」
エリオスは恭しく、それでいて不躾なほどににやけた顔でお辞儀をして見せる。そんな彼を見ながら、アリアは彼に負けないほどの笑みを浮かべて応える。
「ええ、ええ! もちろんよ、私の従僕。あは、いいじゃない。手を貸したと思わせて、連中の本当に大事な部分に噛み付いて、毒を流し込む蛇みたいな構成は最ッ高! 嗚呼、本当にアンタは私好みのショーを見せてくれるわね!」
高揚し、紅潮し、目を燦かせながら笑うアリアを見ながらエリオスは満足げに微笑む。そしてゆらりと立ち上がり彼女の傍に立つと、その場で跪く。
そんな彼にアリアは左手を差し出した。エリオスはその白魚のような手を取り、その甲に軽く口づけをする。そして、にんまりと笑いながら告げる。
「改めて誓おう、アリア。私の主人、私の全て、私の神様……私は契約に従い、我が全能力を用いて必ずや君の望むものを——この世界の総てを君に捧げよう」
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