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大罪踏破のピカレスク~人間に絶望したので、女神から授かった能力で誰よりも悪役らしく生きていきます  作者: 鎖比羅千里
Episode.1 The fate of people who Enter into the palace of Villain...
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Ep.1-20

「君、私の所有物になる気はないかな」


「——は?」


エリオスの言葉にシャールは呆れたような声を上げる。所有物とは——人間()のこと?

不快害虫でも見たように表情を歪めるシャールに対して、エリオスははて、という顔を向ける。


「——私、何かおかしなことを言ったかな?」


「はい、とても」


「そうか……そっかぁ……」


エリオスは「そっかぁ……」と何度も口の中で繰り返しながら、自分の脳内の辞書で億劫そうに適切な言葉を手繰っているようだった。

実は彼にとって「所有物にする」というのは、「殺す」の隠語なのでは、ともシャールは勘繰ってみる。殺したら生き物は生きていない、だから生き物ではなく物になる。故に「所有物」と言える、とか——?


「同棲? 管理下——?」


ぶつぶつとエリオスの口からこぼれ落ちてくるのは、要領を得ない単語ばかり。

同棲とか、管理下とか——まさか、この男は年端もいかない自分を慰み者にでもしようというのだろうか。そう言う意味の「所有物」なのだろうか。などと、厭な想像がシャールの頭を駆け巡る。

そんな彼女の思考が表情に出ていたのかもしれない。エリオスはじとっとした目でこちらを見ていた。

そして小さくため息をついて、改めてシャールに向けた言葉を発する。


「そうだな、君は『検体』、あるいは『研究対象』だ。私のね——故に所有物と形容した、他意はないよ?」


エリオスはそう言ってきまり悪そうに笑ってみせた。その笑顔があまりにもただの少年のようで、さきほどまで人間をなぶり殺していた悪人のそれとはどうにも思えなくて——シャールは今までに感じたことの無い恐ろしさが背筋を奔るのを感じた。目の前の存在は、何とも形容しがたいがどこか「歪つ」だ——シャールはそう直感した。


「『検体』って——人体実験でもするつもりですか?」


シャールは躊躇いがちに問うてみる。シャールは魔術には詳しくないが、魔術師の研究と言えば彼女にとっては薄暗い地下室で、実験材料となる生き物の腹を裂いて臓物を引きずり出したり、それを大釜で煮込んだり‥‥‥というような凄惨な光景を夢想する。

そんなシャールの不安を見抜いてか、エリオスはくすりと笑いながら肩を竦める。


「そうであったのなら悪役らしくていいんじゃないかとも思うがね。君に期待している役割はそれじゃあない‥‥‥私が興味があるのはその聖剣の方でね」


そう言ってエリオスは未だに鈍く若草色の輝きを宿した剣を指さした。


「一体なぜ、どんな興味があるのか‥‥‥なんてことは聞いてくれるなよ? そこまで丁寧に答える気はないからね。ただその聖剣に興味があるということだけ理解していればよろしい。しかし、君も知っての通り私にはその聖剣は触れない——」


苛立ちに近い色で薄ら笑いを歪めながら、エリオスはそう言った。

ふと、ルカントを殺した後に聖剣に手を伸ばして弾かれ困惑していたエリオスの姿をシャールは思い返した。

忌々しさを隠そうともせずに乾いた笑い声を零しながら、エリオスはシャールを見遣る。


「私には触れない。きっとアリアにも触れはしないだろう。だが、君がいる。君がいて、私に協力してくれたのならば、私は聖剣とそれに認められた聖剣使いという存在の両方を解析できる。だから、君が欲しい」


「生かしておくってこと——?」


「生かしておくし、最低限の生活を与える——悪役としては複雑な気分だがね。背に腹は、というやつさ」


エリオスは深くため息を吐いた。

エリオスくん、キャラ崩壊気味?笑笑

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