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Ep.4-64

「状況を整理すると——君たち聖教会は、暗黒大陸に座する『魔王』とやらが、聖剣使いであるという情報を手に入れて、既存の戦力だけでは討伐は不足と考えた。そして君たちの飼い主——最高巫司は、折しもその頃レブランクを滅ぼした私の存在に目をつけ、この私の権能(チカラ)を魔王討伐のための戦力として組み込もうとした。そういうことでよろしい?」


エリオスはテーブルの上で頬杖をつきながら、レイチェル、エリシア、ザロアスタの三人を見る。

そんな彼の視線に応えるようにエリシアは頷く。


「まあ、そういうことだね。あくまで、まだ水面下で動いているだけに過ぎないけれど、聖教会は祭儀神託官、そして最高巫司を中心に魔王討伐のための人員を見繕い、動き出している——尤も、教義聖典官の統制局長のおかげで随分と苦労しているらしいけどね」


そう言ってエリシアはちらと背後に佇むザロアスタを見遣る。

ザロアスタが所属する異端審問局付訴追騎士団は、教義聖典官の一部局であり、統制局長は彼にとって上司に当たるのだったということを、シャールは今更ながらに思い出した。

だとすると、もしかしたら彼がレイチェルと共にエリオスの下に現れたのは、教義聖典官側からの一種の妨害か、あるいは監視だったのかもしれない。尤も、ザロアスタの性格からしてそのような任務を与えるのは不適合なような気もするが。

エリシアの挑発的な皮肉っぽい視線には応えることなく、ザロアスタは小さく鼻を鳴らして目を閉じていた。

そんな彼の態度にエリシアは肩をすくめると改めてエリオスを見つめる。


「さて、ここまで聞いた上で質問だ。エリオス・カルヴェリウスくん。ボクたち聖教会に魔王討伐のため、力を貸してくれないかな」


「それはお願い? それとも命令?」


エリオスは悪戯っぽい微笑みを浮かべながらエリシアに問い返す。その視線はエリシア、レイチェル、そしてシャールへと順々に向けられていく。

聖剣を警戒しているのだと言うことが、シャールにも分かった。

エリシアは苦笑を漏らしながら、傍のレイチェルの方を見る。


「さてどっちが良いかな、レイチェルちゃん? ボクは別に何かの権限があるわけじゃないから、決める立場には無いんだけど」


レイチェルはエリシアを軽く睨むと、ため息を吐いてエリオスに視線を移す。


「我々としては『命令』、と言いたいところだが——残念ながら、これは『お願い』です」


「へぇ。それはどうして? この距離だからね、聖剣使いが三人——聖剣を抜いて私の首に当て、脅迫という名の命令を私にするのも不可能じゃないと思うけど?」


くすくすと笑いながらそう宣うエリオスに、レイチェルは苛立ちの籠った視線を投げる。「分かりきったことを聞くな」とでも言いたげな表情だ。それでも、色々な感情を飲み込んでレイチェルは口を開く。


「たとえこの場で貴方に無理やり魔王討伐への参加を誓わせても、後になって反故にされるのがオチでしょう。それだけならまだしも、魔王との戦いの最中で貴方に寝返られたりすれば、討伐隊は全滅です」


「おや、私はそんなことをするようなヤツだと思われてたのか。傷つくなぁ」


「レブランクを一夜で地獄に変えた貴方に対する正統かつ正確な評価だと思いますが? そんな存在を討伐隊に組み込むなら、せめて本人が望んで参加するような状況でなくては、我々もおちおち敵に向かっていけません」


レイチェルはエリオスの軽口をそう一蹴した。エリオスは肩を竦めて「ごもっとも」と笑った。

そんな二人のやりとりを見ながら、エリシアは再び口を開く。


「これがあくまでお願いだ、ということが分かったところで……さて、エリオスくん。改めて質問だ。ボクたちに手を貸してくれる気はあるかい?」


エリシアの問いに、エリオスはにんまりと笑う。嗜虐的な玩弄するような笑み。そして彼は答える。


「良いだろう——お受けしようじゃないか」

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