Ep.4-59
また日付を超えてしまいました……
「暗黒大陸に居する魔王、神と世界の敵対者たる彼の者を討伐するため——大義としてこれでは不足でしょうか?」
レイチェルの言葉に、シャールは思わず息を呑んだ。最高巫司は魔王を倒すためにエリオスという悪役を味方に引き込もうとしている。
シャールは思わず身体を震わせた。かつて自分たちが戦いを挑もうとしていたのが、それほどの存在だったのだと——最高巫司という絶対的正義が、一つの国を滅ぼすほどの悪意の権化の力を欲するほどの脅威だったのだと理解したから。
レイチェルたちを揶揄い嘲っていたアリアもまた、レイチェルの言葉に絶句して動揺を隠せない。
レイチェルはそんな二人を見ながら話を続ける。
「魔王によるこの大陸への攻撃はこの一年の間にかなり激しさを増した。聖教国にもたびたび配下の魔物が現れて神殿まで迫るほどに。我ら聖騎士も、祭儀神託官と聖典教義官、二つの所属の区別なく対応に当たっているがそれにも能力的に、何より人的に限界がある——元を絶たなくては」
訥々と語るレイチェルの顔には悔しさと、苛立ちを噛み殺すような色が浮かんでいた。レイチェルはかぶりを振ってそんな色を顔から振り払うと、改めてエリオスたちを見る。
「魔王は世界の秩序、そしてその骨格を成す聖教会に対する最大の脅威です。統制局長閣下はまだ猶予はあると嘯いておられるけれど……でもそれは、魔王の軍勢が大陸への侵攻に本格的に取り組んでいないからです——彼らが本格的な侵攻に取り掛かればこの大陸の国々は聖教国も含めて三ヶ月で全て落ちる。それが最高巫司猊下の見立てです」
「まあ、統制局長をはじめとする聖典教義官からすれば魔王の脅威ってのは、色々利用できるから急いで解決する必要もないのかもね。あとは、一応今は聖騎士たちが魔物たちの侵攻を抑えられちゃってるし、その脅威を過小評価してるのかなーって気はするよね」
エリシアはどこか他人事じみた風にそう言ってみせる。
聖典教義官には布教の拡大や寄付金を集めるための財務機関や他国との折衝を行う外務機関がある。
魔王の脅威は民衆の不安を煽り、神への帰依の心を強める。結果として信者の拡大や寄付金による増収を見込んでいるのかもしれない。
あるいは、魔王との戦いのためという名目で他国から半ば強制的に協力金を徴収し、その上で政治的優位性を保てるという打算もあるのかもしれない。
それらは結局のところ教会という組織の利益につながる。
故に、聖典教義官からすれば必要以上に魔王を警戒し、早期に討伐するべきという最高巫司の見解は組織運営の上では好ましくないものなのかもしれない。
神聖で侵し難いアヴェスト聖教会へのイメージがすこし、シャールの中でくすんだ。
「それはそれとして、一つ解せないことがある」
しばらくの間沈黙していたエリオスが口を開いた。皆の視線がエリオスに集まる。
「——曲がりなりにも聖教国はこの大陸随一の国家だ。それは私がレブランクを滅ぼしてあげたおかげで名実ともに——権威にしても実力にしても——揺らぎのない、疑う余地のないものとなったわけだが……だというのに、なぜ最高巫司はそこまで魔王を恐れている。なぜ私という悪役の力を求める?」
その問いに、エリシアは初めて戸惑いのような色を見せた。エリシアはレイチェルと顔を見合わせる。レイチェルはエリシアの視線で彼女が言いたいことを理解したようで、小さく頷いて彼女を首肯する。
そんなレイチェルの許しを受けて、エリシアは口を開く。
「これはまだ公表されていないし、確証があるわけでもない話なんだけどね——どうやら当代の魔王は『聖剣使い』らしい」
FGOの新章をだらだら進めているととんでもない時間になってたりするのですが、どうかご容赦を




