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Ep.4-50

ザロアスタとエリオスの攻防は未だに続いていた。権能や魔術を繰り出し続けるエリオスの表情には時間を経るごとに、苛立ちと不快感が募っていく。

それに対して、ザロアスタの方はといえば、嬉々とした表情で、鬼気迫る剣戟を繰り出し続ける。その顔に満ち溢れた歓びは、時間を経るごとに増していく。傷を受けても、剣が届かずとも。

今この瞬間の闘争が、自らを浄めていくのだという法悦に浸っているのだろう。そう思うたびに、エリオスの表情には不快感が堆積していく。


「——ヌゥ!」


不意にザロアスタの身体がぐらりと揺らぐ。興奮が極まっていたからだろうか。彼は足元の木の根を踏みつけて、足を滑らせた。

その隙をもはやエリオスは見逃さない。二度目はないと言わんばかりに『暴食』の権能を展開する。彼の腕の周りで黒い風が吹き荒れる。

エリオスは大きく体勢を崩したザロアスタを見下ろしながら、皮肉っぽく笑う。


「ざまぁないね——さっさと死んじゃえ、老騎士(ロートル)


普段のエリオスであれば、ここから敵の四肢を削いだり、腱を切ったりして身動きを取れないようにしてから甚振り時間をかけて殺すのだろうが、もはやそんな風に悠長に始末をつけるつもりは、彼には毛頭なかった。

今この瞬間に、この不愉快な笑みを浮かべ続ける狂人を視界から、世界から消し去ってしまいたい。彼の表情からはそんな感情がありありと読み取れた。

対するザロアスタは、そんな彼の表情を見て大いに満足げに笑う——彼の不快こそ、自身の快なりと言わんがごとく。


「消えろ——『私の罪は(Deprive )全てを屠る(your ways)』!」


黒い風がザロアスタに、その身体を食いちぎらんと襲いかかる。ザロアスタは満足げな笑みを浮かべて目を閉じる。ここに決着はついたかに思えた。しかし——


「いいや……まだ、です」


凛然とした声が響いた。次の瞬間、ザロアスタの眉間の先まで迫っていたはずの黒い風——エリオスの権能が霧散する。その瞬間、エリオスは何が起きたのかを理解して後方へと飛び退いた。


「——まだ立ち上がるのかい? 君は」


呆れたような声をあげながら、エリオスは『暴食』の黒い風を消滅させた人物——血塗れの聖剣を突き出したレイチェルを見遣る。

複雑な色味を帯びた笑みを浮かべるエリオスに、レイチェルは笑い返す。


「無論です。命ある限り我が務めは消えず。然るに、私が立ち上がらない道理もない」


「——同胞を殺めた罪はお忘れかい? あんな惨いコトをして、罪の意識はないのかな?」


エリオスはくすくすと笑いながら、レイチェルの中の柔らかい部分を舐り食むようにそう言った。

思わずそれを見ていてシャールは「どの口が」と叫びそうになる。しかし、当のレイチェルはエリオスの非難の言葉に反論するでもなく、彼を見据えて宣う。


「罪は背負おう、彼らが私に死を以って償う事を望むのならば応えよう。だが、それは今である必要はない——今すべきことは」


そう言ってレイチェルはゆっくりと聖剣の切先をエリオスに向ける。


「我が主命を果たす事、それが我が最優先事項だ。さぁ、覚悟しなさい——エリオス・カルヴェリウス」

次でepisode.4も50パート目ですか……


【追記(2021.7.12)】

↑などとほざきましたが、作者のナンバリングミスで今回が50パート目でした。感慨もへったくれもないですね……

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