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Ep.4-47

「嗚呼、そういうこと——やっぱり貴卿、私の嫌いなタイプだ」


エリオスは忌々しげに吐き捨てる。それはザロアスタの中の論理を理解したからこそ出た言葉だった。 

ザロアスタは今、シャールのために戦おうとしている。どういう理屈かは分からない——例えば邪悪な魔術師の手からか弱い聖剣の乙女を救い出そうとか、そういう論理があるのかも知れない。

どのような論理であれ、「シャールのために戦う」ということであるのならば、ザロアスタにとってはそれこそが贖罪となるのだろう。


「さぁ! エリオス・カルヴェリウス! 我が罪を濯いでくれィ! さすれば我が魂は罪より解き放たれ、神の御許にィィ!」


ザロアスタは叫びながら剣を振るう。自分の言葉にさらに陶酔をしているのか、彼の瞳は

つまるところ、勝っても負けても——自分が生き残ろうと殺されようと、彼にとってはどちらでも良いのだ。いっそ、死んでしまえば浄罪された魂のまま神の御許とやらに行けると、むしろ死を望むのかも知れない。


「——死んでも本望って奴は前にもいたけどさぁ……これはちょっとタイプが違う……ッ!」


「手を抜いてなどくれるなよォ! それでは我が罪が濯がれぬ! さぁ、さぁ! さァァァァァッ!」


今の彼の目的はただ自身の身の裡にある罪を清算すること。それは、自分の中で生じ、自分の中でのみ完結する命題。

かつてアリキーノにしたような意趣返しはもはや彼には通じない。例えこの戦いの目的であるシャールを彼の目の前で嬲り殺そうと、聖教国を滅ぼそうと、彼はこの瞬間にシャールのために戦い「罪を濯いだ」という事実だけで彼は満足してしまうのだろう。


「嗚呼、もう! うっざいなァ! —— 『踏破するは(Realize my)暴食の罪(Gluttony)私の罪は(Deprive)全てを屠る(your ways)』!」


エリオスはそう言って掌をザロアスタに突き出して、『暴食』の権能を発動する。彼の掌から吹き荒れた黒い風。しかし、ザロアスタは本能的にそれを回避して、エリオスの首筋に向けて剣を叩き込まんとする。

エリオスはそれをすんでのところで交わすと、ザロアスタから距離を取る。

それを見て、ザロアスタは笑う。


「——ハハハハハッ! どうしたのだ魔術師ィ、我輩を殺してみせよォ! レイチェル卿を屠った貴様はどこに行ったァァ!」


「うっさい!」


趨勢はいつまで経っても決まらない。ザロアスタの体力は果て知らずで、エリオスの手数もまた果てを知らない。

そんな戦いを見守りながら、シャールは聖剣を握りしめ、呻き声を上げながら地面で身を捩るレイチェルを見下ろしていた。


「壊す、だけじゃない……」


シャールがそう呟くと、アメルタートは薄緑色の輝きを見せた。アメルタートがシャールの言葉に応えているように見えた。シャールはその輝きと流れ込む温もりに少しだけ表情を緩める。

シャールはレイチェルの身体の上にアメルタートを置いて、その柄を握らせる。そして、その刀身に手を重ねて呟くように口を開いた。


「アメルタート、あなたの力をもっと見せて——」

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