Ep.4-28
今回ちょっと未完成気味ですが、普通に読む分には差し支えないかと……今日中に完成させますが、取り急ぎ投稿させていただきました。
「受けるがいい——我が信仰と忠義の結晶たる、この聖剣の権能を」
レイチェルの構えた聖剣に、エリオスは目を細めてその輝きの真価を見定めようとする。聖剣に集束する魔力は、先ほどまでの比ではない。
その圧倒的な魔力量を前に、エリオスは僅かに後退る。
「『――我が示すは大罪の一‥‥‥踏破するは怠惰の罪』——ッ!」
エリオスは反射的に『怠惰』の権能、異空間への退避を図ろうとする自分に気づいて舌打ちをする。自分が逃げようとしていること、それもよりによって神殿騎士の、忌々しい「神の権能」を写した聖剣を前に背を向けるなど——それに気付いたエリオスは、呪詞の続きを紡ぐことをやめて詠唱を破棄する。
瞬間的に、本能的に。これは自分の手で打ち負かしてしまいたいと思った。神の権能の写しである聖剣の力を完膚なきまでに叩きのめしてしまいたいと。
「『暴食』——変則励起、更新開始」
エリオスはそう呟くように唱えてから、改めてレイチェルを見遣る。レイチェルもまた、エリオスをまっすぐに見据えていた。
ほんの一刹那、両者の間を静寂が支配する。
その静寂を先に破ったのはレイチェルだった。レイチェルは右足を一歩、強く踏み出しながら聖剣を高く掲げた。それと同時に聖剣に集まる魔力の密度は最高潮となり、溢れ出る黄金の輝きは太陽をも凌ぐほどとなる。エリオスはその光に思わず眼を腕で覆った。
「——『晶析せよ、星の牙』!」
レイチェルはそう叫びながら剣を振り下ろした。その瞬間、振り抜かれた斬撃その延長線上の地面が割れ裂ける。そして——
「——ッ!?」
エリオスは目の前に広がる光景に絶句する。そして状況を正しく理解した。大地が裂けたのではない、牙のように、あるいは屹立する剣のように鋭く尖った鉱物の結晶たちが次々と大地を突き破って現れたのだ。目の眩むような黄金、燃えるような赤色、透き通るような白色——色とりどりの鉱石の槍が地面から幾本も現れる。それがレイチェルの斬撃の延長線上、すなわちエリオスに向けて迫ってくる。
しかも、それだけではなくその結晶の槍に触れた箇所からも、同じように結晶の槍が突き出してきて、その槍衾は際限なく広がっていく。
その勢いは凄まじく、あっという間もなくエリオスの目の前に鋭い鉱石の槍が迫る。
聖剣の権能である以上、『暴食』や『憂鬱』で対抗することは難しいだろう。
しかし、触れたものも結晶化させるその力を見るに、素手や武器で撃ち合うのも愚策だ。
「なら、こうするしかないよね」
エリオスは右手を前に差し出してにやりと笑うと、歌い上げるように詠唱する。
「極大消除魔法、限定展開——『限局:太極接触・混沌原初』」
そんな彼の詠唱とともに、彼の手元から虹色の極光が溢れ出し、彼の目の前の結晶の槍衾を飲み込んだ。
レイチェルの技のところだけ、ルビ振りが決まらなかったので未完成です。
今日の夕方くらいには決めて完成させますのでご了承ください。