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Ep.4-12

「——嗚呼、君も私から尊厳と自由を奪おうというのか……なら、君も奪われる覚悟はできているね?」


エリオスはそう告げながら、その端正な顔を嗜虐の悦びに歪める。その見開かれた瞳には、レイチェルたちがまるで獲物のように見えていたのだろう。

その表情、その言葉に騎士たちは怖気付くが、レイチェルは努めて冷静な表情でエリオスを見据える。


「待ってほしい。別に我々は貴殿を捕らえようと言うのではない。ただ同行を願っているだけだ」


「じゃあ聞くけれど、もし私がそのお願いを拒否したら? ——いやまあ、たらればの話をするまでもなく私は拒否するんだけどね」


エリオスのニヤついた口元から紡がれる言葉にレイチェルは僅かに表情を歪める。


「これは最高巫司のお言葉だ。この世において、神々の次に権威ある方のご意志だ」


「でも私にそんなものに従う義務はないよね?」


エリオスは子供っぽく首を傾げて笑って見せた。

そう、彼に神の意思だとか、最高の権威だとか、形のないモノは意味を成さない。神も、王も、勇者も、人も、正義も。全てを笑い飛ばして嘲るのが彼なのだから——

そんなエリオスの言葉に、レイチェルは酷く表情を歪めた。


「『そんなもの』か……貴殿のその言葉、我らへの最大限の侮辱であり、宣戦布告となるという理解はあるか?」


「——もちろんだとも。そのつもりで言っているからね」


「そうか。なら——」


レイチェルは腰に佩びた剣を泣く。黄金色の光を放つ刀身に、シャールは思わず息を呑む。放つ光の色こそアメルタート異なれど、アレは聖剣だ。シャールはそう確信してそれを凝視した。

エリオスも口の端を釣り上げたままに、「ほう」と短く感嘆の息を漏らす。


「ならばその罪、贖っていただく。多少痛い目に遭っても文句はあるまい?」


「その言葉そっくり返そうじゃないか」


エリオスはそう言いながら、レイチェルを見据えたままに僅かに身をかがめる。そしてシャールの耳元で囁く。


「——ちょっとばかり真面目に相手をした方が良さそうなのでね。君を守ってはいられなさそうだ。だから、後ろのロートルは君に任せた」


「え——えぇ!?」


「ほら、剣を構えて。3秒後には戦闘開始だ——猶予はないよ?」


慌てふためくシャールを他所にエリオスはわざとらしくカウントダウンをしてみせる。

3、2、1——カウントが進むにつれて、レイチェルもザロアスタもそしてシャールも各々の体勢を整えて、そのまま動かない。ほんの数秒のはずなのに、永遠とも思えるような静寂。


「——ゼロ」


静寂の帷を柔らかく切り裂いたエリオスの声。その音に弾かれるように皆が、全てが動いた。



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