Ep.4-7
8時投稿に変更する宣言をしてから、初めてちゃんと8時台に投稿できた気がしますね……
「アンタたち、誰の許しを得て私を見上げてるわけ? この駄犬風情が」
「え――ちょ……!? あ、アリアさん!?」
硬直していたシャールはアリアの啖呵に正気を取り戻して、叫んだ。さっきまで散々アヴェスト聖教を敵に回してはいけないという話をしていたはずなのに! そんなことを思いながら、シャールはアリアの肩を掴み、更にもう一撃見舞おうとしている彼女を止めようと奮闘する。
――なぜアリアはこんなにアヴェスト聖教を目の敵にしているのだろうか。じたばたと暴れるアリアを取り押さえながら、シャールはそんなことを思った。
「き、貴様ァ! 我らを誰と心得ているッ!」
赤黒い血の垂れる鼻を押さえながら、アリアに蹴り飛ばされた騎士は立ち上がり吼える。そんな彼を、シャールに取り押さえられながらにアリアは嗤う。
「あら、血に汚れてその気色悪い白の鎧も少しは見れるようになったわね」
「あ、アリアさん!? なんでそんな喧嘩を売るんですか!」
「——はははははァ! 剛気な娘もいたものだ! なァ、レイチェル卿!」
一触即発の騎士たちとアリアの空気を引き裂いたのは豪放磊落を体現するかのように豪快かつ、低く渋く、脂の乗った男声。その声に、騎士たちは居住まいを正した。
「お前たちは引け。我輩とレイチェル卿とで対応する」
「し、しかし——」
「なんだ、我輩の言葉が聞けぬのか?」
「い、いえ——」
鼻っ柱を文字通りへし折られた騎士は、その声の主の声の圧に屈して、すごすごと引き下がる。馬車にいるシャールとアリアにはその容貌を知ることはできないが、鎧ががちゃがちゃと鳴る音が近づいてくるのだけは分かった。
「我が同胞が失礼をしたな。詫びを入れたい、顔を見せてはくれんか」
そんな男の声にアリアは小さく舌打ちをしてから、そのヒールを踏み鳴らして馬車のステップを降りる。シャールも、そんな彼女の背にくっついて馬車を降りた。
二人の視線の先、そこには二人の人物が立っていた。
「おお、どんな粗野なじゃじゃ馬が出てくるかと思ったが、華奢で愛らしい少女ではないか! ハハハ、我輩の孫と同じくらいかな?」
そう言って豪笑するのは、他の騎士たちと異なり一人だけ黒い鎧に身を包んだ大柄な壮年の騎士。揺れるロマンスグレーの髪とカイゼル髭、そして頬の傷とギラついた目は食物連鎖の頂点に立つ肉食獣のような高貴な野蛮さと、豪快さを持ち合わせていた。
そして、もう一人は神殿騎士団長と思しき白金髪の女騎士。背は高いはずだが、大柄の黒騎士が横に立つと少し小さく見える。彼女は壮年の騎士の戯言など取り合うことなく、口を引き結びじっとシャールたちを見つめている。その優美かつ壮麗な姿に、まるで白い獅子のようだとシャールは思った。
「見たところ街からの買い物の帰りと見える。うむうむ、その後をつけた挙句、いきなり『降りろ』などというのは無礼の極みよなァ、レイチェル卿」
「——ふむ」
「然らば、この非礼を詫びるべくまずはこちらから名乗りたいと思うがよろしいかな?」
豪快な騎士はレイチェルと呼ばれた女騎士の顔を覗き込みながらそう問いかけた。女騎士はその問いに小さく頷いてから、口を開く。
「お嬢様方、まずは非礼を詫びよう。私の名はレイチェル・レオンハルト。アヴェスト聖教国神殿騎士団の長にして、偉大なる最高巫司様の一の従僕——そして、この度のレブランク王国崩壊の経緯を探るべく使わされた者だ」
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