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Ep.4-3

ちょっと説明パート気味ですが、ご了承ください

「彼らを敵に回すということは――世界の全てを敵に回すってことなんですから」


シャールは重々し気な声で低くそう言った。そんな彼女の言葉に、アリアはぴくりと眉を動かした。彼女の顔には挑発的な笑みが浮かんでいた。その表情の意味を測りかねて困惑の表情を浮かべるシャールに対して、アリアはくつくつと笑いながら目を細める。


「興味深いわね――続けて頂戴な」


「え……あ、はい」


わずかに躊躇いながらも、シャールは自分の知る限りのアヴェスト聖教会についての知識を語り始めた。


「まず、アヴェスト聖教については知ってますよね?」


エリオスと一緒に森の中で引きこもっていて、社会から隔絶した生活を送っているアリアのことだから、もしかしたらこんな社会常識的な事さえも知らないのではないかと思い、シャールはおずおずと問いかける。

そんなシャールにアリアは露骨に不機嫌そうな表情を見せる。


「馬鹿にしないで。最高神サマ——スペント・マユを中心とした神話体系の下展開されている……曰く世界最大にして最強の宗教」


「そうです。そしてその教義を広め、信徒たちを統制する教団がアヴェスト聖教会であり、その総本山が大陸の北部にあるアヴェスト聖教国」


「そこまでは知ってる——確かにその信徒は世界中に広まってる。だからこその『最大』で『最強』、なんでしょ? 数こそが力だなんて、野蛮極まりないわね」


アリアは楽しそうに、皮肉っぽい笑みを浮かべた。しかし、シャールはそんなアリアの言葉にかぶりを振って否定する。


「それはあくまでアヴェスト聖教が『最大』の宗教であることの証左に過ぎません——彼らが『最強の宗教』と呼ばれる理由は別にあります」


「——ふぅん」


アリアは不機嫌そうにその表情から熱を消して、短く問う。シャールはそんな彼女に僅かに苦笑を漏らしながらも続ける。


「理由は二つ。一つは軍事力をはじめとするその強大な組織力」


アヴェスト聖教国には二つの組織がある。

一つは最高神の神託を授かる巫女である、最高巫司を頂点として祭儀神託官。

アヴェスト聖教会の権威の源泉たる組織だ。その配下には、世界各地に散らばる管区巫司や神殿聖騎士団、神託記録局などがある。

もう一つの組織は教義聖典官。

教会という宗教組織における政治的な部分を取り仕切り、教義や戒律の整備を行う組織だ。権威を生み出す祭儀神託官に対して、教義聖典官は権力を行使する組織だと言える。

この教義聖典官は複数の局によって構成される組織であり、その筆頭であり教義の最高解釈権者として「教皇」と呼ばれるのが統制局長である。

統制局長の権力は絶大で、その指図で国が一つ滅びると言われるほどの軍隊が世界中から参集するという。また、統制局長には各国の王族に対してすら異端認定権や破門宣言権などが与えられており、どの国も——かつてのレブランク王国以外は——その顔色を常に窺っているのだという。


「ふぅん。つまり、神の意思を直接代弁する最高巫司が生み出す権威と、緻密に組み上げられた教義聖典官の権力構造——この二つがアヴェスト聖教の組織力の源泉ってわけね。それで、もう一つの理由は?」


アリアの問いに、シャールは自分の手を腰に運び、提げた剣の鞘を指でなぞりながら告げる。


「4本の聖剣とその使い手の一人——それが『最強の宗教』の本当の意味です」

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