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Intld.Ⅱ-xxiv

「明日から夜は8時に投稿する」と言いましたが、アレは嘘です。


本当にすみませんでした。遅れて申し訳ないです……申し訳ないついでに、後書きにももう一つお詫びがございます。

リリスを不機嫌そうな表情で見送ってから数刻後、エリオスは地下の実験室にいた。

部屋の中心には椅子に縛り付けられた、アリキーノの姿――だが、きっとシャールがその姿を見たとしても彼だと気づくことは無いだろう。

四肢がもがれただけではない、身体のいたる部分が鞭やナイフ、エリオスの権能で削がれているかと思えば、薬の投与によって体組織が異常に膨張したせいで膨れ上がったところもある。鼻は削ぎ落とされ、歯は全て抜かれ、舌も切られて、髪の毛も薬品で頭皮ごと焼き溶かされている。

ヒトであることすら疑わしいアリキーノの姿。閉じられた唇から漏れ出る、ひゅーひゅーという乾いた呼吸音だけが辛うじて彼がモノではなく生き物であることを証明していた。

そんな惨憺たる姿に成り果てたアリキーノだが、そんな彼にも三つだけ原型をとどめている部位がある。一つは眼球、一つは耳、一つは喉。

無残になった姿の中に残された人だった頃の名残——そんな風に考えると、不自然なまでに原型をとどめたその部位はいっとう不気味に感じるものだ。

しかし、そんな複雑な感情などは持ち合わせていないと言わんばかりに、エリオスは満面の笑みを浮かべて、彼の前に椅子を置いて座った。

アリキーノの瞳はもはやエリオスも、現実世界そのものすら見ていないようにどこか遠く虚だった。

そう在れることはある意味で幸せなのだろう。激痛や屈辱、不快感。それらを自分のものと思わずにいられるから。しかし、エリオスはそれを許さない——アリキーノを現実に引き戻すべく言葉を紡ぐ。


「やあ、アリキーノ卿。今日もご機嫌麗しゅう……なぁんてね。今日は面白いものを見せてあげようと思って来てあげたんだ」


友人と語らうかのようにそう言ったエリオスに、アリキーノは反応すら示さない。

そんな彼の態度にエリオスはつまらなさそうな顔をして見せるが、すぐに笑顔を取り戻して立ち上がるとアリキーノの首につけられた犬のような首輪を引っ掴み、彼を引きずって実験室を出た。


「さ、お散歩の時間だよ。或いは、救いのない苦難の道(ヴィア・ドロローサ)かな?」


反応などするはずのないアリキーノを引きずりながら、エリオスは冗談まじりにそう言った。



§ § §



それから一刻ほど経った頃、エリオスは城の上に立っていた。かつて栄華を極めたレブランクの首都マルボルジェの中心にして象徴たる王城。

その一番高い尖塔のバルコニーから、エリオスは王都の様子を見渡していた。

眼下の広場には腐り始めたいくつもの死体がぶら下げられている——かつてこの国で王侯貴族の地位にあった者、そしてその親族たちだ。歳の頃は90を超えるような老紳士から、幼い少年、妙齢の姫君まで、まさしく老若男女の区別なく縄を首にかけられて吊るされていた。全て、怒りに狂った民衆たちの手によるものだった。

その豪奢な服を泥と血に汚され、ズタズタに引き裂かれた彼らの骸は広場をぐるりと取り囲むように並べ立てられている。まるで何かの生贄の儀式のようだった。


「あの干物の中に君の妻子もいるかもねぇ」


エリオスはそう言いながら、銀色のロケットを右手でいじくり回していた。不意にロケットが開くと、中からはアリキーノと美しい女性、そして可愛らしい幼い娘の三人の肖像画が現れた。かつてアリキーノが身につけていたロケットを片手に、エリオスは目を細めて、死体たちの環に視線を走らせた。そして、一箇所で目を止めて、僅かに口の端を尖らせた。


「さて、ご覧よアリキーノ卿。これが君の口が招いた喜劇のフィナーレさ」


そう言ってエリオスは高く高く手足がなくなって軽くなったアリキーノを持ち上げる。

彼の虚だった目に映ったのは黒煙と断末魔と狂騒が立ち登る王都の変わり果てた姿だった。

Interlude.Ⅱは今回で終わりだと言いましたね——アレは嘘です


終わりませんでした。本当に申し訳ないです……

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