表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
148/638

Intld.Ⅱ-xxiii

「――くく、あははははは! なぁんだ、貴女めちゃくちゃ面白いじゃない。つまんない女だと思ってたけど……これは評価を改めないと」


エリオスの傍らで爆笑しながら、アリアはそういってリリスに視線を注いだ。先ほどまでは興味なさそうな表情で、自分は空気であるかのようにふるまっていたのに、今は心底愉快そうな表情だ。そんな彼女にをエリオスはじろりと睨んで唇を尖らせる。流石のエリオスにとっても、リリスがそんなことを自分に堂々と言ってくるなんていうのは予想外だったらしい。


「――君、どっちの味方なのさ……」


エリオスはそう言いながら大きくため息を吐くと、アリアはわざとらしく肩を竦めて見せた。そんな彼女の態度に、エリオスは諦めたように更に深い深いため息を吐いてから、リリスとシャールに視線を投げる。


「まったく……いつぞや君が投げてよこした台詞が思い出されるね、シャール」


「――そう、ですね」


シャールはわずかに戸惑いながらも、エリオスの言葉を首肯する。エリオスは、一度呆気に取られてしまったのが、きまり悪かったのか椅子のひじ掛けをその細い指で神経質そうにとんとんと叩きながら、不機嫌そうに問いかける。


「――宿の貸主にずいぶんな非礼じゃないかな。魔術師さん」


「あら、貴方は私から大切なモノをたくさん奪ったのです。それぐらいの非礼、受けても文句はいえないのでは? ――奪うからには、何でしたっけ?」


ニマニマと笑いながらそう問い返すリリスに、エリオスの指がひじ掛けを叩くのをやめた。怒らせたんじゃないか――そんな不安がシャールの中に生まれる。

しかし、エリオスは何か言おうと口を開いてちらと隣に立つアリアを見た。彼女は心底愉し気な表情で彼を見下ろしていた。エリオスはそんな彼女の姿に、自分の身の内の全てを吐き出すんじゃないかというくらい深く深く深くため息を吐いた。


「あーもー! 君にそんな顔されたら、ここで彼女を殺してしまえないじゃないか!」


「あら、殺したいなら殺せばいいじゃない。止めはしないわよ?」


「馬鹿言わないでよ。そんな無粋なことできるわけがない――それに、私は一回シャールの()()まで面白がって見逃しちゃったんだ。同質の暴言、ここで見咎めたらそれも筋が通らない」


シャールは少し意外に思った。エリオスという悪役の辞書にも「筋を通す」なんていう殊勝な慣用句が載っていたのだということに。

もっとも、彼の通す筋は自分たちが知っているモノとは違うのだろう。ただ、自分が納得できるか否かという閉鎖的で自己完結した筋。それが彼の通すべき筋で、アリア以外の他人のためには通す筋などはきっと持ち合わせてなどはいないのだろう。

それでも、そんな彼の中にある自らを縛る規律のようなものは、ここに来て初めて見るモノだった――リリスがそれを引き出してくれた。

エリオスは腹立たしそうに、不機嫌気味に唇を尖らせながらリリスを見下ろす。


「ああもう! もう行くんだろう、早く行っちゃってよ」


「ふふ、弄んでやるつもりが逆に遊ばれたわね。エリオス」


「うるさいよアリア!」


調子を狂わされてアリアを睨むエリオス。そんな彼に、リリスは恭しく頭を下げる。そして言った。


「――それではこれにて失礼いたしますわ。我が怨敵、エリオス・カルヴェリウス卿。また、お会いしましょう」

インタールードはあと1話、次のエピソードへの導入で終わりになります(予定)。どうぞお付き合いください

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ