Intld.Ⅱ-xv
FGO新章が配信されたので、土日にストックが書けなさそうな予感がしています。
「ごめんなさい――一緒には、行けません。私は……ここに残ります」
はっきりと告げられたその言葉に、リリスは愕然とした表情を浮かべる。足も手も震えが止まらない。シャールの指の先でその額を軽く突いたならたちまちバラバラになって崩れ落ちてしまいそうだ。それでも、シャールはそんな彼女に手を差し伸べることなく彼女をまっすぐ見つめていた。
「ど、どうして……どうしてですの……こんなところに残って、貴女は――いったい何をするというの、どう生きるというの」
リリスは自らの紡ぐ言葉にかかる重力に押しつぶされたかのように、ゆっくりと膝から崩れ落ちていく。縋るように伸ばした手は空を切った。そんな彼女を、シャールは静かに見下ろす。
「どうして……ねえ、どうしてですの……お願い、お願いです……」
「リリス様――」
「お願いですわ……私を選んで……私を、一人にしないで……もう、私……」
うわ言のようにつぶやくリリス。その目は熱く、視線はまっすぐとシャールを見つめているのに、どこかその瞳には別のナニカが映っているような――そんな気がした。シャールはゆるゆると首を横に振りながら、ひざを折り、リリスと視線を合わせる。
そして、その頬に両手を当てて彼女をじっと見つめた。瞳の向こう、彼女の内側さえも見通すかのように。そして、小さく、寂しそうに笑う。
「リリス様――私はシャールです。ただの村娘のシャールです」
「な、何を――言ってますの……?」
「――私はルカント様じゃないんです」
シャールは静かにそう告げる。そんな彼女の言葉に、リリスは困惑の顔を浮かべる。
「そんな、当たり前のこと……貴女は、シャール……そして、ルカント……様は……もう……ぁ、あぁ……!」
言葉を——当たり前の事実を、一音また一音と自分の口で紡いでいくにつれて、リリスの瞳が潤み、次第に目の端から涙が溢れ出した。
「あれ……え? ど、どうして……わ、私……なんで泣いて……こんな、ことで……」
止めどない涙を拭いながら、泣きじゃくるリリスをシャールは優しげな瞳で見つめていた。
王城の地下室でリリスを助けた時から、彼女の振る舞いにはどこか違和感を感じていた。
最初は二度にわたって命をシャールに救われたことで、彼女からの心象が良くなったのかもしれない——そんな程度にしか考えていなかった。
しかし、ここ数日彼女とエリオスの館で過ごす中で、違和感を感じるようになっていた。かつてとは比べ物にならないほどに丁寧な振る舞い、熱っぽい視線、甘い声。そしてシャールに対する異様なまでの——依存ともいえるほどの信頼の言葉。
そんな中で、ある時からシャールは思ってしまった。本当は彼女は自分を見ていないのではないか——ルカントの影をシャールに重ねているのではないか、と。
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作者のモチベが爆上がりしますので。