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大罪踏破のピカレスク~人間に絶望したので、女神から授かった能力で誰よりも悪役らしく生きていきます  作者: 鎖比羅千里
Episode.1 The fate of people who Enter into the palace of Villain...
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Ep.1-12

エリオスが動き出す。それも、ミリアの方に向かって。そしてミリアの横を通り過ぎるように悠然とした笑みを浮かべながら半身でミリアの一撃を躱す。

その瞬間、ミリアは自分の身体が停止しているような錯覚を覚える。だが事実は違う、彼女の一撃は間違いなく高速で振りぬかれ、叩き付けられた。ただ、エリオスがそれを超える速度で動きそれを躱したのだ。


「――ッ!?」


「マジかよ――!?」


ミリアもアグナッツォも驚愕に表情を歪める。悠然とローブを揺らしながら振り返り、空振ってその槍の穂先を大理石の床にたたきつけたミリアに笑みかける。


「おいおい、あまり床を壊さないでおくれよ? それとも先ほどの『殺す』というのは私を経済的に殺すという意味だった?」


「――ッ!」


ミリアはすぐさま体勢を整えて、槍を突き、斬り込み、振り回す。それをエリオスは踊るように、歩きながらそれを躱して見せる。ミリアは自分の敏捷には相当の自信を持っていた。だが、目の前の存在が――しかも武術家ですらない魔術師が、自身の速度を上回り回避しているという事実に焦燥感がたまっていく。


「俺もいるぞッ!!」


エリオスの後方からいつの間にかカットラスを取り戻したアグナッツォが斬りかかる。ミリアの猛攻とその合間を縫うようなアグナッツォの追撃。しかしエリオスはその全てを涼しげな顔で避けて見せる。これまでの旅路で経験したことの無い事態に二人の表情には焦燥感がありありと滲む。

だが、ここまでも想定内。


「今ですわ!!」


響く声――剣呑とした舞踏を演じる三人の後方で杖を構えたリリスが叫ぶ。

その声に反射的に振り返ったエリオスのローブの裾を、アグナッツォは傍らに転がっていたルカントの聖剣で貫き、大理石の床もろとも突き刺してその場に縫い留める。


「――む」


次の瞬間、ミリアとアグナッツォはその場から飛び退き、エリオスから距離をとる。それを確認すると同時にリリスは杖を天に掲げて叫ぶ。


「――『絶獄の檻、今誅を下せ(ケイジュ・デモ―ト)』ッ!!」


その瞬間、エリオスを中心に巨大な魔法陣が展開する。紫紺の光を帯びた円陣はあっという間に彼を囲む。エリオスは自身を縫い留める聖剣に手を伸ばすが、先ほどと同様に、否それ位以上に強い閃光で弾かれる。エリオスの足元を奔る魔法陣が紫電を帯びる。

エリオスは「ほう」と息をつきながらリリスと、その傍らにて自身を睨むアグナッツォとミリアを見遣る。その目は感嘆の情に満ちていた。そんな彼を突き放すように、リリスは言い放つ。


「――悔いて逝きなさい、下郎」


リリスの言葉が広間に融けた瞬間、天を堕とすような轟音と共に、魔法陣の中のエリオスを押しつぶし消し飛ばすような、紫電の柱が降り注いだ。

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