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Intld.Ⅱ-xiii

昨日リリースの二ノ国やってたら、執筆のストックが貯まらなくて泣いている鎖比羅です。

リリスが目覚めてから、四日目の朝。リリスの部屋でシャールは彼女と一緒に朝食をとっていた。白いパンと、ホットミルク。スクランブルエッグに焼いたベーコンと、ボイルドビーンズ。厨房と食材を拝借して、シャールが作ったものだった。


普段であれば、この屋敷での食事の用意はエリオスとアリアとシャールによる当番制だが、ここ数日、リリスの食事はシャールが作っている。以前から打って変わって随分としおらしくなってしまったリリスに庇護欲が湧いた――というのもあながち間違いではないかもしれないが、一番の理由は、エリオスやアリアの手による料理を、リリスに出すというのはあまりにも危険に思えたからだ。エリオスは、リリスを殺す気はないと言っていたが、それを鵜呑みにして信じるのはあまりにも能天気というものだろう。たとえ、彼があのとき本心から言っていたとしても、途中で不意に心変わりするかもしれない――なにせ彼は「悪役(ヴィラン)」なのだから。


仮令たとえそれが杞憂だったとしても、少なくともリリスの心の平穏にはつながると思ってはいた。

尤も、最初は田舎娘にすぎない自分の料理が、リリスの口に合うか不安ではあった。しかし、ひと月も監獄生活を経たリリスにとっては、それくらい純朴な味わいの方が無理が無いのだろう。シャールの料理を食べて、「おいしい」と笑ってくれた。シャールにとってはそれがとても嬉しかった。


「ねえ、シャール? 食事が終わったら、皆のお墓を直しに行きませんか?」


フォークとナイフを動かして、かちゃかちゃと音を鳴らしながら、リリスはふとそう言った。その言葉に、シャールは顔を上げる。


「え――リリス様、お身体の方は……もう?」


「ええ。貴女の看護のお陰でもうかなり——魔力もだいぶ戻って来ましたわ」


そう言ってリリスはにっこりと笑ってみせる。見れば、その肌や髪、瞳にもかつてのような艶と正気が満ち溢れているようだった。


「それは——良かったです」


彼女の言葉にシャールは嬉しさと、それとどこか寂しさを感じながら、微笑んでみせた。



§ § §



食後、皿洗いを終えたシャールはリリスとともに館の外に出た。

杖をつきながらではあったが、その足取りは目覚めたばかりのときよりも遥かにしっかりとしていた。

荒れ果てた3人の墓の前に立つとリリスはシャールに少し大きめの石をたくさん集めてくるように言った。墓の土台に使うのだという。

シャールがそれを集めている間、リリスはいくつかの岩を見繕い、魔術でそれを切り出し、整形と研磨を行っていた。

シャールが石を集め終わった頃には、立派なプレート状の墓石が出来上がっていた。


「本来なら、もっと立派な石材で名工の手によるものがふさわしいのでしょうけど——」


リリスはそう言っていたが、シャールからすればリリスのそれは名工のそれに勝るとも劣らないモノであるように見えた。

リリスが碑文を刻んでいる間に、シャールは集めた石を並べて、土台を作っていた。

そんな時、ふいにリリスが口を開いた。


「ねぇ、シャール。一つ、提案があるのですけど……」


「え——?」


振り返ったシャールは言葉を失う。相対するリリスが、あまりにも真っ直ぐで、あまりにも熱い視線を自分に向けていたから。

そんなシャールに、リリスは言葉を続ける。


「私と一緒に、ここから逃げてくれる気はありませんか——」

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