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Intld.Ⅱ-xii

投稿時間だいぶ遅れて申し訳ありませんでした。

呻き声をあげて、椅子の上でのたうつアリキーノを背に、エリオスは元いたテーブルへと戻る。テーブルではアリアがココアをちびちびと飲みながら、こちらを見つめていた。


「うるさいから舌を切って喉でも焼いてあげようかしら、アレ」


躊躇なく言い放たれるアリアのえげつない言葉。エリオスはそんな彼女に苦笑を漏らしながらも、首を横に振る。


「一時の煩わしさのために、後の悦楽を捨てる気にはなれないよ——終わりの瞬間に、きっと彼は最高の声で鳴いてくれるはずさ」


そう言ってエリオスは席についた。

そして、机の隅に置いてあった革の袋の端を掴んだ。ごとりという音がして、袋の中身が揺れ動く。エリオスは、傍らに並べられた医療用メスのようなナイフを一本取って革の袋の上を奔らせる。鋭く鮮やかな切れ味の白刃が通った後、すっぱりと斬られた革袋は大きな口を開ける。

開いた口の中から、緑色の光を放つ宝玉が現れた。

それを見た瞬間、アリアはその表情を強張らせる。


「これ――は?」


「――レブランク王国の王城。その中にある隠し扉の中から見つけ出した。苦労したんだよ? こうやって袋に入れるのだって楽じゃなかったんだから」


そう言って、エリオスは誇らしげに微笑んで見せる。

対するアリアは、エリオスと机の上の宝玉を交互に見ながら口元に手を当てる。それは、そうしなければ飛び出しそうな無思慮な言葉を、なんとか押さえつけようとしているようにも見えた。

そして、アリアは押し殺すような声で、短く問う。


「本当に……これが?」


湧き上がる期待と、張り裂けそうな不安が入り混じったような、幽かで震えるような声だった。エリオスはそんな彼女の目の前で、宝玉に左手を伸ばす。

指が宝玉に触れる直前、一瞬その指は躊躇いを見せたが、エリオスは奥歯を噛み締めながら手を伸ばした。

その瞬間、バチンと弾けるような音が地下実験室に響いた。


「く……うぅ……!」


それと同時に宝玉に触れたはずのエリオスの左手は痙攣と共に弾かれていた。


「エリオス——!?」


アリアは叫ぶ。それと同時に、エリオスはその場に崩れ落ち、痺れる腕を庇いながら、ちらとアリアを見て口元だけ笑顔を作って見せた。


「これで証明になるだろう? 聖剣と同じ、いやそれ以上の抵抗力で私を弾いた。紛うことなき()()()だ」


そんなエリオスに呆れたような、どこか怒りに似た感情の混じった顔を向ける。


「馬鹿じゃないの……アンタ」


「あれ、もしかして心配してくれてる?」


「うっさい死ね」


「……シンプルな悪口っていっそ清々しいものだね」


そう言いながら、エリオスはまだ痙攣したままの身体を引きずって椅子に収まる。机の上のポットに伸ばした手は震えていて、見かねたアリアはポットを彼の目の前から取り上げて、彼のマグカップの中にどろりとしたココアを注ぐ。

エリオスはそんな彼女の振る舞いに、一瞬驚きを見せたがすぐに嬉しそうにほほ笑んで、両手でマグカップをそっと包み込んで口元に運んだ。

そして、熱いココアを飲み下すと、にっと笑って見せる。


「ようやく、私と君との契約が一歩進んだね」

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