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Intld.Ⅱ-ⅳ

ストック不足が深刻で自転車操業気味なのを、どうにかしたい今日この頃

白磁に青い華の装飾の施されたティーカップをシャールは口元に運ぶ。カップの中の飴色の紅茶は熱く、強い香りがして不思議な味がした。話し続けて乾いたのどに、紅茶は染み渡るようだった。そして、小さく息を吐いてからベッドのリリスに頭を下げる。


「私、こういうこと話し慣れてなくて――その、お聞き苦しくて申し訳ありません」


シャールは、あの日リリスを逃がしてから今日にいたるまでの自分が過ごしてきた日々、自分の今置かれている立場、そしてこのエリオスの屋敷にいる理由について、つたないながらにリリスに語って聞かせていた。

感情があふれ出したり、相応しい言葉が出てこなかったり、何度も詰まりながらの回顧譚だったが、リリスはソレに口を挟むことなく、ただ頷き、柔らかな視線を送りながら聞いてくれた。

シャールが話し終えると、リリスはほうと息を吐いた。それは、まるで長い一冊の本を読み終わったかのようだった。

リリスは、ジャムとバターをたっぷりと塗ったスコーンを両手で口に運び、小さく人齧りすると首を横に振った。


「そんなことありませんわ。それよりも、やはり驚きですわね」


「え――?」


リリスの言葉にシャールは首を傾げた。

そういえば、さっきも彼女は「驚いた」と言っていた。一体あれはどういう意味だったのだろう。それを問う前に、リリスは語りだした。


「エリオス・カルヴェリウス――彼という人間が一体どこへと向かおうとしているのか……何を希求し、何を至上価値としているのか……なんというか、ブレて見えますわね」


「ブレ……?」


「まあ、彼の内面がどうであれ、彼が倒すべき敵であることには変わりありませんし、どうでもいいことと言われたら、その通りなんですけれどね」


そう言ってリリスは勝手に納得したようにして頷きながら、紅茶を口に含んで飲み下す。

シャールは、リリスの言葉の意味が分かるような、何処か分からないような所在なさげな気分で、力なさげに頷いた。そんなシャールの表情に苦笑を漏らしながら再びスコーンにかぶりついた。さっきよりも少し大きめに。


「もっとも、一番の不思議はエリオス・カルヴェリウスがこうして私をここに置いていること、そしてこんな立派な部屋を宛がってくれたこと、ですわね」


リリスはスコーンをゆっくりと味わうように咀嚼して、首をかしげる。

確かにそれは、シャールにとっても不思議なことであった。自分を敵視する人間を二人も屋敷に置いておくというのは正気とは思えないし、それをもてなすというのも訳が分からない。


「――そんな心底不思議、みたいに思われるなんて心外だなあ」


不意に響いた声。シャールとリリスは弾かれたように、声のする方を振り返った。

リリスとシャールの鋭い視線に射抜かれながら、()は肩を竦めて笑って見せる。


「いや、女性(レディ)ふたりの和気藹々の中に水を差すのは野暮だと思ったんだがね――悪いが失礼するよ」


そう言ってエリオスは目を細めた。

今夜ゆっくりとストックを書き溜めて月曜以降に備えます……

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