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Intld.Ⅱ-iii

またもや投稿時間がめちゃくちゃ遅れました……申し訳ありません。

「——少し、驚きましたわ」


取り乱すでも、怒るでもなく。軽蔑するでも、見放すでもなく。ただただ静かな声でリリスはそう言った。

そんな彼女の反応に、シャールは驚く。


「え——」


「何ですの? その呆けた顔は?」


唇を尖らせてリリスは少し不満げな視線をシャールに投げかける。その言葉に正体を取り戻したシャールは、恐る恐る問い返す。


「——怒らないん、ですか?」


「まあ、思うところがないわけではありませんわ。困惑もしているし、少し不満にも思ってはいます。ルカント様やアグナ、ミリアのことを思い出すとやっぱり憤りもある——どうしてって」


目を伏せるシャールに、滔々とリリスは語る。その声は本当に静かで、穏やかで。そんな彼女の声の裏にどんな想いが隠れているのかを考えるだけでシャールは恐ろしくなる。

膝の上で拳を握りしめ、肩を震わせるシャール。そんな彼女に、リリスは不意にその相好を崩す。そして、そのやつれ震える手を、項垂れたシャールの頭に優しく置いた。


「——でも、今なら分かりますから。貴女にも何か考えが、理由があるのだろう、ということは」


「——!」


許されないと思っていた。言い訳なんて拒絶されると思っていた。

少なくとも、かつてのリリスはシャールの言葉をまともに取り合うようなことは無かったし、そもそも彼女のことを有り体に言えばリリスは軽視していた。そんな彼女が——

混乱するシャールに、リリスは子供っぽく頬を膨らませる。


「貴女、私のことなんだと思ってますの? 私はこう見えても賢者とまで呼ばれた女ですのよ? 身の内の感情がどうであれ、それを抑えて怜悧な思考を保ち、過ちがあればこれを恥を忍んでも正す。あたりまえのことですわ」


「——でも、私……だって……」


「私は貴女は何か事情があってエリオス・カルヴェリウスの下にいると判断した。それは、今日までの私が知っている貴女の姿を見てそう思った――だから、ね」


リリスはわずかにほほ笑んでシャールの頭をなでた。優しく柔らかい手だった。

その柔らかな手つきに、シャールは目を閉じる。不思議な感情が胸の裡を満たしていた。

そんなシャールにリリスは笑いかけた。


「貴女のこれまでを、私に教えて頂戴。貴女がどうやってエリオス・カルヴェリウスの手から生き延びたのか、どうして貴女は彼の下にいるのか。どうやって、どうして私を助けに来たのか。聞きたいことはたくさんありますわ――」


そこまで言ったとたん、くぅーっという軽くて情けの無い音が部屋の中に二つ響いた。シャールとリリスはその音に頬を真っ赤に染めたかと思うと、次の瞬間に顔を見合わせて笑った。


「たくさん、聞きたいことがあるのなら――何か食べながらにしましょうか。スコーンがあったはずです。あと、甘いジャムも。紅茶と一緒に持ってきますね。一緒に、食べましょう」


そう言ってシャールは立ち上がって、踵を返すと部屋の外へと駆けて行く。そんな彼女の背中を見送りながら、リリスは穏やかな声でつぶやくように言った。


「ええ、そうですわね。ゆっくりと、たくさん――たくさん話しましょう。言葉を交わせることの有難さを、私も思い知りましたから……」


その瞳には少しだけ寂しげな色が浮かんでいた。


三週間のおあずけ期間を経て、劇場版FGOキャメロット後編を見てきました。

作画もかなり良かったし、声優さんたちの演技も最高でしたね……

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