表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
121/638

Ep.3-76

残業してたら投稿時間大幅にずれました

申し訳ありません……

シャールが地下牢に向かっていたころ、エリオスもまた動き出していた。

騒然とする城の中、エリオスはまるで花畑を散歩するかのような陽気さで鼻歌交じりに血と炎と絶叫にまみれた廊下を歩いていた。

時々通りがかった部屋の扉をぱたんと開けては、直ぐに閉め、また隣の扉をぱたんと開けては閉める。そんなことを繰り返しながら城の中を闊歩していたエリオスだったが、ある扉を開けた瞬間、くすりと笑って口笛を吹く。


「――ビンゴぉ」


にんまりとした笑みを浮かべたエリオスの視線の先、そこには豪奢な天蓋付きのベッドがあり、そこには誰かが横たわっているようだった。エリオスは、静かに後ろ手で扉を閉じながらその部屋の中に入り込む。締め切られたカーテンのせいで真っ暗な部屋の中を照らすのは、枕もとの黄金の燭台に据えられた三本の蝋燭の幽かな炎だけ。

そんな中をエリオスはゆっくりと歩いてベッドへと近づいていく。そして、そこに横たわった人物の顔を見て、口の端を吊り上げる。


「また会ったね。マラカルド王」


エリオスはベッドに横たわった人影――マラカルド三世の遺骸に向かってそう言った。

ベッドの上の老人の遺骸は青白く、ちろちろと燃える蝋燭の光のせいかその皺が陰影深く浮かび上がり、ひどく老いて見えた。

その首にはぐるぐると包帯が巻かれており、黒っぽい血の染みがうっすら滲んでいた。

そんな遺骸の横にぽすんと腰掛けて、エリオスは冷たい笑みを浮かべてその閉じられた瞼を指でなぞった。


「貴方の作り上げたモノは全部壊れていく――どうだい、悔しいかい? それとも、もう満足しちゃったのかな?」


応えるはずのない相手を、エリオスは微笑を湛えながら嘲る。

暗く静謐に保たれたこの部屋の中では、外の騒ぎがどこか遠くの出来事のように思えた。そんな中、エリオスはぽつりとつぶやく。


「――ホントは、貴方が悔しがる姿を見たかったんだけどなあ……まあ、あのバカ息子もいい味出してたけどさ」


そんなことを呟きながら、エリオスはマラカルド三世の死体を眺めつつ、あの広場で嬲り殺された哀れで愚かな男を思い出していた。

少しの間、目を閉じていたエリオスは不意に立ち上がりマラカルド三世の死体を見下ろす。


「さて、私は一つ探し物があってね。悪いが、貴方の頭の中身――見せてもらうよ」


そう言ってエリオスは右手を前に突き出した。


「『刮目せよ(Gaze)眼の眩むほど(Daze)賛美せよ(Praise)燃ゆる罪業を(Braze)眼を背けても(Despise)忘れず刻め(Memorize)――我が示すは(Realize)大罪の一(your sins)踏破するは(Realize my)暴食の罪(Gluttony)』――私の罪は(Deprive)全てを屠る(your ways)


突き出された右手のひらから黒い風が現れる。黒い風は、ベッドの天蓋と蝋燭の火を少し揺らしてから消え去った。

エリオスはマラカルド三世の遺骸の消えたベッドを前に数瞬目を閉じていた。そして、ゆっくりと目を開けて、満足げににんまりと笑う。


「ごちそうさまでした――これで私も、一つ歩みを進めることが出来る」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ