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Ep.3-58

めちゃくちゃ投稿遅れました。申し訳ないです。

「あの人と違って、貴方にはきっと覚悟が足りないんです――国のために、(キング)という駒として在るという覚悟が」


「——ッ!?」


シャールの言い放った言葉に、ファレロはびくりと全身を震わせた。


「——ち、父上……?」


震える唇から溢れ出る、誰の耳にも届かないほど微かな声。ファレロは自分の膝が、握った拳が、がくがくと震えているのを感じた。

どうしてだ——どうして目の前の、数時間前に会ったばかりの、平民の小娘が父と同じことを自分に言うのだ。その瞬間、ぐらりとファレロはその場に崩れ落ちる。

そんなファレロをシャールは冷ややかな目で見ていた。父王とは全く違う、貧弱で華奢なだけの小娘のはずなのに、ファレロはまるで父に睨みつけられた時のような、内臓を素手で弄られるような恐怖を感じた。

ファレロは膝をついたまま、目の前に立つシャールを見上げる。

そんなファレロを見下ろして、シャールは冷たい声で続ける。


「——人にはきっとみんなそれぞれ違った役割がある。それは、きっと盤上遊戯(ボードゲーム)の駒のようなものなのかもしれない。だが、遊戯と違ってこの世界にプレイヤーはいない。仮令たとえ王であっても、プレイヤーではなく(キング)という名の駒の一つに過ぎないんだ」


それは、かつてルカントが寝ずの番を共にしていたミリアに語って聞かせていた言葉だった。「何故勇者としての役割を拒まなかったのか」「王国から遠ざけたい第一王子の策謀なのは明らかなのに」と。宮廷の後ろ暗い政治に近いところにいたミリアだからこその問いかけだった。彼女からすれば、ルカントが勇者として国の外に出されてしまったのは不満だったし、それ以上に不安だったのだろう。

しかし、ルカントはそれを滅多に見せない笑顔と共に否定した。


仮令たとえ経緯がどうであれ、これが王子として、国のために俺という駒が果たすべき役割だ——』


そんな言葉と共に、ルカントは燃える焚き火の音と同化してしまいそうな穏やかな声でミリアに語って聞かせていた。

偶然耳にした彼の言葉は、あの時のシャールにとってはよく分からない難しいコトに思えた。自分のような平民の荷物持ちが考える必要のないコトだと。

しかし、今この瞬間ふいにシャールの脳裏に彼のこの言葉が過ったのはきっと偶然では無いのだと思う。

シャールはルカントの言葉を誦じ終わると、じっとファレロを見下ろし、そして口を開く。


「私たち平民を『家畜』と呼んだ貴方は、きっと私たちを駒だと考え、自分たちをプレイヤーだと思っているんでしょうね。でも、貴方たちはプレイヤーじゃない。盤面の全てを見通すことも、駒を完全に統制することもできない。結局は、貴方たちもこの世界という盤面のマス目に縛られる駒に過ぎない——!」


「黙れ——」


ファレロは低く唸るように零す。しかしシャールは止まない、黙らない。何のために——そんな目的論的な考えなど彼女は持ち合わせていなかった。もはや彼女は身の裡にこんこんと湧き出る思いを、言葉を吐き出して叩きつけたいという衝動のみに突き動かされていた。


「——そんな当たり前の事実と、それを自覚した上での覚悟。それを持ち合わせない貴方たちはきっと根本的に『人の上に立つ』ということを理解していない! 貴方たちにそんな資格あるわけない!」


「黙れ黙れ黙れェ!」


シャールが胸の裡のありったけを絞り切るのと同時に、ファレロが叫んだ。

激情に駆られた顔で、唾を飛ばしながら。ファレロは一瞬拳を振り上げかけたが、エリオスがちらと視線を向けたことでその拳がシャールに振り下ろされることはなかった。

そんな中で、ふいにファレロはにやりと笑う。その表情がとても厭らしくて、シャールはびくりと震えた。そんな彼女に嗜虐的な目を向けながらファレロは笑う。


「はは、お前の言葉には一片の理屈はある——屁理屈の類ではあるが。だがな、お前は根本的なところで勘違いをしているぞ」



そう言ってファレロをぎろりとエリオスの方へと視線を向ける。彼はまだ、光の障壁を維持するだけで極大消除魔術の展開には至っていない。ただ、面白そうにこちらを見ている。

そんな彼を満足そうに眺めてから、唇の端を釣り上げてファレロはシャールに言い放つ。


「俺が奴らを『家畜』と言ったのはな。奴らの生殺与奪の件は、全て俺が握っているからだよ——」


そう言ってファレロは高く高く嗤った。

言い訳になりますが、昨日(日曜日)にお仕事があり、大変ヘビーな丸一日の勤務になりまして、昨日の夜から朝にかけて死んでおり、ストック切らしてしまいました……本当に申し訳ありません……

今日はこの後書き溜め等してストックを確保するつもりですが、今後もこのような場合が発生して、投稿時間がずれ込むこともありますので、ブックマーク等しておいていただけますと、そう言った状況を何となく察していただけるかなと思います。

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