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大罪踏破のピカレスク~人間に絶望したので、女神から授かった能力で誰よりも悪役らしく生きていきます  作者: 鎖比羅千里
Episode.1 The fate of people who Enter into the palace of Villain...
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Ep.1-8

「――なんで、こんなことが‥‥‥」


拳を震わせながらミリアは絞りだすような声を漏らす。その言葉にエリオスはぴくりと眉を動かして視線を彼女に向ける。そして、こくりと首を傾けて、無邪気な表情を浮かべて見せる。

そんなエリオスにミリアは拳を振り上げながら叫ぶ


「なんで、何でアンタは‥‥‥なんでこんなことが出来るのッ!?」


絶叫するミリア。悲痛で凄絶で、憎悪に歪んだ表情で叫ぶ彼女にエリオスは短く答える。


「――悪役だからさ、私は」


「――は?」


エリオスの言葉に、問いを投げたミリアも、ルカントも、その場にいた全員が彼の言葉に呆気にとられる。そんな彼らの表情を気に留めることもなく、エリオスは言葉を続ける。


「私は悪役だからこんなことが出来るし、こんなことをする。ただそれだけの話。それ以上の理由なんて求められても困るな」


「――理由はない、と。ただ自分が悪人であるからそうすると?」


信じがたい、というような表情を浮かべて問いかけるルカント。

そんな人間がこの世にいると、そんな生き物が自分と同じヒトという生物であると言うことを受け入れたくない――そんな表情だった。しかし、そんなルカントのいじらしい願望を踏みつぶすようにエリオスはにこやかに、和やかに笑いながら答える。


「まあ、その理解にほぼ間違いはない、かな――だって『それっぽい』とは思わない?」


小さく首をかしげながらそう言ったその瞬間、ルカントは自身の中で何かがプツンと切れたのを感じた。


「なら躊躇うことはない――聖剣開帳、『萌芽のアメルタート』」


ルカントは握った剣に魔力を流し込む。その瞬間、ただの鉄色だった彼の剣が若草色の光を帯び始める。


聖剣アメルタート――世界七聖剣の一つにして、レブランク王国の秘宝。「萌芽」の理を司る善神の加護を受けた聖剣。レブランク王国の勇者として魔王討伐の旅に出たルカントに父である国王より与えられたものだった。

普段は付与されている制限術式のため、ただの硬い剣でしかない。だが、持ち主による解放宣言によりその真価が示される。即ちその司る理に基づいた魔力攻撃。


この旅路において、未だ解放されることのなかった聖剣の真価。ルカントは目の前の敵はソレを使うに値する敵であると判断した――だが、それ以上に彼の中に渦巻く想いがあった。

「この人道を外れた悪人には、善神の加護を受けた此の剣によって裁きを与えねばならない」――そんな激情が彼の中で燃え滾っていた。


「冥府で詫びろ――その悪逆をッ!!」


強く一歩踏み込み、その切っ先をエリオスに向けてルカントは叫ぶ。


その瞬間、聖剣の刀身から漏れ出た光が巨大な蔦に変成し、すさまじい勢いでエリオスを捕らえんと手を伸ばす。

これが「萌芽」の理――生体の細胞・性質を意のままに操る権能。また、その魔力から一時的に何もない空間から植物を生成し、それを変質させることで武器に転ずることを可能とする。


生み出された「萌芽」の槍は一瞬にしてエリオスの胸元間近に至る。

たとえ寸前で回避しようとも、アメルタートの操る植物は目標を追尾しその心臓を穿つ。

たとえ、リリスの魔術を防いだあの空間を裂く「御業」であったとしても、うねり避けて進む槍を防ぐことはできない。そう誰もが思った瞬間だった。


「‥‥‥『私の罪は(Deprive)全てを屠る(your ways)』」


声が響く。

その最後の一音が発されると同時に吹き抜けたのは黒い風。建物の中だというのに轟と吹き鳴るその勢いに、思わずシャールたちは目を閉じる。

そして目を開いた次の瞬間、彼らの目に映ったのは床に転がった聖剣と、上半身が消え失せ、腰から下だけが残ったルカントの身体だった。

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