ウォルド03
死んだのはそれなりに有名な貴族だった。
イツハは陰険油デブとか、性悪デブとか呼んでたな。
基本的にデブがつくのは変わらなかった。
俺があいつの容姿を説明した事はなかったのに。
なんで知っていたんだろうか。
ともあれ、死んだそいつは、親友をはめて、天使の生贄に指名したろくでもない奴だ。
川に落ちた経緯を考えれば、死因は想像に難しくない。
しかしこれでは困る。
濡れ衣で着せられた罪は、どうやらそのままらしい。
無実を証明してくれる者がいないのだから
死人に口なし。
俺は一生罪人のままらしい。
これからの旅は厳しくなる。
そう見越して、まだ手配書が出回っていない時期に宿をとって、体力を温存しようと思ったのだが、目を離した隙にイツハが問題を起こしていた。
それで、やっと見つけた宿を手放す羽目に。
てんやわんやの逃走劇を繰り広げて野宿になったが、思ったよりきつくはなかったのが不思議だ。
逃走中に助けてもらえたのが大きかっただろう。
今まであんな事など、起きなかったから。
それにしても、あいついつの間に金なんて稼いでたんだ。
世間知らずっぽいし、常に俺にくっついてるから、そんな暇はなかったはずなんだが。
気が付いたら人形師に人形作らせてるし、法典なんか買ってたし。