ウォルド05
馬車をぶんどって追手から逃走したのは良いが、今日は予想外の事が発生した。
無人だと思っていたその馬車には、一般人が乗り込んでいたようだった。
こちらの事情に巻き込んでしまったのは大きなミスだ。
なんとかミュセを、安全な場所まで送り届けなければならない。
といっても、今の俺達の話を聞いてくれる人間がいるのかどうか。
天使に歯向かう大罪人の意見なんて、誰も聞いてくれない事は目に見えている。
元から先行きが良くなる要素はなかったが、今回ばかりは本気で困った。
しかしそれにしても、イツハは相変わらずだ。
今日も人の話を聞かずにトラブルを起こした。
俺が駆け付けなかったら、きっとハチに刺されていたに違いない。
それはそれで面白そうだったけど、試しに刺されるには痛すぎる。
あいつも一応女だしな。
香水を吹き付けた時の挙動は、女のそれじゃなかったけど。
ミュセは、どこかの協会の修道女だったらしい。
しかし、買い出しをしていた時に、俺達の逃走に巻き込まれたのだと。
得意な事は、洗濯・炊事・掃除だっていうから、さっそくハチミツ料理を作ってもらった。
うまかった。
イツハが料理のコツを聞いてたけど、変なもん作ったりしねーように見張っておかねーとな。




