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喰らい合う刃と刃

 落ちてくる巨大な大剣を響は見上げながらも、動くことが出来ないでいた。逃げるにしても、高層ビルと同程度の大きさの剣が落ちてくる。


(あの大きさだと逃げ切れない……なら!)


 響は逃げない事を決心すると、すぐに腰のデモンギュルテルからキマリスのイヴィルキーを抜き取る。そしてキマリススラッシャーの柄の部分にイヴィルキーを装填するのだった。


〈Slash Break!〉


 イヴィルキーを装填するとキマリススラッシャーから起動音が鳴り響く。同時にキマリススラッシャーの刀身がエネルギーを纏い、更に大きな刀身となるのだった。

 刀身が伸びたキマリススラッシャーを響は上段に大きく振りかぶると、落ちてくる大剣に向かって勢いよく振り下ろす。

 エネルギーを纏ったキマリススラッシャーと落ちてくる大剣がぶつかり合い、衝撃だけで周囲の家の窓が大きく振動する。


「ぎぎぎ、ぐぅぅぅう、おおおぉぉぉ!」


 響は落ちてくる大剣を迎撃しようと、両手でキマリススラッシャーを掴み振り下ろそうとするが、大剣も容易く斬られてはくれない。

 両者は拮抗していくがその拮抗は、掛け声を上げた響によって崩れていくのであった。


「うりゃあああぁぁぁ!」


 乾坤一擲の一撃によって大剣は真っ二つに切り裂かれて、破片は粒子となって消えていく。

 そんな様子を見たアスモデウスイヴィルダーは、嬉しそうに高笑いするのだった。


「そうだこれが見たかった! 人間が私の一撃を砕き、仰ぎ見るその姿、私を心地よい気にさせてくれる。まだだ、まだ私は満足していないぞ!」


 アスモデウスイヴィルダーは再びその手に大剣を生成すると、響に向かって近づいて行くのだった。

 落ちてくる大剣を破壊した響は一息つこうとするが、向かってくるアスモデウスイヴィルダーの姿を確認すると、キマリススラッシャーで攻撃を防御する。

 防御したキマリススラッシャーと大剣がぶつかり合うだけで、周囲を破壊するほどの衝撃が走る。


「ぐ……」


 響は体を襲う衝撃に全身に力を込めて耐えようとするが、それよりも大剣の力に込められた膂力は凄まじく、響の体はまるで蹴られたサッカーボールのように勢いよく壁に叩きつけられる。


「がはっ……」


 壁に背中を預けて倒れる響、そんな彼を追い打ちをかけるようにアスモデウスイヴィルダーは近づいていき、ゆっくりと大剣を腹部に突き刺す。

 大剣を刺された箇所から走る激痛に苦悶の声が漏れる響、しかし口を噛み締めて大剣を掴むと、体から抜くのだった。

 そしてアスモデウスイヴィルダーに向かってヤクザキックを放つ響、二人の距離が放れた隙に立ち上がるのだった。


「痛えな……」


 大剣を刺された場所を片手で抑えながらも、響はキマリススラッシャーを杖のようにして歩き出す。

 傷口を押さえていた手の平を見てみると、まるで元々赤かったかのように赤い血がベッタリと付いていたのだった。

 それでも響は痛みを堪えながらもキマリススラッシャーを構えると、アスモデウスイヴィルダーを見据えるのだった。

 そんな響の様子を見てアスモデウスイヴィルダーも、小さく笑いながら大剣を構える。


「まだまだ行けるなぁ! 加藤響!」


 走り出すアスモデウスイヴィルダーは大剣を振り下ろす、その一撃を響はスライディングすることで回避する。

 そして攻撃を避けた響は後ろを取ると、立ち上がりそのままアスモデウスイヴィルダーに斬りかかる。

 だがアスモデウスイヴィルダーは大剣を後ろに振り回すと、後ろからの攻撃を容易く防いでしまう。それを見た響の表情は、驚愕に染まってしまうのだった。

 攻撃を防いだアスモデウスイヴィルダーは、そのまま後ろにいる響に向かって回転斬りを放つ。

 襲いかかる斬撃を回避しようと後ろにバックステップする響だったが、完全に躱すことは叶わず胸元に横一文字の刀傷ができる。

 響の体にできた傷からは血が勢いよく吹き出し、そのまま胴体を血で赤く染めるのだった。


「っう……」


 血が流れる傷口を手で抑えながらも響は、アスモデウスイヴィルダーを視界から外すことは無かった。

 響はキマリススラッシャーを構えると、走り出して一気に距離を詰めていく。

 キマリススラッシャーの間合いにまで今で入った響は、その手に持った武器に力を込めると、アスモデウスイヴィルダーに斬りかかる。

 しかしその一撃は後ろに後退したアスモデウスイヴィルダーによって回避される。

 続けるように前に出た響は、キマリススラッシャーを振るって攻撃を続けるが、その攻撃は命中せず空を切るのだった。

 胴へ目掛けての突き、上からの袈裟斬り、横一文字に切り裂くような右薙ぎ、連続して放たれる斬撃を全てアスモデウスイヴィルダーには命中せずに、外れるのだった。

 攻撃が避けられるのを見て響は焦って舌打ちをする。そのまま前に進んでいき攻撃を続けていく、体を一回転させた左薙ぎ、連続して放つ突き、股から上に斬る逆風、しかしどの攻撃も回避されていく。


「くそ……っ!」


 決死の連続攻撃が当たらないことに悪態をつく響であったが、ふと足元に感じる感触から一つのアイディアを思いつくのだった。


「でりゃあああぁぁぁ!」


 響は前に進むと同時に足元に散らばるアスファルトの欠片を、アスモデウスイヴィルダーの目元に向かって蹴り上げるのだった。

 まるで散弾のごとく放たれたアスファルトの破片群は、攻撃を回避しようとするアスモデウスイヴィルダーの目を襲う。


「何!?」


 流石に足元にあるアスファルトを使うと思わなかったのか、アスモデウスイヴィルダーは咄嗟に目を閉じて空いた手で守ってしまう。

 その隙を突いた響はアスモデウスイヴィルダーの胸に向かって、キマリススラッシャーの刀身を突き刺すのだった。

 刀身がアスモデウスイヴィルダーの体を深々と貫き、傷口からは大量の血が雨の如く流れ出る。

 しかしすぐさまキマリススラッシャーを掴んだアスモデウスイヴィルダーは、体から引き抜くとそのまま響に向かって大剣で斬りかかる。

 首を狙った一撃を見た響は、急いで回避しようとするが間に合わず、喉元を軽く切り裂かれるのだった。


「やるじゃねえか……」


「そちらこそ……」


 響は喉元を空いた手で血を抑えながら吐き捨て、アスモデウスイヴィルダーも貫かれた傷を手で抑えて出血を抑えながら呟くのだった。

 二人が傷口から手を離すと既に出血は止まっていて、傷も八割方塞がりかけていた。

 すぐに武器を構える両者、体を襲う痛みのためかすぐには動くことは無かったが、一瞬も相手の動きを見逃すことはなかった。


「はぁぁぁぁあああ!」


 先に動き出したのは響であった。キマリススラッシャーを構えると、アスモデウスイヴィルダーへ向かって走り出す。

 まるでサメが鳥を捕食するかのように、下から上へ斬り上げる。しかしその一撃はアスモデウスイヴィルダーの大剣によって防がれるのだった。


「ふん!」


 攻撃を受け止めたアスモデウスイヴィルダーは、攻撃の隙を突くかのようにヤクザキックを響へと放つ。

 蹴りを防ぐことが叶わなかった響は、そのまま蹴り飛ばされて地面に背中から叩きつけられるのだった。


「がぁ……」


 地面に叩きつけられた響は起き上がろうとするが、そうはさせまいとアスモデウスイヴィルダーは大剣を響の腕へと投げつける。

 まるで弾丸の如く射出された大剣は、響の腕を貫通して刀身が地面へとまるで縫い付けられたかのように突き刺さるのだった。


「ぐわあああぁぁぁ!」


 痛みに耐えきれずに悲鳴を上げる響、しかしすぐに口を閉じると、腕に突き刺さる大剣を抜き取り立ち上がる。そして手に持った大剣を、アスモデウスイヴィルダーに目掛けて投擲するのだった。

 襲いかかる大剣をアスモデウスイヴィルダーは紙一重で回避すると、飛来する大剣の柄を掴み取る。

 大剣を取り戻したアスモデウスイヴィルダーは、響に向かって斬りかかりに行く。

 そんな動きを見た響はすぐにキマリススラッシャーを構えると、大剣の一撃を防ぐのだった。


「っちい!」


「ははは、まだだ加藤響! 私のダンスは激しいぞ!」


 続けてアスモデウスイヴィルダーは大剣を頭の上まで持ち上げると、響に向かって勢いよく振り下ろす。

 地面を木っ端微塵に砕きかねない一撃を、響はキマリススラッシャーの刀身を斜めにすることで受け流す。

 地面に叩きつけられた大剣は、アスファルトを砕き周囲にひび割れを作るのだった。

 ひび割れを見た響は、言葉に出さなくとも内心冷や汗が止まらなかった。

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