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ぶつかり合う両者

 アスモデウスイヴィルダーは背中に背負う大剣を抜くと、そのまま肩の高さまで持ち上げて振り上げる。


〈Demon Gurtel!〉


「っく!」


 それを見て響はすぐさま腰にデモンギュルテルを生成させるのであった。そしてポケットからキマリスのイヴィルキーを取り出すと起動させる。


〈Kimaris!〉


 イヴィルキーを起動させた響は、間髪入れずにデモンギュルテルにイヴィルキーを装填させるのだった。


「憑着!」


〈Corruption!〉


 デモンギュルテルから起動音と共に中央部が観音開きとなり、そこから騎士の姿をしたケンタウルスが現れる。

 そしてケンタウロスはバラバラにパーツへと分解されると、そのまま響の体に装着されていく。

 両腕、両足、肩、胴体、頭部、各パーツが装着されて、響はキマリスイヴィルダーへと変身するのであった。


「ふん!」


 変身が完了した響は両手を構えると、アスモデウスイヴィルダーに向かって殴りかかる。

 しかしその攻撃はアスモデウスイヴィルダーの大剣によって防がれる。そのままアスモデウスイヴィルダーは響の右足にローキックを放つのだった。

 ローキックを受けながらも響はジャンプすると、アスモデウスイヴィルダーに上空からチョップを放つ。

 手刀はアスモデウスイヴィルダーの頭部に命中するが、お返しとばかりに薙ぎ払われた大剣で斬りつけられる。


「がぁ……」


 吹き飛ばされた響の体は地面に叩きつけられて、そのまま地面を転がっていく。

 しかしすぐに立ち上がった響は体勢を立て直すと、アスモデウスイヴィルダーに向かって走り出す。

 距離を詰めていく響に向かって襲いかかる大剣、だが響も攻撃を紙一重で回避していき遂に素手での間合いに入る。


「うおりゃあああぁぁぁ!」


 叫びながら放った響の渾身のパンチは、アスモデウスイヴィルダーの顔面を捉えるのであった。

 だが殴られたアスモデウスイヴィルダーは、衝撃で一歩後ろに下がり姿勢を崩すだけに留まる。


「良い一撃だ。だがこれだけか? ハァ!」


 アスモデウスイヴィルダーは体勢を立て直すと、響に向かって大剣を上から勢いよく振り下ろす。

 攻撃を受け止めるのは危険だと判断した響は、体を大きく前転させて回避する。

 空を斬った大剣の一撃は、地面に叩きつけられると衝撃とともにひび割れを起こすのだった。


「……ふぅ」


「安堵するにはまだ早い!」


 激しく破損した地面を見て一息つく響。しかし響を追撃するようにアスモデウスイヴィルダーが上段斬りで斬りかかるのだった。

 襲いかかる一撃を響は横に回避して避ける。そしてそのままアスモデウスイヴィルダーに向かって回し蹴りを叩き込む。


「っく……やるな!」


 アスモデウスイヴィルダーは横に吹き飛ばされるが、楽しそうに笑うのだった。

 そして大剣を地面に突き刺すと、そのまま空中で体勢を立て直す。

 地面に着地したアスモデウスイヴィルダーは、響を切り裂かんと左薙ぎの姿勢となるのだった。

 全力で振りかぶられた大剣の一撃を、響は後方バク宙をすることで回避する。

 そのまま空中にいる間に響は右手にキマリススラッシャーを生成すると、アスモデウスイヴィルダーの目に向かって勢いよく投擲するのだった。

 ビュンと空気を切り裂く音と共に、投擲されたキマリススラッシャーがアスモデウスイヴィルダーに向かって滑空する。


「ふん! そうだこれぐらいはやってもらわなければな、グールと同じレベルと認定しそうだぞ!」


 アスモデウスイヴィルダーは襲いかかるキマリススラッシャーを大剣で防ぐと、そのまま意気揚々と響との距離を詰めようとする。

 投擲を防がれたキマリススラッシャーは、軽い金属音と共にそのまま地面に落ちてしまうのだった。

 そんな中で響へと距離を詰めて斬りかかろうとするアスモデウスイヴィルダー。響は大きく後ろに避けることで大剣での連続攻撃を回避していくのだった。


「まだまだ舐めるなぁ!」


 響は後方にある電柱へと走ると、そのままジャンプして電柱を蹴って三角飛びをする。空中に飛んだ響はアスモデウスイヴィルダーの上空を飛び越して、地面に落ちたキマリススラッシャーの元に着地するのだった。

 キマリススラッシャーを拾い上げた響は、走り出すとアスモデウスイヴィルダーに斬りかかる。

 しかし響の放った渾身の一撃は、両手で大剣を持ったアスモデウスイヴィルダーによって防がれてしまうのだった。


「これじゃ駄目か……」


「どうしたこんなものか? 加藤響!」


 叫ぶアスモデウスイヴィルダーはそのまま響に向かって大剣を突き出す。響は放たれた攻撃を回避するが、相手の勢いが強く攻撃に反転する事ができない。

 そのままアスモデウスイヴィルダーは連続で響へと斬りかかる。突き、袈裟斬り、左薙ぎ、両手持ちの大剣から放たれる攻撃に、回避に専念を余儀なくされる響。

 しかし再び放たれようとする突きの動きを見た響は、一気に距離を詰めてキマリススラッシャーで斬りかかるのだった。


「今ならどうだ!」


 交差する両者、アスモデウスイヴィルダーの後ろまで駆け抜けた響は、キマリススラッシャーを順手で持っている響はチラリとその刀身へと視線を向ける。普段は鏡のように美しい刀身が、僅かであったが血で赤く染まっていた。

 キマリススラッシャーの刀身を見てすぐに振り向く響、そこには腹に小さな傷ができていたアスモデウスイヴィルダーの姿があった。


「フフフフフフ……傷か私を傷つけるか、人間と魔神が変じたイヴィルダーが」


 嬉しそうな表情で腹から流れる血を手で掬うと、そのまま口に持っていくアスモデウスイヴィルダー。その様子はまさしく魔王と呼ぶに相応しい姿であった。


「随分楽しそうじゃないか?」


「もちろんだとも、やはり物質界に来てよかったよ。こうやって人間が私を楽しませてくれるんだから……だからこのまま終わって失望させるなよ、人間!」


 アスモデウスイヴィルダーは大剣を振り上げると、そのまま頭の高さまで持ち上げる。

 響もキマリススラッシャーを構えると、そのまま相手の動きを観察していく。

 両者は見合うと一挙一動見逃さないようにして動きを見る。そのまま時間は過ぎていくが、ほんの僅かな時間であっても両者にとっては長いものであった。

 動かない二人をあざ笑うかのように、カラスが大きく一鳴きする。それに合わせたかのように、二人は疾風の如く動き出すのだった。


「でやあああぁぁぁ!」


「はあああぁぁぁ!」


 振り下ろされたキマリススラッシャーと大剣がぶつかり合い、衝撃でアスファルトがひび割れていく。

 鍔迫り合いをする響とアスモデウスイヴィルダー、二人は己の得物を全力で掴み、打ち勝たんとするのだった。

 そして武器同士の衝撃の圧力は高まっていき、周囲のアスファルトさえもひび割れていき、遂には地面にくぼみが出来ていく。

 ひび割れて足場が不安定になっていくと、二人は同時に後ろに下がることで体勢を立て直す。


「まだまだこれからだ! 人間讃歌を聞かせて見せろぉ!」


 アスモデウスイヴィルダーは大剣を腕の高さまで持ち上げると、一気に距離を詰めるように走り出し始める。そして響の体を横に真っ二つにするような勢いで、大剣を右に薙ぎ払うのだった。

 響もすぐに反応して武器を構えて防御をしようとするが、速度の乗った一撃は完全に防ぐ事はできずに衝撃で後ずさってしまう。


「っく……まだまだ!」


「いいぞ、ならばこれはどうだ!」


 アスモデウスイヴィルダーはデモンギュルテルからアスモデウスのイヴィルキーを取り出すと、大剣の柄に当たる部分にイヴィルキーを差し込む。


〈Slash Break!〉


 大剣から起動音が鳴り響くと、アスモデウスイヴィルダーは大剣を雲に届きそうなほどに空高く放り投げる。


「何を……?」


 アスモデウスイヴィルダーがした行動に、最初はわけが分からずに唖然とする響であったがすぐに理解する。先程の行動は攻撃への準備であったことに。

 天空に浮かぶ雲が真っ二つに切れると同時に、小さな影が空から落ちてくる。それは少しずつ地上へと近付くごとに、とてつもない大きさであることが響は理解した。

 まるで高層ビルが空から地上に落ちてくるように、巨大な剣が落下してくるのだ。唖然としても誰も責めることは出来ないだろう。


『響! このまま潰されたいのかい!?』


『はっ……!』


 しかしキマリスの叱咤によって響は正気を取り戻す。だが彼の視界に入っているのは、空を隠すほどの巨大な剣であった。

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