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頭から下は化け物なんだよ!

 達也を後ろに控えさせて構えを取った響は、オセイヴィルダーとの距離を徐々に詰めていく。

 オセイヴィルダーも構えを取り、二人は間合いを互いに計っていく。


「はあぁ!」


 先に動き出したのは響であった。響は走り出すと一気に距離を詰めていき、オセイヴィルダーに対して殴りかかる。

 しかしその攻撃をオセイヴィルダーは巧みに回避する、そして回避際に豹のように長い爪を振るう。


「ぐぅ」


 オセイヴィルダーの爪は一撃目は響の体を深々と切り裂き鮮血が走る、しかし二撃目の攻撃は響の腕に防がれ、そして三撃目の攻撃は響が後ろに宙返りすることで回避した。


「逃げるんじゃないですよぉ!」


 怒り狂うオセイヴィルダーを知り目に響は地面に着地すると、すぐに距離を詰めてオセイヴィルダーの胸部を殴る。

 素早い一撃にオセイヴィルダーはモロにその一撃を受け、ヨロっと後ろにのけぞってしまう。


「まだまだぁ!」


 よろけているオセイヴィルダーへ響はさらなる追撃を加える、回し蹴りをオセイヴィルダーに向けて続けて三回放つ。

 一発目の蹴りはオセイヴィルダーの顎に命中し、二発目の蹴りは右肩に命中する、三発目の蹴りは勢いが増して、強烈な一撃オセイヴィルダーの胸を襲った。


「グェ」


 蹴りをくらったオセイヴィルダーはふらつきながら後ろに下がる、その瞬間を響は逃さずにオセイヴィルダーの口に右足の足先を突っ込む。

 そして響はそのまま左足だけでジャンプしてオセイヴィルダーを押し倒し、口に突っ込んだ足をグリグリと(えぐ)っていく。

 口の中を(えぐ)られていくオセイヴィルダーの口からは、血が止まることを知らないのか口元は血で赤く染まっていく。


「ハァ……ゼリャァ!」


 響は右足だけでオセイヴィルダーを持ち上げると、そのまま右足を振り回してオセイヴィルダーを投げ飛ばす。

 投げ飛ばされたオセイヴィルダーはそのまま地面を転がっていく。そして体勢を立て直すと、やめろと言わんばかりに手を開く。


「いいの? 私を倒すと監禁している子たちの行方は分からなくなるわよ!」


「それってよ、達也に告白していた女子生徒のことか?」


「そうよ! もっともあれは私が顔を借りて告白したのだけどねぇ!」


 オセイヴィルダーには響の顔は変身して分からなかったが、響はそれを聞いた瞬間に顔をしかめっ面にさせるほどの不快感を露わにした。そして響は両腕をダランと下げる。

 その様子を見たオセイヴィルダーは不敵に笑うが、一歩ずつ近づいていくる響に文句をたれ始める。


「何よ、近づいてくるのよ。あの子達がどうなっても言い訳!?」


 そんなオセイヴィルダーの様子を無視して、響はゆっくりとオセイヴィルダーの目の前に立つ。

 響の様子を見てオセイヴィルダーは、何かがおかしいと気づいたのか震え声を漏らし始める。


「お前が言っている女子生徒たちはな、さっき俺たちが救出したばっかなんだよ!」


 そう言うと響オセイヴィルダーに向かって、勢いよく右手で顔面へ殴りかかる。

 殴られたオセイヴィルダーの体は宙を舞い、そのまま空中できりもみ回転して地面に落ちるのだった。


「お前ぇ、ふざけるなよ。どうやってあいつらを助けたんだって言うんだ!」


 オセイヴィルダーは血が流れる口元を抑えつつ、立ち上がり発狂して叫びだす。


「決まってるだろ窓を割って、家の中を家探し……あ」


 響も流石に言っている途中で、犯罪行為だと気づいたのか両手で口元を隠す。

 なお後ろで見ている達也からの視線は、絶対零度と言わんばかりに冷たい物であった。


「いいだろ、今は助けて良かったんだから!」


 突き刺さる達也の視線に耐えきれなくなったのか、響は焦りながらも達也に弁解する。

 そうして響が後ろを向いている隙に、オセイヴィルダーは立ち上がり響に襲いかかる。


「響、後ろだ!」


「え?」


 達也の叫びを聞いて響は後ろへ振り向くが、既に目の間にはオセイヴィルダーが近づいていた。

 慌てて回避しようとする響であったが、時既に遅くオセイヴィルダーの鋭い爪が響の胸を切り裂く。


「チィ!」


 響の切り裂かれた胸からは鮮血が溢れていて、手で押さえるが止まることを知らない。

 すぐに響は後ろにジャンプをして、オセイヴィルダーとの距離を取る。


「ヤッてくれるじゃないの……」


「アハハ、よそ見している方が悪いんですよぉ!」


 響は再び両手で構えを取ると、オセイヴィルダーに向かって走り出す。

 向かってくる響に対してオセイヴィルダーは、爪を振りかざすが響は回避して後ろを取る。


「セイヤー!」


 響はそのままオセイヴィルダーの腰を両腕で掴むと、そのまま後ろにブリッジして勢いよく投げつける。

 バックドロップで地面に叩きつけられたオセイヴィルダーは、頭を抑えて悶え苦しむ。


「あああぁぁぁ!」


 その隙に響は大きくジャンプをすると、オセイヴィルダーの腹部に向かって膝を突き立てる。

 ズンという重い音と共に渾身のニードロップがオセイヴィルダーに叩き込まれると、さらに響はジャンプする。


「くらえやぁ!」


 再びオセイヴィルダーへ向かって落下する響は、今度は肘をオセイヴィルダーの腹部に突き立てる。

 エルボードロップを腹部にくらったオセイヴィルダーは、口から血を吐き散らす。


「調子に乗るなぁ!」


 血を吐き出したオセイヴィルダーは、響の腕に向かって爪を突き立てる。

 響の腕を深々と貫いた爪は、そのまま傷を開くようにゆっくりと動いていく。


「ぐううう」


 痛みに歯を食いしばる響だが、それを見てオセイヴィルダーは嗜虐的に笑う。

 しかし響は痛みに耐えて動きを止めず、そのままオセイヴィルダーに向かって殴りかかる。


「オラ、オラ、オラァ!」


 防御も出来ない距離から放たれるパンチに、オセイヴィルダーは悲鳴をあげる。

 響はそのままオセイヴィルダーを立ち上がらせると、頭を右腕でギリギリと絞め上げる。

 オセイヴィルダーは頭を絞め上げられている痛みに響の腕を掴むが、響は拘束を離そうとしない。

 そのままヘッドロックの体勢のまま響は勢いよく走り出す、そしてオセイヴィルダーのバランスが崩れた瞬間、ジャンプをしてオセイヴィルダーの顔面を地面に叩きつける。

 ブルドッギング・ヘッドロックをくらったオセイヴィルダーは、顔面を手で隠しながら地面を転がり響との距離を取る。

 そして立ち上がったオセイヴィルダーは豹の顔から、今日達也に告白してきた女子生徒の顔に変える。


「どう!? 女の顔を殴れないでしょぉ!」


 しかし響は一気に距離を詰めると、オセイヴィルダーの顔面を勢いよく殴りつける。


「何で!? 生身の顔を殴れる!?」


「首から下はイヴィルダーのままなんだよぉ!」


 響はそのままジャンプをすると両足でオセイヴィルダーの頭を挟み込む、そして体を後ろに回転させてオセイヴィルダーの体を勢いよく投げ飛ばす。

 フランケンシュタイナーで投げ飛ばされたオセイヴィルダーは、地面に叩きつけられて再び顔面を強打する。

 女子生徒の顔であったオセイヴィルダーの頭は、元の豹の頭に戻る。

 そして倒れているオセイヴィルダーに響は距離を取ると、デモンギュルテルに装填されているイヴィルキーを二度押し込む。


〈Finish Arts!〉


 デモンギュルテルから起動音が鳴り響くと共に、響の右足に白と黒の嵐が吹き荒れる。


「ふぅぅぅ」


 息を大きく吐き出し腰を下げた響は大きくジャンプをすると、オセイヴィルダーに向かって飛び蹴りを放つのだった。

 立ち上がったオセイヴィルダーの目前には、跳び蹴りの体勢で近づく響の姿があった。

 逃げるオセイヴィルダーであったが、逃れることは叶わず必殺の一撃をくらうのだった。


「あああぁぁぁ!」


 飛び蹴りをくらって地面を転がるオセイヴィルダー、そして一瞬苦しむ様子を見せると大きく爆発した。

 爆発の後には地面に倒れている女子生徒と、オセのイヴィルキーが落ちていた。


「ふぅ」


 オセイヴィルダーを倒したことを確認した響は一息ついて、オセのイヴィルキーを回収する。そしてそのまま達也の元に向かうのであった。




「よう無事か?」


 変身を解除して座り込んでいる達也の目の前に立った響は、軽くそう問いかける。


「無事なように見えるか?」


 疲れたように達也は自身の制服の胸元をはだける、そこには小さくない傷から血が流れていた。

 血が流れる傷口を見た響は、無言で達也の腕を掴んで立たせると、そのまま肩を貸すのであった。


「しゃあねえな桜木先生居ないけど、保健室行くぞ」


「待て、どうして桜木先生が居ないことが分かるんだ?」


「それも含めて保健室で話すよ」


 達也の血で制服が汚れることも気にせず、肩を貸しながら響は歩いていくのだった。

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