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互いの正義

 響はひき殺そうとする青いバイクを見て、すぐに横に体を投げ出す。


「うぉぉぉ!」


 しかし一歩遅く体が一瞬だけバイクと接触する、その衝撃で響の体は地面に大きく転がるのであった。


「一体何しやがる!」


「簡単なことさ、さっきまでお前が目立っていた。だからお前を倒して俺が一番になるんだ!」


 すぐに立ち上がりバイクの持ち主に文句を言う響、しかし返ってきたのは異様な言葉であった。

 まるで笑いながら狂ったように喋る異形、さらには「俺が一番、俺が一番、俺が一番」と同じ言葉を繰り返して喋るのである。


「何だこいつ?」


『響、気をつけるんだ。こいつもイヴィルダーだ』


『名前は?』


『青い騎乗物、なら奴はバティム。三十の軍団を率いる大いなるの公爵だ!』


 バイクに乗った異形――バティムイヴィルダーはエンジンをふかすと、再び響を轢殺しようと走り出す。

 それを見た響は右腕を横に突き出して、そのままバティムイヴィルダーに向かって走り出す。


「ハッハッハ、何だ? 勝負と行くか?」


 響の様子を見たバティムイヴィルダーは、口が避けそうな程の大声で笑いながら更にアクセルを踏む。

 距離を詰める両者、先に行動したのは響であった。

 響はそのまま前にジャンプすると、右腕をバティムイヴィルダーの首に叩きつける。


「がぁ!」


 首にラリアットを受けたバティムイヴィルダーは、潰れたカエルのような声を上げて、そのままバイクから転げ落ち地面を滑る。

 騎手が居なくなったバイクは、そのまま持ち主と同じように無残に横に滑るのであった。


「さっきのお返しはこれで返したぜ」


 そのまま響はバイクに近づくと、バイクを立たせようとする。


『あれ、響バイク乗れるんだっけ?』


『あー乗り方知らん』


 響がバイクに触れた瞬間、バティムイヴィルダーは発狂したように立ち上がり走り出す。


「返せ! それは俺のだ!」


 近づいてくるバティムイヴィルダーを尻目に、響はバイクを両手で持ち上げると、そのまま勢いよくバイクをバティムイヴィルダーに投げつけるのであった。


「なら返してやるよ、オラァ!」


 百キロをゆうに超える大型バイクを投げつけられたバティムイヴィルダーは、そのままバイクが頭に当たりそのまま倒れる。

 それを見た響は気分が良さそうに、指をパチンと鳴らすのであった。


「俺が一番だ、昨日も今日も明日も、俺が一番だぁ!」


 狂ったように叫びながら立ち上がるバティムイヴィルダー、しかし響は立ち上がる前に攻撃せんと飛び蹴りを放つ。


『バティムの奴ヤバい契約者でも選んだみたいだね』


『確かに聞いてるだけでヤバいってわかるな』


「立たせるか、オラァ!」


 立ち上がる隙を突いて放たれた攻撃をバティムイヴィルダーは、避けることができずモロにくらってしまう。

 そのまま響はバティムイヴィルダーのマウントを取り、上から殴りかかる。

 一発、二発、と続けて殴る音だけが周囲に響き渡っていたが、その瞬間、その音をかき消すように馬の蹄の音が響き渡る。


「何だ?」


 場違いな音につい響は殴るのを止めてしまう、そして音の聞こえる方向に視線を向けると、そこには馬に乗った騎士が近づいてくるのであった。


「はぁ!?」


 驚く響であったが、すぐにバティムイヴィルダーの上からから飛び退き、馬の突撃を回避する。


『響、大丈夫かい?』


『おう、何とかな。でアイツは何だ?』


『馬に乗った騎士の姿、あいつはエリゴール、六十の軍団を従える侯爵だ!』


 馬に乗った騎士――エリゴールイヴィルダーは、響とバティムイヴィルダーを見ると両手を上げてまるで演説するかのように喋りだす。


「やっと見つけたぞ暴走族、今日こそお前をとっちめてやる。ん? お前も暴れているのか、ならお前もだ!」


「おい、俺はこいつに……」


 エリゴールイヴィルダーは響の言葉を聞かずに、馬を操り二人に目掛けて再び突進する。

 響はすぐさま避けて突撃を回避し、バティムイヴィルダーはバイクに乗り突撃を避ける。

 もはや状況は三つ巴の争いとなり、混迷を極めていた。


「はぁ!」


「死ねぇ!」


 響がバティムイヴィルダーの頭に蹴り放とうとすれば、エリゴールイヴィルダーが攻撃を邪魔しつつ槍でバティムイヴィルダーを攻撃する。


(っく思ったよりやり辛い!)


 二対一ならばもう一人に注意していればいいが、一対一対一では完全に無法地帯となっていた。

 そこに紫の蛇がエリゴールイヴィルダーの右腕に絡まり、そのまま引っ張られてエリゴールイヴィルダーは落馬する。


「誰だ!」


 バティムイヴィルダーの言葉と共に、三人の視線は蛇が来た方向に向く。

 そこにはバティムイヴィルダーとエリゴールイヴィルダーを睨みつける、アンドロマリウスイヴィルダーに変身した達也が立っていた。


「達也!」


「大丈夫か、響?」


「まあ、なんとかな。何で此処に?」


「騒音がやかましいから文句を言いにきたら、お前らが戦っているのを見たからだよ」


 響と達也は背中合わせになりながら、二人のイヴィルダーに向かい合う。


「じゃあ勝てよ」


「響こそ!」


 響はバティムイヴィルダーに、達也はエリゴールイヴィルダーに向かうのであった。




「さぁて第二ラウンドと洒落込むか!」


 響は手のひらに拳をぶつけてやる気を振り絞り、バティムイヴィルダーはバイクに乗りエンジンを何度もふかすのであった。

 最初に動いたのはバティムイヴィルダーであった、バティムイヴィルダーはアクセルを踏み響を轢殺せんと進んでいく。

 逆にバティムイヴィルダーの動きを見て響は、迷わず前に進んで行きジャンプをする。

 バティムイヴィルダーと響の体が接触する直前、響は右足を上げてそのままバティムイヴィルダーの喉に蹴りを叩き込む。


「フライングレッグラリアット!」


 両者の進む速度が合わさった一撃をくらったバティムイヴィルダーは、そのまま宙を舞い地面に倒れ込む。主を失ったバイクはそのままバランスを崩して、横転するのであった。

 バティムイヴィルダーが地面に倒れているうちに響は、懐からウェパルのイヴィルキーを取り出す。


「ウェパル力を貸してくれ!」


 そしてウェパルのイヴィルキーを起動させると、キマリスのイヴィルキーの代わりにデモンギュルテルに装填するのであった。


〈Vepar!〉


「憑着!」


〈Corruption!〉


 起動音と共にデモンギュルテルの中央部が開き、中から女性の人魚が現れる。

 人魚は響の周囲を泳ぐと、そのまま響の体にダイブするのであった。

 響の体は一瞬で水に覆われるが、すぐに水は蒸発する。そして後に居たのは魚の鱗のようなスケイルアーマーを着た異形、ウェパルイヴィルダーに変身した響であった。

 響は口元のクラッシャーを開くと、そのまま氷のブレスを地面に吐き出す。


「フリージングブレス!」


 氷の息を吹きかけられた地面は、またたく間に凍っていき、走ろうとすれば転けかねないで程であった。

 地面が凍ったのを見たバティムイヴィルダーは、すぐにバイクの元に駆け寄りエンジンをふかすが、地面が凍っていてタイヤが滑ってしまうのだった。


「テメエこれじゃ走れないだろ!」


「いいじゃねえか、騒音対策だよ騒音対策」


 憤怒するバティムイヴィルダーを尻目に、響は笑うのであった。

 そしてすぐに動き出す響、バティムイヴィルダーとの距離を詰めると殴りかかる。

 喉にアッパー、肩にストレート、胸元に掌底、と息もつかせぬ連続攻撃に、バティムイヴィルダーは攻撃を防御さえできなかった。

 バティムイヴィルダーが攻撃を受けた箇所は、またたく間に凍っていき、遂には全身が凍っていくのであった。


「なんだ……こりゃぁ!」


 体が凍っていく事に恐怖したバティムイヴィルダーは、逃げようと響に背を向ける。しかし足も凍りついていき、全く動けなくなっていくのであった。


「これで終わりだ」


 響はバティムイヴィルダーが動けない間に、ベルトに装填されているイヴィルキーを二度押すのであった。


〈Finish Arts!〉


 デモンギュルテルから起動音が鳴るとともに、響の右足に凍気がまとわり付く。

 そして響はそのままバティムイヴィルダーに走って近づくと、バティムイヴィルダーの頭に向かって回し蹴りを放つのだった。

 必殺の一撃をくらったバティムイヴィルダーは全身が凍りつき、そして粉々に砕けるのであった。

 後に残ったのは響と同じ上之宮学園の制服を着た男子生徒と、バティムのイヴィルキーであった。


「達也の方は終わっているかな?」


 イヴィルキーを拾った響はそう言うと、達也のもとに走るのであった。




 エリゴールイヴィルダーと相対している達也は、構えを取りエリゴールイヴィルダーの様子を見ていた。


「まさか君もイヴィルダーになれると思わなかったよ」


「!?」


 エリゴールイヴィルダーの親しげな声に驚く達也、エリゴールイヴィルダーは頭の兜を外すと、その素顔を達也に見せつける。


「あんたは……」


 眼鏡をかけたティーンエージャーの男、達也はその顔に見覚えがあった、生徒会での集まりで必ず顔を見せるその人物。


「風紀委員長、あんたもイヴィルダーだったのか……」


「そうだよ、君となら仲良くなれるはずだ。だからあの暴れている悪のイヴィルダー達を倒そう!」


 エリゴールイヴィルダーの言葉を聞いた達也は、表情を険しくして一歩前に出る。


「悪いが、それを聞いてハイそうですね、と従ってやる気はない」


「何故?」


「響は俺の友達でアイツのこともよく知ってる。だからアイツが悪なら俺が一番に殴っている!」


「そうか、それは残念だ」


 エリゴールイヴィルダーは再び兜を付け直し、槍を持ち達也に穂先を向ける。

 先に動いたのは達也であった。馬に乗っているエリゴールイヴィルダーを落とすために、飛びかかって左腕の蛇を馬に襲わせる。

 蛇は馬の首を締め上げ、エリゴールイヴィルダーには達也の蹴りが叩き込まれ落馬する。

 しかしエリゴールイヴィルダーも槍を振るって、達也を迎撃して地面に叩き落とす。

 地面を転がる両者、そしてすぐに立ち上がるが次の動きは対照的であった。

 エリゴールイヴィルダーは馬に乗ろうと達也に背を向け、達也は攻撃しようと距離を詰めるのであった。


「待て!」


「っち!」


 早かったのは達也であった、達也は槍の間合いの中まで入ると、接近して殴りかかる。

 殴られるエリゴールイヴィルダーであったが、負けじと達也に殴りかかり、両者は距離を詰めての殴り合いに発展する。

 壮絶な殴り合いの末、先に音を上げたのはエリゴールイヴィルダーであった。

 エリゴールイヴィルダーは達也から離れようと後ろに下がる、その瞬間、達也の左腕の蛇がエリゴールイヴィルダーの首元を襲う。


「ぐ!」


「これで決める!」


 達也はデモンギュルテルに装填されているキーを二度押しこむ。


〈Finish Arts!〉


 デモンギュルテルから起動音が鳴り響くと共に、達也の左足に紫色のエネルギーがほとばしる。


「はぁ!」


 そのまま達也はジャンプすると、エリゴールイヴィルダーにむかって飛び蹴りを叩き込むのであった。

 達也の必殺の一撃をくらったエリゴールイヴィルダーは、地面を転がり爆発する、そして爆発の後に残ったのは風紀委員長とエリゴールのイヴィルキーであった。


「よ、そっちも終わったみたいだな」


 エリゴールのイヴィルキーを拾う達也に声が届く、そちらに視線を向けると変身を解除した響が立っていた。


「そっちこそな」


 達也も変身を解除すると、二人は拳をコツンとぶつけ合うのだった。

 そのまま二人は桜木千恵に連絡して、倒れている二人を回収してもらうまで待つのであった。

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