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秘密を知る妹、そして知りたくなかった真実

 シトリーとフラウロスのイヴィルキーを回収した響は、座り込んでいる琴乃に手を伸ばす。


「立てるか、琴乃?」


「ありがと兄貴」


 響の手を取った琴乃は、「よっこいしょ」と響の力を借りて立ち上がる。しかし直ぐに琴乃はふらっと座り込んでしまう。


「あれ?」


「ったく仕方がないな」


 響は屈むと琴乃に背中を向ける、そして「俺が背負ってやる」と言い出した。

 琴乃は顔を真っ赤にするが、自力で帰れない事を天秤にかけて響に負ぶわれるのだった。


「ううう……恥ずかしいよ」


「代案はお姫様抱っこしか思いつかなかったけど、それでいいか?」


 響は琴乃を背負うと家に向かって歩き出す、その道中で琴乃は背負われている事に恥ずかしがっていたが、響の代案を聞くと「嫌!」と断固拒否するのであった。


「お姫様抱っこなんてしてるところ見られたら、何あのバカップルって思われちゃうでしょ!」


「琴乃的にはそこが問題なのか」


 お姫様抱っこをされるのよりも、お姫様抱っこをしているところを見られる方が恥ずかしい琴乃の言葉を聞いて響は苦笑するのであった。

 響が琴乃を背負って数分、恥ずかしがった琴乃が暴れるなどがあったが響達は無事に帰宅することが出来た。


「ただいま~」


「おう、だだいま」


 玄関にたどり着くと互いに「ただいま」と言いながらリビングに向かう二人、琴乃はリビングに入るとすぐさま椅子に座るのであった。


「あー疲れた」


 そのままグッタリ椅子に体を預ける琴乃、逆に響はキッチンで二人分の水を用意していた。

 そして響は机の上に響と琴乃のMyコップ二つと、シトリーとフラウロスのイヴィルキーを置くのであった。


「ありがとー兄貴」


 響が置いた水の入ったコップを手に取った琴乃は、ゴクゴクと水を飲んでいく。

 そしてコップの水を全て飲み干した琴乃は、ドンっと机にコップを叩きつける。


「あ、そうだ兄貴。地面に落ちていたやつどうするの?」


 流石に自分を操った元凶について気になったのだろう、琴乃は今回響が手に入れたシトリーと、フラウロスのイヴィルキーの後処理について質問する。


「あー何言うか、その筋の専門家に預けることになるよ」


(通ってる学校の保健医に預ける、なんて言えないよな)


 響は口を濁して嘘は言わずに、一部の事実のみを琴乃に教えるのであった。


「ふーん専門家にね」


 琴乃は兄の様子に気づかず、そのまま言葉通りに受け止めるのであった。


「じゃあそのフラウロスっての、兄貴に渡すよ」


「琴乃!?」


 琴乃は机の上に置いてあるフラウロスのイヴィルキーを、響の側に移動させる。そんな琴乃の提案を聞いた響は、驚いて上ずった声をあげてしまう。


「なんで?」


「なんでって、少しは私が持ってた力を兄貴に渡したいだけだよ。あ、でもシトリーは駄目!」


(シトリーを兄貴に渡したら、私にしたみたいにちょっかいをかけかねない!)


 琴乃はシトリーのイヴィルキーを手に取ると、折れろと言わんばかりに力を込めて真っ二つにしようとする。

 本気でシトリーのイヴィルキーを折ろうとする琴乃を見た響は、急いで琴乃からイヴィルキーを取り上げる。そのまま二人の間にシトリーのイヴィルキーを置くと、フラウロスイヴィルキーを自分の懐に仕舞うのだった。


「よろしく、フラウロス」


 響がそう呟いた瞬間、響の足元に赤い豹フラウロスが実体化して頭を響の足に擦り寄せる。それを見た琴乃は、顔を横に傾けるのであった。


「ねえ兄貴フラウロスがここに出てこれたってことは、兄貴の使ってたのも出てこれるの?」


 琴乃の質問を聞いた響は、顔中から冷や汗を流しだす。

 なぜなら「実体化できるよ」と言うだけなら容易い、しかしその後に「じゃあ見せて」と言われるのが問題なのだ。

 響が契約してる悪魔は皆見目麗しい、その姿を琴乃に見られたらどうなるかわからないのだ。

 どう返答すべきか響が悩んでいる間に、キマリスが勝手に二人の前に実体化した。


「やあ琴乃、実際に合うのは初めてだね。僕の名前はキマリスだ」


 男装をした麗美な少女キマリスが、琴乃の前で軽く一礼をする。キマリスの全体像を見た琴乃は、一瞬黙ると「キャー」と黄色い歓声をあげるのであった。


「凄い綺麗でかっこいい人だね兄貴!」


 琴乃はキマリスの容姿をすごい勢いで褒めていく、キマリスも機嫌を良くしたのか騎士のように膝をつくのであった。


「兄貴をよろしくお願いしますね、キマリスさん」


「任せたまえ、それじゃあ僕はここで失礼するよ。次も待ってるしね」


 そう言うとキマリスは実体化を解くのであった、琴乃は「次って?」と疑問に思っていたが、その疑問は直ぐに解消されるのであった。

 次に実体化したのは緑のミリタリーウェアを着た金髪の女性レライエであった、レライエは豊満な胸元を支えるように腕を組みながら琴乃の顔に視線を向ける。


「ふむでは私の番だな、私はレライエよろしくたのむぞ響の妹」


 琴乃に向かって自己紹介するレライエ、しかし琴乃の視線はレライエの胸元に若干向けられていた。


(何あれ、私の頭よりデカイ?)


 レライエは直ぐに琴乃の視線に気づいて、胸元を手で隠してしまうのだった。


「何だ?」


「いえ、なんでもないですレライエさん。兄貴をよろしくお願いします」


 琴乃は軽く頭を下げる、それを見たレライエは軽く胸を張ってそのまま実体化を解くのであった。


「美人さんばっかだね兄貴」


「まあな」


(後二人いて、しかも幼いとは言えない)


 響の心の中では、ハルファスとマルファスが勝手に実体化しない事を祈っていた。しかしその祈りは、二人によって裏切られることになる。


「じゃーん、最後は私達よね。マスター?」


「マルファス、いきなり抱きつくなんてはしたないわ」


 無断で実体化した二人の少女ハルファスとマルファス、黒の露出の多い服を着たマルファスは響に抱きつき、白の露出の多い服を着たハルファスはそれを咎めるのだった。

 急に現れた二人の少女の姿を見た琴乃の響を見る目は、氷点下と言わんばかりに冷たいものになっていた。


「待ってくれ琴乃、弁解を……」


「無いわ、小さい女の子を侍らすだけならまだしも、マスター呼びは無いわ」


 琴乃の冷たい宣告を聞いた響は、どうやって挽回しようか頭を抱えるのであった。

 悩んでいる響を見て、ハルファスとマルファスは何故と言わんばかりに頭を傾けた。


「だって兄貴見てよこの子達、お腹がプニプニでまるでイカみたいじゃない」


 琴乃はハルファスとマルファスのお腹を、服の上から撫で回す。ハルファスとマルファスも、気持ちよさそうに撫でられるのだった。

 お腹を撫で回しながら琴乃が「兄貴サイテー」と言うと、ハルファスとマルファスも「サイテー」と真似をする。

 一分程「サイテー」と言い続けた琴乃であったが、ショックを受けた様子の響を見て言うの止める。


「で、兄貴もう女の人は居ないよね?」


「ああ、後はフラウロスだけだ」


 琴乃はハルファス達に「ありがとね」とお礼を言うと、お腹から手を離すのであった。


「じゃあねーお姉さん」


「こらマルファス、それでは失礼マスター」


 そう言うとハルファスとマルファスは実体化を解いて、その場から消えていくのであった。


「消えたね」


「ああ消えたな。ところで琴乃一つ聞きたいんだが、シトリーと戦ってる時より琴乃と戦ってる方が強かったけど何でだ?」


「え!? えーとね……」


 響からの質問に視線を迷わせる琴乃、そして観念したように頭を下げるのであった。


「ごめん、実は兄貴が部屋に居ない時に、兄貴の漫画読んでたの」


「いやそんな事で……そうでもないな」


 武道など習っていない響が技を出せるのは、コミックや映像で行ってる技を自分流にアレンジしているからであり、ならば琴乃も同じだなと納得するのであった。


「後ごめんなさい、本棚の奥にあったちょっとエッチな本も全部読みました……」


 琴乃は更に申し訳無さそうに頭を下げる、響の部屋の本棚には何冊か肌色面積が多い漫画を家族に隠して置いていた、しかしそれを実の妹に見られていたのだった。


「うぁわぁぁぁー!」


 男響、本日最大のダメージを妹から悪意無く受けるのであった。

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