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俺のセイケンはヌけない  作者: さんいちぜろ
8/31

8 俺の奴隷(なぜその単語だけで、ここまでかわいそうだと思えるのか)

 俺、勃ち裸る。

 ごめん、特に意味はないんだ。なんか思いついたから言っときたかっただけなんだ。

 だって今すごく暇なんだもん。なんか王冠被った髭もじゃのおっさんが、なんか俺の功績がどうとか言ってるけど、正直お金くれればいいと思う。王女様もお金くれるって言ってたし。


「お主もそれで良いか?」


 あ、やばい、全然聞いてなかった。え、これ何の言質取られそうになってるの?


「お待ちください!こんな誰ともわからぬような者に、そのような褒美はいささか過分ではございませんか!」


 ナイスアシスト!ほら!もっかい褒美の内容プリーズ!!


「ほう、余の決定に不満があると申すか。では、貴公の考える褒美とはなんだ?言うてみよ。まさか王女を助けた者に褒美を与えぬとは申すまいな?」


「恐れながら、王女様をお救いした功績は確かに大きいかと存じます。ですが、道中では盗賊に襲われることもなく、安全な旅だったと伺っております。であれば、褒賞はお金でよろしいのではないかと」


 何この人、俺のことよくわかってる。そうだよお金でいいんだよ。いや、それ以外の何を渡そうとしてたのか知らないんだけどさ。


「と、申しておるが、貴公はどうか?」


 王様がこっち見てる。じゃなくて何か返さないと。


「私もお金をいただけるのであればそれで十分かと思っております。それ以上を頂くなど、この身には過分となるかと」


 お?さっきのアシストおじさんが(よくわかっておるではないか)みたいな顔してこっち見てる。奴は見方だ。


「王女を助けたのがその程度の褒賞にしかならぬと?王女の命はそれほどに安いということなのか?」


 嫌な質問ですね。え、これどう返せっていうの?パンツ脱ぐ?

 俺がそう思ってズボンに手をかけたとき、アシストおじさんが動いた。


「恐れながら王様、この者は、自身がいなくとも何とかなったのではないかと考えて言っているのでしょう。であれば、その者の望みを叶えることこそ、褒賞となるのではないでしょうか?」


 アシストおじさんのアシストがすごい俺得。パンツ脱がなくてすんだし。

 さあ、どうでる?王よ!!


「そうか。それもそうであるな。よかろう。貴公には大金貨5枚の褒賞を与える。王女の命にはいささか少ないとは思うが、与え過ぎるのも嫌がりそうであるからな」


 いや、正直、お金は欲しいです。あって困るものじゃないのでお金は欲しいです。

 まあ大金貨5枚がどのくらいだか知らないから、そもそもなんとも言えないんだけどさ。


「このみに余る光栄、有り難く頂戴致します」


 お金、手にいれました。



 王様との謁見を終えた俺は、王女様にお呼ばれされていた。ごめん、もう名前覚えてない。わっきーだっけ?


「王都まで護衛ありがとうございました。こちら、私からの報酬になります。お納めください」


 渡されたのは、お金でした。

 これもうちょっとした小金持ちじゃない?小金持ちなのにちょっとしたがついてる辺りに自分の矮小さが見えて嫌に……それでも自分が大好きです。


「ありがとうおりごとう」


「え?」


「ありがとうおりごとう」


「あ、いえ、聞こえなかった訳では無いです」


 2度もぶった!と言いたくなる気分になったけど、王女様相手には流石にまずいので、上半身裸になるだけでやめておいた。



 案の定、王女様に叩き出された俺は、城を出て散歩していた。貰うもん貰ったし、もういる必要もないかなと思ったし、「あのハダカリオンを引っ捕らえろ!」とか言って追いかけてこられるのも怖かったので、そそくさと出てきた。


 急いでたので、上を着るときにB地区に引っ掛かって脇くらいしか隠れてない状態で出てきたけど、指名手配されてないことを祈りたい。脱ぐときにTシャツっぽいのが丸まっちゃってたのがミスだったな。次はそんなミスは無くしたい。


 さて、俺には以前から考えていたことがある。ムラムラを溜めるためにどうしたらいいのかということだ。いきなり知らない人にパイターッチするのは憚られるしね。もちろん、俺だって馬鹿じゃない、両方にPターッチするつもりはなく、片方だけで良いとは思っている。

 しかし、現実問題、カタPタッチでさえも、非常に難しいミッションだと言えるだろう。Pは動くのが基本だしな。数学とか数学とか数学とか。


 そう考えると、俺の言うことを聞いてくれる存在が欲しいわけなんだが、やはり、異世界と言えば奴隷を変える場所なんかもあるんだろうか。本番NGで問題ない。俺が一チン上の都合でNGなんだから。なんか文字にしてみると、二チンとかもあるんだろうか。三チンとか。ヤマタノオロチン。チン娘(むすめって読んでな)。いや、上があるなら下も?だめだ、発音的にダメだ。


 話を戻そう。つまり、俺はもらった金を使って奴隷を買いたいなって思ったわけなんです。

 そのために散歩してたんだけど、それっぽい場所があるように見えない。どこにあるのか全然わからない。

 でも歩いてればそのうち見つかるかなって思って……あ、あー!ありました!!あそこです!!


「ふむ、奴隷商、ヌンコロ?」


 まあ読めないから適当に言ってるだけなんだけどさ。檻に入ってる獣人っぽいのとか、エルフっぽいのとかいるし、ここでしょ?


「神妙にお縄につけい!!」


「なんだてめえは!!」


 ファーストコンタクトを間違えた感がすごい。


「ここにおわす俺をどなたと心得る!恐れ多くも――」


「やっておしまいなさい」


 ***


「すみませんでした」


「お前何がしたかったんだ?クズか?人間のクズを体現しようとしてんのか?」


「あ?俺がクズだと?……そんなもんで収まる範疇超えてるに決まってんだろうが!!」


「話を進める気があんのかクズが!!」


「おいあんた、あまり真剣に俺の相手をしていると、クズ以上かクズ以下か、どちらがよりクズなのかってのがわからなくなるぜ?」


「あ?……あれ?おい、本当にどっちがクズなんだ!?」


 時を戻そう。


「奴隷が欲しいので、買いたいのだが」


 俺は時を戻した。


「どんな条件の奴隷が欲しいんだクズ?」


 戻りきってなかった。


「なんか何しても平気な感じの奴隷が欲しい」


「いや、それが奴隷だろ?さすがに生活の保障をする必要はあるが、それ以外ならほぼお前の思い通りだぞ?」


「じゃあパイデカタカメオPダブルキンニクアブラヌキヌキ」


「あいよ」


 本当に伝わったんだろうか。すごく不安になる俺だが、とりあえず気に入らないのが出てきたら「チェンジで」って言えばいっか。

 そう思ってた俺の前に奴隷商の人が連れてきたのは、胸部装甲厚めで背は高め、双丘をもち、筋肉質ではなく、脂肪の少なそうな体をしている。オーダー通りの奴隷が出てきた。


「マジでか。でもお高いんでしょう?」


「ああ、金貨8枚だな」


 良かった全然足りる。王女様からもらった分は吹き飛ぶけど、全然足りる。


「じゃあこれで頼む」


 俺は奴隷商に金貨の入った袋を渡すと、注文通りの奴隷を受け取った。

 奴隷はこちらをおずおずと見ている。なんか怖がられるようなことしたっけ?あ、これか、B地区で引っかかってるTシャツっぽいののせいか。なおそう。

 そして奴隷を手に入れた俺は、奴隷商を後にする。



 奴隷商を後にした俺は、適当に宿屋を発見し、そこで奴隷に話を聞いてみることにした。


「君はなんで奴隷になったの?てかこれ普通奴隷買う前に聞くことか」


 これでめちゃくちゃすごい犯罪してる奴だったらどうしよう。まあ主人には手を出せないようになってるって奴隷商の人も言ってたし、なんとかなるか。

 って考えに耽ってる俺を見て奴隷が戸惑ってる。


「あ、ごめん、で、なんで?」


「実は、私は騎士の家系でして、ずっと騎士として育てられてきたのですが、実家が没落し、家の借金を返す当てもなく、こうして奴隷となってしまいました。父も母も同じく奴隷になっていると思うのですが、別の場所に連れていかれたようで、最早どこにいるのかも、生きているのかさえ分かりません」


 想像してた範疇くらいの内容ではあったけど、これ実際目の前でそういう話されると、何言っていいかわからないね。どうしよう。

 考えながら、俺は無意識に自分の服の裾に手をかけ首辺りまでまくったところで、


 ――コンコン


「はい」


 あ、やばい!条件反射で返事しちゃったよ!早くおろさなきゃ!


「すみません、先ほど伝え忘れてい…………」


「なんでしょうか?」


「いや、なんで上に着ているものがB地区に引っかかった状態になっちゃってるのに、さも当然のような顔をして対応ができるんですか?」


「これが最近の流行らしいですよ。TPPと言うらしいです。あ、Tは絶対にタオって読んじゃだめですよ?」


「…………」


 俺の痴態地帯に踏み込んだ宿屋のお嬢さんは、俺のその反応に絶句。まるでゴミにゴミをかけて燃やしてから埋めて掘り返してゴミ追加した汚物を見るような目で俺のことを見てくる。


「滅びろ……」


「黙れ小娘!お前に息子(英語で読むなよ)を救えるか!?」


 ――パタン。


 無慈悲に閉められる部屋の扉。完全に狂人として認識された俺と、そんな俺に買われてしまった哀れな奴隷だけが部屋に残っている。

 当然奴隷は絶望の表情を浮かべているし、俺はTシャツが引っかかっている。


「ヒィッ!」


 奴隷に近づくと、おびえたような表情を俺に向けてくる。

 しかし、こういう時にどうしたらいいかを俺は知っている。


「ほら。怖くない。怖くない」


「や……い、嫌……」


 泣きそうな顔になってしまった。それから俺は奴隷のご機嫌取りのために、あちこち奔走し、おいしい串物や、高価な甘味を買ってきて与えた。

 奴隷が俺を見る目は、いまだにやばい奴を見るそれだった。

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