6 どこへ行こうというのかね
王女一向についていった俺は、また街に戻ってきた。
金無しの俺は今日のご飯にも宿にも困っていたけど、とりあえず今は財布……王女様がいるから大丈夫なはずだ。お金くれるって言ってたし。
どのくらいくれるかはわからないけどね。
「んへ~」
情けない声を出しながら、俺は目の前にある豪華な宿屋を見ていた。今日はここに泊まるということらしい。お金持ちサイコー。
宿屋の一室を借り与えられた俺は、自室で戦闘民族がブアッブアッブアッブアッて髪の毛逆立つ奴らで同じみのあれに出てくる、歩くとズキュッズキュッて鳴る奴らの歩き方を練習していた。
なぜだ、どう歩いてもあの音が再現できない。俺には才能がないのかもしれない。
――コンコン
「入ってまーす」
ドアが叩かれたため、入ってることをアピールしておく。さすがにズキュッズキュッの練習をしているところを見せるわけにはいかない。これは俺が習得するための特訓方法だ。誰にも渡さない。
「申し訳ありません、王女様がお呼びですので、出てきていただけないでしょうか?」
さすがに財布……王女様の言うことに逆らうのはまずいので、おとなしくついていくことにする。
「今日は危ないところをありがとうございました」
王女様の部屋に行ってみると、開口一番お礼を言われた。
「いえ、とんでもありません。私で力になれたのであれば僥倖です」
もう言葉にしてて自分でしゃべってる言葉じゃないみたいな感じになってるよね。
何て言うか、そう、演じてる感じ?どこまでばれないで演じられるかわからないけど、なるべく王女様には丁寧な対応で行こうと思う。お金くれるって言ってたし。
「実はですね、折り入ってお願いがございまして、お呼びさせて頂きました」
「お願い、ですか。私に力になれることなのでしょうか?」
「はい。あなたの実力を見込んでのお願いです。実は、王都に戻る最中なのですが、先日までに何度も盗賊に襲われ、護衛が間に合っていない状態なのです。ですので、王都までの護衛も、あなたにお願いしたいのです」
さてどうしようか。別に受けてもいいような気もするんだけど。そもそも王女様いないと俺生活できる状況じゃないし。こんなかわいい子に養ってもらえるなら、別に護衛くらいいい気もする。
ただ、何度も襲われると、それ全てをあの能力で何とかできるかが心配ではある。何せ使用されるコストの回復が……いや、待てよ?まだしっかり見ていないだけで何か回復用のスキルもあるんじゃないか?
…………あった。精成。ムラムラを精に変換できる能力?おい、待て。ちょ、待てよ。俺のエクスカリバーはヌけないんだぜ?それなのにムラムラすることしろと?え、生殺し放題じゃん。
しかし、万が一の場合に充填できるというのは大きな発見だ。あとはどんな行為でどの程度回復するのかってことを確認しないといけないんだが、あれ?試せなくね?普通に痴漢とかになるんじゃね?
試しても怒らない人いないかなー。
「すみません、やはり、難しいでしょうか?」
長いこと考えすぎていたようだ。断る理由を探しているとでも思われたかね?
どのみち王女様いないと俺生きてけないし(金銭的な意味で)。
「いえ、すみません。少し思考がそれてしまっていました。王都までの護衛の件、受けさせていただければと思います」
「本当ですか!ありがとうございます!必ず、このお礼は致しますので!」
自分の部屋に帰った俺は、とりあえず盗賊に襲われないことを祈るしかないかなと半ばあきらめの境地になっていた。
1日もたてば、コストも少しは回復しているだろうし、なんとかなるかな。なってほしいな。なるといいな……。