5 薬草採取と腕の付け根の密林との遭遇
薬草採取のために外に出てきたけど、全然薬草が見つからない。
どんなものかはわかっているけど、どこに生えてるのかとか全然聞いてこなかったのはうかつだった。
ひたすら森の中をさまよい続けているけど、一向に見つからない。
「きゃああああああああああああ!!」
あ、これ、誰か襲われてるやつだ、たぶん。
え、でも薬草採取しないと今日の塾になっちゃうかもしれないんだよな……。
とはいえさすがに悲鳴が聞こえたのに無視して立ち去るのもな……。
「よし」
俺は悲鳴の聞こえた方向へ向けて走った。
しばらくすると舗装された道が見えてきて、なんか馬車がヒャッハー達に襲われている。
明らかにヒャッハー達が襲っているという状況に見える。
「大丈夫か!?」
俺はとりあえず馬車の御者台に乗っている人に向けて声をかけてみる。
「助けてください!盗賊です!!」
「なんだお前!?これは俺たちの獲物だ!横取りしようってんなら容赦しねえぞ!?」
ヒャッハーがナイフを舐めながらこちらを威嚇してくる。危ないからナイフを舐めるのはやめなさい。
とりあえずヒャッハーが見た目通り悪そうなやつらだということで良いんだろう。
「お前こそ良いのか?俺を敵に回すと後悔することになる。俺の48の性技の必殺技がさく裂するぜ?」
確かまだ2回は燕返しが使用できたはずだ。あのオーバーキルな技であれば、見ただけで怖気づいてくれるかもしれない。
とりあえず、一本いっとく?先手必勝の
「燕返し!!」
俺の剣がひらめいて、舗装された道路が切られる。幸いにも巻き込まれたものはいなかったようで、ヒャッハー達は全員ビビっているようだ。
「な……なんだよ……それ……」
目の前で起きた光景が信じられないというような顔押しているな。うん。さすが燕返しだ。伊達に2億も犠牲にしていない。
「おい!撤収だ!!逃げるぞ!!」
ヒャッハー達が蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
その様子を見てもう大丈夫だと思ったのか、馬車の中から誰かが出てくる。
「お初にお目にかかります。わたくし、ワキゲコーイ王国の第一王女、シンジタ・クナイ・ワキゲコーイと申します。以後お見知りおきを」
笑うな。絶対に笑うな、俺。王女様が初対面の俺に「信じたくないワキゲ濃ーい」とか言ってきても笑うな、俺。笑ってしまえばきっとその先は斬首だ。
「こ、これは無礼を。っ……申し訳ございません」
俺はこれ幸いにとばかりに、跪き、顔を伏せながら、ちょっとだけ笑った。
そもそも跪くのが正しい礼儀作法なのかもわからないが、とにかく顔を隠したかった。
何なのあの服装。すげー豪華そうなのに、脇の部分どうしてそうなっちゃったの?いや、わかるよ?わかるんだけど、そんなところから布がひらひらしてたらもう、そうとしか見えなくなっちゃうじゃん!
直視できない。無理。笑う。笑ってはいけない場面で笑ってはいけないことの難しさよ。
でもわっきー王女は跪く俺に近づいてくる。
「ずいぶんと礼儀正しいのですね。冒険者と言うのはもっと荒々しい方なのだと思っていたのですが」
礼儀作法的には気分を害するようなものではなかったらしい。というかなんでわっきー王女は俺が冒険者だって知ってるんだ?
「失礼ですが、王女様。一つお聞きしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「はい、どうぞ」
「王女様は、なぜ私が冒険者だとわかったのでしょうか?」
「この辺りは冒険者が薬草などを取りに来ると聞いていたのですが、違うのですか?」
あ、そうなんだ。てことは薬草探す場所としては間違ってなかったってことか。
「いえ、おっしゃる通りでございます。お答えいただき、ありがとうございます」
「いえ。ところであなたはこれからどうなさるのでしょうか?もしよろしければ、このままわたくし達と一緒に街まで行って頂けないでしょうか?もちろん報酬はお支払いします」
おっと、展開的に少しは期待していたが、まさか本当にそんな流れになるなんて。
俺はこの僥倖を神に……いや、あれに感謝するのはだめだ。うん、目の前にいるんだし、わっきーに感謝しておこう。
「どこの誰ともわからないような私でよろしいのでしょうか?」
「ええ、実力は拝見させて頂きましたので、一緒に来てくださると安心です」
俺は王女一向についていくことにした。お金くれるって言うし。
まあ笑っちゃわないかが心配と言えば心配だけど、まあそこは鋼の意思で何とかするしかないだろう。
今のところわっきーも悪い人って感じはしないし。
まあ第一王女が盗賊に負けるような護衛だけで外出するなよとは思うけどね。