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俺のセイケンはヌけない  作者: さんいちぜろ
4/31

4 冒険者登録

 気が付いたら体が縮んでいたなどということはなく、俺は知らないベッドに寝て天井のシミの数を数えていた。

 もう少しで400というところで部屋のドアが開かれ、我が天使アンジェが入ってきた。


「あ、気が付いたんですね、良かった」


 あんな目を向けた相手に対してもこの対応。やはり天使。大天使アンジェエルと言われても信じる。というかアンジェエルってよく考えたらエンジェルっぽくね?

 名は体を表すとはよく言ったもんだなと思ってしまった。

 天使になるべく産まれた天使だったということだ。


「あの、大丈夫ですか?」


 主に頭が、と続きそうな若干心配するのが嫌そうな顔で、それでも一応聞いてくる。そんな感じに見えた。


「大丈夫。ここどこ?ごめんね、パンティの事しか覚えてなくてさ」


「……」


 アンジェの表情が死んだ。だめだ、この子。変態的コミュニケーションしちゃいけないタイプの人間だ。もちろん変態的コミュニケーションしても大丈夫な奴の方が少ないんだけど。


「ごめん、冗談ってことで流してもらって教えてくれない?」


「…………………………はい」


 葛藤が長い。長いよアンジェちゃん。


「そんなことする必要ないわよアンジェ」


 俺のことを睨みながらそう言い捨てて部屋に入ってくるカロリーヌ。白い世界の持ち主。


「そんな変態野郎ほっとけばいいじゃない」


「そういうわけにもいかないよ。私、冒険者ギルドの職員だし」


 エンジェルアンジェは義務感から俺を助けていたことが判明。


「ごめんすごい流れぶった切る質問するんだけど、どうしたらお金稼げるの?」


「何かお店をやるか、そういったお店で雇ってもらうか…………非常にお勧めしませんが、冒険者として魔物を倒して素材などを売るかです」


 おすすめしない理由について聞いたらどうこたえるつもりなんだろう。絶対に「あなたが嫌だからです」って理由だと思うんだけど、そういわれちゃうんだろうか。さすがに変態が過ぎたか。


「冒険者に登録したいんだけど、どうしたらいいの?」


「…………」


 アンジェが絶望の表情をしている。ここまで絶望的な表情をされると、さすがに反省する。

 だがそれでも教えてくれるのはアンジェ様様だろう。


「冒険者ギルドで登録をすれば冒険者です。最初はFランクからです」


 あ、ランク制度あるのね。どっかで読んだことあるような感じだな。


「ランクは最高で何になるの?」


「Sランクです。ですが、Sランクの冒険者はそうそういるものではありません。もちろんこの街にもSランクの冒険者はいません」


「あ、そうなんだ。冒険者登録をしたいんだけど、場所教えてもらっても良い?」


「はい、こちらになります」


 ドアを出ていくアンジェを追いかけながら、俺は別のことを気にしていた。

 途中から全くしゃべらなくなったカロリーヌだ。

 不気味だと思ってそちらを見てみると、カロリーヌも一緒についてきた。



 どうやら俺が寝ていたのは冒険者ギルドだったようで、部屋を出て少し進んだら受付みたいなところに連れていかれた。

 そしてアンジェが担当してくれるようだ。きっと彼女は「こんな変人を他の人に任せるなんてできない」とでも思っているのだろう。


「ではこちらに記入をお願いします」


 そう言って差し出された紙を見たが、読めない。字が全然読めない。

 え、話は普通に通じてたじゃん。なんで?字が読めないのなんで?ここは字も普通に読めますってパターンじゃないの?


「ごめん、字が読めないんだけど……」


「あ、失礼しました。こちらで代筆させて頂きます」


「よろしく」


 アンジェがいくつか聞いてきたことにこたえ、カリカリとさっきの紙に書いていってくれる。


「はい、ではこちらで完成ですので、少々お待ちください」


 奥の方に行って何やら作業している様子のアンジェ。そして待っている俺の隣には一言もしゃべらないカロリーヌ。怖いよ。何かしゃべってよ。


「あんた」


 ビクッとなってしまった。不意打ち良くない。


「アンジェに手を出したら殺すから」


 殺されてしまう。どうしよう。手は出さないんだけどさ。普通に手なんか出すつもりないんだけどさ。だって「一同ご起立願います」って言われても座りっぱなしのマイサンなんだぜ?


「はい」


 俺はおとなしく従っておいた。目が、目が命を刈り取れるそれだった。やばい、この人はやばい。


「お待たせいたしました。こちら、ギルドカードになります。なくさないように気を付けてください。もしなくしてしまったら、再発行にはお金がかかりますので」


「ありがとう。で、何したらお金が稼げるの?」


「Fランク用の依頼を受けていただければ良いと思います。薬草採取などの安全なものですので、危険も少ないです。あちらの掲示板に張り出されている紙から好きなものを持ってきていただければ依頼を受けることができます」


「わかった、ありがとう」


「あ」


 俺は早速掲示板に近寄っていく。そして紙を見て驚愕する。自分の記憶力の無さに。

 いや、俺、字読めないじゃん。

 何も取らずにトボトボと戻っていくとアンジェはそれが当たり前のような感じで待っていた。


「俺、字読めないんだった」


「はい、ですので引き留めようとしたのですが、思いのほかすぐに行かれてしまいましたので。一応こちらで見繕った依頼がありますので、本日はこちらを受けてみてはいかがでしょうか?」


「どんな内容?」


「近くの森での薬草採取の依頼です。この絵と同じものを探してきてください」


 そう言って渡された絵を見ると、けっこう細部まで書かれた奇麗な絵だった。

 俺はそれを受け取って、さっそく薬草採取に行くことにした。

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